塩鉄論 / 大論篇
文學曰:「殘材木以成室屋者、非良匠也。殘賊民人而欲治者、非良吏也。故公輸子因木之宜、聖人不費民之性。是以斧斤簡用、刑罰不任、政立而化成。扁鵲攻於湊理、絕邪氣、故癰疽不得成形。聖人從事於未然、故亂原無由生。是以砭石藏而不施、法令設而不用。斷已然、鑿已發者、凡人也。治未形、睹未萌者、君子也。」
新字:文学曰:「残材木以成室屋者、非良匠也。残賊民人而欲治者、非良吏也。故公輸子因木之宜、聖人不費民之性。是以斧斤簡用、刑罰不任、政立而化成。扁鵲攻於湊理、絶邪気、故癰疽不得成形。聖人従事於未然、故乱原無由生。是以砭石蔵而不施、法令設而不用。断已然、鑿已発者、凡人也。治未形、睹未萌者、君子也。」
書き下し
文學曰く、材木を殘いて以て室屋を成す者は、良匠に非ざるなり。民人を殘賊して治めんと欲する者は、良吏に非ざるなり。故に公輸子は木の宜しきに因り、聖人は民の性を費やさず。是を以て斧斤は簡に用いられ、刑罰は任ぜられずして、政立ちて化成る。扁鵲は湊理に攻め、邪氣を絕つ。故に癰疽は形を成すを得ず。聖人は未然に事を從す。故に亂の原は由りて生ずる無し。是を以て砭石は藏められて施されず、法令は設けられて用いられず。已に然るを斷ち、已に發するを鑿つは、凡人なり。未だ形あらざるを治め、未だ萌さざるを睹るは、君子なり。
現代語訳
文学が言った。「材木を痛めつけて家を建てる者は、よい大工ではありません。民を傷つけて治めようとする者は、よい役人ではありません。公輸子は木の性質に合わせて使い、聖人は民の本性をすり減らしません。だから斧はまれにしか使われず、刑罰は用いられないまま、政が立ち教化が成るのです。扁鵲は皮膚の肌理のうちに手を入れ、邪気を絶ちました。だから腫れ物は形を成しません。聖人はまだそうならないうちに手をつける。だから乱れの源が生じるところがない。だから石の針は蔵にしまわれて使われず、法令は設けられて使われない。すでに起きたことを断ち、すでに膨れたものを切るのは凡人です。まだ形をなさないものを治め、まだ芽生えないものを見るのが君子です」
解説
この章句が説くこと
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史記 礼書故に堅革利兵は以て勝つと為すに足らず、高城深池は以て固しと為すに足らず、厳令繁刑は以て威と為すに足らず。其の道に由れば則ち行はれ、其の道に由らざれば則ち廃る。楚人は鮫革犀兕、以て甲と為す所、堅きこと金石の如し。宛の鉅鉄の施、鉆きこと蜂蠆の如く、軽利剽遬、卒かなること熛風の如し。然れども兵は垂涉に殆く、唐昧死す。荘蹻起こり、楚分かれて四参と為る。是れ豈に堅革利兵無からんや、其の之を統ぶる所以の者其の道に非ざるが故なり。汝潁以て険と為し、江漢以て池と為し、之を阻むに鄧林を以てし、之を縁らすに方城を以てす。然れども秦師鄢郢に至り、挙ぐること槁を振るふが若し。是れ豈に固塞険阻無からんや、其の之を統ぶる所以の者其の道に非ざるが故なり。紂は比干を剖き、箕子を囚へ、炮格を為り、無辜を刑殺し、時の臣下懍然として、其の命を必する莫し。然れども周師至りて、令下に行はれず、其の民を用ふる能はず。是れ豈に令厳ならず、刑陖ならざらんや、其の之を統ぶる所以の者其の道に非ざるが故なり。古者の兵は、戈矛弓矢のみ、然れども敵国試みるを待たずして詘す。城郭集めず、溝池掘らず、固塞樹てず、機変張らず、然れども国晏然として外を畏れずして固き者は、他の故無し、道を明らかにして之を均分し、時に使ひて誠に之を愛すれば、則ち下之に応ずること景響の如し。命に由らざる者有りて、然る後に之を俟つに刑を以てすれば、則ち民罪を知る。故に一人を刑して天下服す。罪人其の上を尤めず、罪の己に在るを知ればなり。是の故に刑罰省きて威行はるること流るるが如し、他の故無し、其の道に由るが故なり。故に其の道に由れば則ち行はれ、其の道に由らざれば則ち廃る。古者帝堯の天下を治むるや、蓋し一人を殺し二人を刑して天下治まる。伝に曰く、「威厲しくして試みず、刑措きて用ひず」と。
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