不動智神妙録 / 諫言 其一 忠を尽くす
內々存寄候事、御諫可申入候由、愚案如何に存候得共、折節幸と存じ及見候處あらまし書付進し申候、貴殿事、兵法に於て今古無雙の達人故、當時官位俸祿世の聞えも美々敷候、此大厚恩を寐ても覺ても忘るゝことなく、旦夕恩を報し忠を盡さんことをのみ思ひたまふべし、
新字:内々存寄候事、御諫可申入候由、愚案如何に存候得共、折節幸と存じ及見候処あらまし書付進し申候、貴殿事、兵法に於て今古無双の達人故、当時官位俸禄世の聞えも美々敷候、此大厚恩を寐ても覚ても忘るゝことなく、旦夕恩を報し忠を尽さんことをのみ思ひたまふべし、
書き下し
内々存寄候事、御諫可申入候由、愚案如何に存候得共、折節幸と存じ及見候処あらまし書付進し申候、貴殿事、兵法に於て今古無双の達人故、当時官位俸禄世の聞えも美々敷候、此大厚恩を寐ても覚ても忘るゝことなく、旦夕恩を報し忠を尽さんことをのみ思ひたまふべし、
現代語訳
内々に思っておりましたことを、お諫め申し上げてほしいとのことでしたので、愚かな考えがどうかとは存じますが、よい折と思い、見聞きしたことをあらまし書きつけてお送りいたします。あなたは兵法において古今無双の達人でありますから、いまの官位も俸禄も世の評判も立派なものです。この大きく厚い恩を、寝ても覚めても忘れることなく、朝夕に恩に報い、忠を尽くすことだけを思われるべきです。
解説
ここから書の趣が変わり、宗矩本人への諫言が始まる。宗矩は将軍家光の兵法指南役として重用され、のちに大名にまで取り立てられた人物である。沢庵は、剣の名人として地位も名声も得た今こそ、その恩を忘れず忠を尽くせと説く。成功して立場が上がった人ほど、自分の力で得たと思い込み、与えられた恩を忘れがちになる。宗矩自身の求めに応じて書いたという形をとって、率直な忠告を始めている。
この章句が説くこと
諫言恩忠柳生宗矩地位報恩
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