塩鉄論 / 論菑篇
大夫曰:「金生於巳、刑罰小加、故薺麥夏死。易曰:『履霜、堅冰至。』秋始降霜、草木隕零、合冬行誅、萬物畢藏。春夏生長、利以行仁。秋冬殺藏、利以施刑。故非其時而樹、雖生不成。秋冬行德、是謂逆天道。月令:『涼風至、殺氣動、蜻蛚鳴、衣裘成。天子行微刑、始貙蔞、以順天令。』文學同四時、合陰陽、尚德而除刑。如此、則鷹隼不鷙、猛獸不攫、秋不搜狝、冬不田狩者也。」
新字:大夫曰:「金生於巳、刑罰小加、故薺麦夏死。易曰:『履霜、堅冰至。』秋始降霜、草木隕零、合冬行誅、万物畢蔵。春夏生長、利以行仁。秋冬殺蔵、利以施刑。故非其時而樹、雖生不成。秋冬行徳、是謂逆天道。月令:『涼風至、殺気動、蜻蛚鳴、衣裘成。天子行微刑、始貙蔞、以順天令。』文学同四時、合陰陽、尚徳而除刑。如此、則鷹隼不鷙、猛獣不攫、秋不捜狝、冬不田狩者也。」
書き下し
大夫曰く、金は巳に生じ、刑罰小しく加わる。故に薺麥は夏に死す。易に曰く、「霜を履めば、堅冰至る」と。秋に始めて霜降り、草木隕零す。冬に合いて誅を行い、萬物畢く藏る。春夏は生長す、以て仁を行うに利ろし。秋冬は殺藏す、以て刑を施すに利ろし。故に其の時に非ずして樹うれば、生ずと雖も成らず。秋冬に德を行うは、是を天道に逆らうと謂う。月令に、「涼風至り、殺氣動き、蜻蛚鳴き、衣裘成る。天子は微刑を行い、始めて貙蔞し、以て天令に順う」と。文學は四時を同じくし、陰陽を合わせ、德を尚びて刑を除かんとす。此くの如くんば、則ち鷹隼は鷙せず、猛獸は攫まず、秋に搜狝せず、冬に田狩せざる者なり。
現代語訳
大夫が言った。「金は巳に生じ、刑罰がわずかに加わる。だから薺や麦は夏に枯れるのだ。易に『霜を踏めば、堅い氷が至る』とある。秋にはじめて霜が降り、草木が落ちる。冬に合わせて誅を行えば、万物はことごとく蔵に収まる。春と夏は生じ伸びる季節だから、仁を行うのに適している。秋と冬は殺し蔵める季節だから、刑を施すのに適している。だから時ならぬときに植えれば、生えても実らない。秋冬に徳を行うのは、天の道に逆らうという。月令に『涼しい風が至り、殺気が動き、こおろぎが鳴き、冬着ができあがる。天子は軽い刑を行い、はじめて狩りをして、天の令に従う』とある。文学は四季を一様にし、陰陽を合わせ、徳を尊んで刑を除こうとする。そうなれば、鷹や隼は襲わず、猛獣はつかまず、秋に狩りをせず、冬に猟をしないということになる」
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
呂氏春秋・精通③德なる者は、萬民の宰なり。月なる者は、群陰の本なり。月望なれば則ち蚌蛤實ち、群陰盈つ。月晦なれば則ち蚌蛤虚しく、群陰虧く。夫れ月、天に形われて、群陰、淵に化す。聖人、德を己に行いて、四方咸仁に飭し。
-
論語・衛霊公篇子曰く、由、徳を知る者は鮮なし。
-
論語・為政篇子曰く、之を道びくに政を以てし、之を斉(ととの)うるに刑を以てすれば、民免れて恥無し。之を道びくに徳を以てし、之を斉うるに礼を以てすれば、恥有り且つ格(いた)る。
-
論語・憲問篇南宮适、孔子に問いて曰く、「羿は射を善くし、奡は舟を盪かす。倶に其の死を得ざりき。禹・稷は躬ら稼して天下を有てり。」夫子答えず。南宮适出づ。子曰く、「君子なるかな若き人。徳を尚ぶかな若き人。」
-
論語・為政篇子曰く、政を為すに徳を以てすれば、譬えば北辰其の所に居て衆星之に共(むか)うが如し。
-
孫子・始計篇将とは、智・信・仁・勇・厳なり。