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塩鉄論 / 論勇篇

大夫曰:「荊軻提匕首入不測之強秦、秦王惶恐失守備、衛者皆懼。專諸手劍摩萬乘、刺吳王、屍孽立正、鎬冠千里。聶政自衛、由韓廷刺其主、功成求得、退自刑於朝、暴屍於市。今誠得勇士、乘強漢之威、淩無義之匈奴、制其死命、責以其過、若曹劌之脅齊桓公、遂其求。推鋒折銳、穹廬擾亂、上下相遁、因以輕銳隨其後。匈奴必交臂不敢格也。」

新字:大夫曰:「荊軻提匕首入不測之強秦、秦王惶恐失守備、衛者皆懼。専諸手剣摩万乗、刺吳王、屍孽立正、鎬冠千里。聶政自衛、由韓廷刺其主、功成求得、退自刑於朝、暴屍於市。今誠得勇士、乗強漢之威、淩無義之匈奴、制其死命、責以其過、若曹劌之脅斉桓公、遂其求。推鋒折銳、穹廬擾乱、上下相遁、因以軽銳随其後。匈奴必交臂不敢格也。」

書き下し

大夫曰く、荊軻は匕首を提げて不測の強秦に入る。秦王は惶恐して守備を失い、衛る者は皆な懼る。專諸は劍を手にして萬乘を摩し、吳王を刺す。屍孽立ちどころに正され、鎬冠千里なり。聶政は衛より、韓廷に由りて其の主を刺す。功成り求め得て、退きて自ら朝に刑し、屍を市に暴す。今、誠に勇士を得て、強漢の威に乘じ、無義の匈奴を淩ぎ、其の死命を制し、責むるに其の過ちを以てし、曹劌の齊の桓公を脅して、其の求めを遂げしが若くせば、鋒を推し銳を折り、穹廬擾亂し、上下相い遁れん。因りて輕銳を以て其の後に隨わば、匈奴は必ず臂を交えて敢えて格らざらん。

現代語訳

大夫が言った。「荊軻は匕首を提げて、底の知れぬ強国の秦に入った。秦王はうろたえて守りを失い、護衛の者はみな恐れた。専諸は剣を手に万乗の君に迫り、呉王を刺した。跡目の乱れはたちどころに正され、その名は千里に轟いた。聶政は衛から韓の朝廷に入ってその主を刺した。功を成して求めを得ると、退いて自ら朝廷で身を処し、屍を市にさらした。いままことに勇士を得て、強い漢の威に乗じ、義の無い匈奴を圧し、その生死を握り、その過ちを責め立て、曹劌が斉の桓公を脅して求めを通したようにできれば、鋒先は押し込まれ鋭さは折れ、天幕の中は乱れて上も下も逃げ散るだろう。そこへ身軽な精鋭でその後を追えば、匈奴は必ず腕を組んで、あえて立ち向かおうとはしまい」

解説

文学に「三尺の刃に頼むのか」と笑われた大夫が、その三尺の刃が動かした歴史を数え上げた段です。荊軻、専諸、聶政、そして曹劌。**一人の勇士が万乗の君に迫った例**ばかりを並べます。曹劌が斉の桓公を脅して求めを通したように、と。そこから戦術に落としました。天幕の中を乱れさせ、逃げ散るところへ身軽な精鋭を送り込めば、匈奴は腕を組んで立ち向かえない、と。徳論の応酬から、いきなり実行手順へ降りた段です。

この章句が説くこと

曹劌の斉の桓公を脅して其の求めを遂げしが若し軽銳を以て其の後に随わば匈奴は必ず臂を交えて敢えて格らず荊軻は匕首を提げて不測の強秦に入る急所少数実行

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