学問のすゝめ / 三編・一身独立して一国独立すること・一命を棄つるは過分なり
国内のことなればともかくもなれども、いったん外国と戦争などのことあらばその不都合なること思い見るべし。無智無力の小民ら、戈を倒にすることもなかるべけれども、われわれは客分のことなるゆえ一命を棄つるは過分なりとて逃げ走る者多かるべし。さすればこの国の人口、名は百万人なれども、国を守るの一段に至りてはその人数はなはだ少なく、とても一国の独立は叶い難きなり。
書き下し
国内のことなればともかくもなれども、いったん外国と戦争などのことあらば、その不都合なること思い見るべし。無智無力の小民ら、戈を倒にすることもなかるべけれども、われわれは客分のことなるゆえ、一命を棄つるは過分なりとて逃げ走る者多かるべし。さすればこの国の人口、名は百万人なれども、国を守るの一段に至りてはその人数はなはだ少なく、とても一国の独立は叶い難きなり。
現代語訳
国内のことならまだよいとしても、ひとたび外国と戦争などが起これば、その不都合を考えてみるべきです。無知で無力な小民たちは、武器を逆さに向けて裏切ることはないでしょうが、自分たちは客分なのだから、命を捨てるのは分に過ぎたことだと言って逃げ出す者が多いでしょう。そうなればこの国の人口は、名目は百万人でも、国を守る段になるとその人数は非常に少なく、とても一国の独立は叶いません。
解説
客分意識の代償が、非常時に現れます。裏切りはしないが逃げる。命を捨てるのは客分の分を越えている、という理屈が、彼らの側から見れば筋が通っているのが厄介なところです。人口は百万でも守る人数は僅かになる。組織の規模と実際に動く人数が違うという指摘で、平時には見えない欠陥が有事に露呈する構造を示しています。
この章句が説くこと
客分有事逃走人数独立
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『学問のすゝめ』三編・一身独立して一国独立すること・禍は思わぬところに起こるこののち万々一も外国人雑居などの場合に及び、その名目を借りて奸を働く者あらば、国の禍、実に言うべからざるべし。ゆえに人民に独立の気力なきは、その取扱いに便利などとて油断すべからず。禍は思わぬところに起こるものなり。国民に独立の気力いよいよ少なければ、国を売るの禍もまたしたがってますます大なるべし。すなわちこの条のはじめに言える、人に依頼して悪事をなすとは、このことなり。
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『学問のすゝめ』三編・一身独立して一国独立すること・その身は客分のつもりにて駿河の人民はただ義元一人によりすがり、その身は客分のつもりにて、駿河の国をわが本国と思う者なく、フランスには報国の士民多くして、国の難を銘々の身に引き受け、人の勧めを待たずしてみずから本国のために戦う者あるゆえ、かかる相違もできしことなり。これによりて考うれば、外国へ対して自国を守るに当たり、その国人に独立の気力ある者は国を思うこと深切にして、独立の気力なき者は不深切なること、推して知るべきなり。