塩鉄論 / 國疾篇
賢良、文學皆離席曰:『鄙人固陋、希涉大庭、狂言多不稱、以逆執事。夫藥酒苦於口而利於病、忠言逆於耳而利於行。故愕愕者福也、諓諓者賊也。林中多疾風、富貴多諛言。萬里之朝、日聞唯唯、而後聞諸生之愕愕、此乃公卿之良藥針石。」
新字:賢良、文学皆離席曰:『鄙人固陋、希渉大庭、狂言多不称、以逆執事。夫薬酒苦於口而利於病、忠言逆於耳而利於行。故愕愕者福也、諓諓者賊也。林中多疾風、富貴多諛言。万里之朝、日聞唯唯、而後聞諸生之愕愕、此乃公卿之良薬針石。」
書き下し
賢良・文學皆席を離れて曰く、鄙人固陋にして、大庭に涉ること希なり、狂言多く稱わずして、以て執事に逆らう。夫れ藥酒は口に苦くして病に利あり、忠言は耳に逆らいて行に利あり。故に愕愕たる者は福なり、諓諓たる者は賊なり。林中に疾風多く、富貴に諛言多し。萬里の朝、日に唯唯を聞く、而して後に諸生の愕愕を聞く、此れ乃ち公卿の良藥針石なり。
現代語訳
賢良と文学はみな席を離れて言った。「私どもは田舎者で見識が狭く、大きな議場に出ることもまれです。無遠慮な言葉が多く場にそぐわず、担当の方々に逆らってしまいました。そもそも薬酒は口に苦いが病には効き、忠言は耳に逆らうが行いには効きます。だから遠慮なく物を言う者は福であり、口先を飾る者は賊です。林の中は風が強く、富貴のまわりにはお世辞が多い。万里に及ぶ朝廷では、日々『はい、はい』という声ばかりを聞かれる。そのあとで私どもの遠慮のない言葉を聞かれる。これこそが公卿にとっての良薬であり、鍼と石なのです」
解説
仲裁を受けて、賢良と文学が席を離れて詫びた段です。ただ詫びるだけではありません。無礼だったことは認めたうえで、なぜその無礼に価値があるのかを言い直しています。「林中に疾風多く、富貴に諛言多し」——高い木ほど風を受けるように、地位が上がるほどお世辞が集まる。だから日々「はい」ばかり聞いている人にとって、耳に逆らう言葉は薬なのだ、と。詫び方として、これ以上ないほど筋が通っています。
この章句が説くこと
林中に疾風多く富貴に諛言多し薬酒は口に苦くして病に利あり愕愕たる者は福なり諓諓たる者は賊なり諫言風通し地位
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