学問のすゝめ / 初編・天は人の上に人を造らず
「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」と言えり。されば天より人を生ずるには、万人は万人みな同じ位にして、生まれながら貴賤上下の差別なく、万物の霊たる身と心との働きをもって天地の間にあるよろずの物を資り、もって衣食住の用を達し、自由自在、互いに人の妨げをなさずしておのおの安楽にこの世を渡らしめ給うの趣意なり。されども今、広くこの人間世界を見渡すに、かしこき人あり、おろかなる人あり、貧しきもあり、富めるもあり、貴人もあり、下人もありて、その有様雲と泥との相違あるに似たるはなんぞや。その次第はなはだ明らかなり。『実語教』に、「人学ばざれば智なし、智なき者は愚人なり」とあり。されば賢人と愚人との別は学ぶと学ばざるとによりてできるものなり。
書き下し
「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」と言えり。されば天より人を生ずるには、万人は万人みな同じ位にして、生まれながら貴賤上下の差別なく、万物の霊たる身と心との働きをもって天地の間にあるよろずの物を資り、もって衣食住の用を達し、自由自在、互いに人の妨げをなさずしておのおの安楽にこの世を渡らしめ給うの趣意なり。されども今、広くこの人間世界を見渡すに、かしこき人あり、おろかなる人あり、貧しきもあり、富めるもあり、貴人もあり、下人もありて、その有様、雲と泥との相違あるに似たるはなんぞや。その次第はなはだ明らかなり。『実語教』に、「人学ばざれば智なし、智なき者は愚人なり」とあり。されば賢人と愚人との別は、学ぶと学ばざるとによりてできるものなり。
現代語訳
天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず、と言われています。ですから天が人を生むにあたっては、すべての人はみな同じ位であって、生まれながらに身分の上下の差別はなく、万物の霊である身と心の働きによって、天地の間にあるあらゆるものを利用し、衣食住の用を足し、自由自在に、互いに人の妨げをせずに、それぞれ安らかにこの世を渡らせようという趣旨です。しかし今、広くこの人間の世界を見渡すと、賢い人もいれば愚かな人もおり、貧しい者もいれば富める者もおり、身分の高い人もいれば低い人もいて、その有様が雲と泥ほども違うのはなぜでしょうか。その理由ははっきりしています。『実語教』に、人は学ばなければ智がない、智のない者は愚か者である、とあります。ですから賢い人と愚かな人の違いは、学ぶか学ばないかによってできるものなのです。
解説
この章句が説くこと
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