塩鉄論 / 論菑篇
大夫曰:「文學言剛柔之類、五勝相代生。易明於陰陽、書長於五行。春生夏長、故火生於寅木、陽類也、秋生冬死、故水生於申金、陰物也。四時五行、叠廢叠興、陰陽異類、水火不同器。金得土而成、得火而死、金生於巳、何說何言然乎?」
新字:大夫曰:「文学言剛柔之類、五勝相代生。易明於陰陽、書長於五行。春生夏長、故火生於寅木、陽類也、秋生冬死、故水生於申金、陰物也。四時五行、叠廃叠興、陰陽異類、水火不同器。金得土而成、得火而死、金生於巳、何説何言然乎?」
書き下し
大夫曰く、文學は剛柔の類、五勝相い代わりて生ずるを言う。易は陰陽に明らかに、書は五行に長ず。春に生じ夏に長ず、故に火は寅木に生ず、陽の類なり。秋に生じ冬に死す、故に水は申金に生ず、陰の物なり。四時五行、叠々廢れ叠々興る。陰陽は類を異にし、水火は器を同じくせず。金は土を得て成り、火を得て死す。金は巳に生ず、何の說、何の言もて然りとするか。
現代語訳
大夫が言った。「文学は剛と柔の類、五行が勝ち合って代わる代わる生ずることを言う。易は陰陽に明るく、書は五行に長けている。春に生じ夏に伸びる、だから火は寅の木に生ずる、陽の類だ。秋に生じ冬に死ぬ、だから水は申の金に生ずる、陰の物だ。四季と五行は代わる代わる廃れ、代わる代わる興る。陰と陽は類を異にし、水と火は器を同じくしない。金は土を得て成り、火を得て死ぬ。ところが金は巳に生ずるという。何の説、何の言葉によって、そうだと言うのか」
解説
文学が陰陽と災異で押し切ったのに対し、大夫がその体系の内側で矛盾を突いた段です。五行の相生相剋を自分でもひととおり並べてみせます。火は寅の木に生じ、水は申の金に生ずる。金は土を得て成り、火を得て死ぬ、と。そのうえで一点だけ問いました。**金は巳に生ずるという、それは何の説、何の言葉によるのか。**相手の土俵に上がってから、根拠の無い一箇所を名指しする。批判の的の絞り方が変わった段です。
この章句が説くこと
金は巳に生ず何の説何の言もて然りとするか陰陽は類を異にし水火は器を同じくせず四時五行叠々廃れ叠々興る根拠体系矛盾
関連する章句
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『塩鉄論』論菑篇大夫曰く、金は巳に生じ、刑罰小しく加わる。故に薺麥は夏に死す。易に曰く、「霜を履めば、堅冰至る」と。秋に始めて霜降り、草木隕零す。冬に合いて誅を行い、萬物畢く藏る。春夏は生長す、以て仁を行うに利ろし。秋冬は殺藏す、以て刑を施すに利ろし。故に其の時に非ずして樹うれば、生ずと雖も成らず。秋冬に德を行うは、是を天道に逆らうと謂う。月令に、「涼風至り、殺氣動き、蜻蛚鳴き、衣裘成る。天子は微刑を行い、始めて貙蔞し、以て天令に順う」と。文學は四時を同じくし、陰陽を合わせ、德を尚びて刑を除かんとす。此くの如くんば、則ち鷹隼は鷙せず、猛獸は攫まず、秋に搜狝せず、冬に田狩せざる者なり。
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『塩鉄論』論菑篇文學曰く、始め江都の相董生、陰陽を推し言う。四時相繼ぎ、父之を生じ、子之を養い、母之を成し、子之を藏む。故に春に生ずるは仁、夏に長ずるは德、秋に成るは義、冬に藏むるは禮なり。此れ四時の序にして、聖人の則る所なり。刑は任じて以て化を成す可からず、故に德教を廣む。遠きを言うには必ず之を邇きに考う、故に內に恕して以て行う。是を以て刑罰は己に加わるが若く、勤勞は身に施さるるが若し。又た安んぞ能く其の赤子を殺すに忍びて、以て無用に事え、恃む所を罷弊して、瀛海に達せんや。蓋し越人は蠃蚌を美として太牢を簡み、鄙夫は咋唶を樂しみて韶濩を怪しむ。故に味を知らざる者は、芬香を以て臭と為し、道を知らざる者は、美言を以て耳を亂すと為す。人に夭壽無く、各々其の好惡を以て命と為す。羿・敖は巧力を以て其の死を得ず、智伯は貪狠を以て其の身を亡ぼす。天菑の證、禎祥の應は、猶お施與の報を望むがごとく、各々其の類を以て及ぶ。故に好んで善を行う者には、天助くるに福を以てす。符瑞是れなり。易に曰く、「天よりして之を佑く、吉にして利ろしからざる無し」と。好んで惡を行う者には、天報ゆるに禍を以てす。妖菑是れなり。春秋に曰く、「是に應じて天菑有り」と。周の文・武は賢を尊び諫めを受け、敬戒して殆らず。純德上く休く、神祇相い況す。詩に云う、「福を降すこと穰穰たり、福を降すこと簡簡たり」と。日は陽なり、陽の道は明るし。月は陰なり、陰の道は冥し。君尊く臣卑しきの義なり。故に陽光上に盛んなれば、眾陰の類は下に消え、月天に望なれば、蚌蛤は淵に盛んなり。故に臣にして臣たらざれば、則ち陰陽調わず、日月に變有り。政教均しからざれば、則ち水旱時ならず、螟螣生ず。此れ災異の應なり。四時代わる代わる敘でて、人は其の功に則り、星は天に列なりて、人は其の行に象る。常星は猶お公卿のごときなり、眾星は猶お萬民のごときなり。列星正しければ則ち眾星齊しく、常星亂るれば則ち眾星墜つ。
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『塩鉄論』論菑篇大夫曰く、巫祝は與に並び祀る可からず、諸生は與に語を逐う可からず。往を信じ今を疑い、人を非として自ら是とす。夫れ古を道う者は之を今に稽え、遠きを言う者は之を近きに合わす。日月は天に在り、其の征は人に在り。菑異の變、夭壽の期、陰陽の化、四時の敘、水火金木、妖祥の應、鬼神の靈、祭祀の福、日月の行、星辰の紀、曲言の故、何ぞ本づき始まる所ぞ。知らずんば則ち默せよ。茍くも耳を亂す無かれ。
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『塩鉄論』論菑篇文學曰く、天道は生を好みて殺を惡み、賞を好みて罪を惡む。故に陽をして實に居らしめて德施を宣べ、陰をして虛に藏れしめて陽の佐輔と為す。陽は剛、陰は柔なり。季は孟に加うる能わず。此れ天の冬を賤しみて春を貴び、陽を申べて陰を屈するなり。故に王者は南面して天下に聽き、陰に背き陽に向かい、德を前にして刑を後にするなり。霜雪晚く至るも、五穀は猶お成る。雹霧夏に隕つれば、萬物皆な傷る。此れに由りて之を觀れば、嚴刑以て國を治むるは、猶お秋冬に任じて以て穀を成すがごときなり。故に法令は、惡を治むるの具にして、至治の風に非ざるなり。是を以て古者、明王は其の德教を茂んにして、其の刑罰を緩くす。網は舟を吞むの魚を漏らして、刑は繩墨の外に審らかなり。其の末に臻るに及びて、民は禁を犯す莫し。