塩鉄論 / 水旱篇
大夫曰:「卒徒工匠、以縣官日作公事、財用饒、器用備。家人合會、褊於日而勤於用、鐵力不銷煉、堅柔不和。故有司請總鹽、鐵、一其用、平其賈、以便百姓公私。雖虞、夏之為治、不易於此。吏明其教、工致其事、則剛柔和、器用便。此則百姓何苦?而農夫何疾?」
新字:大夫曰:「卒徒工匠、以県官日作公事、財用饒、器用備。家人合会、褊於日而勤於用、鉄力不銷煉、堅柔不和。故有司請総塩、鉄、一其用、平其賈、以便百姓公私。雖虞、夏之為治、不易於此。吏明其教、工致其事、則剛柔和、器用便。此則百姓何苦?而農夫何疾?」
書き下し
大夫曰く、卒徒工匠は、縣官を以て日々公事を作す、財用饒かにして、器用備わる。家人合會すれば、日に褊くして用に勤め、鐵力銷煉せられず、堅柔和せず。故に有司は鹽・鐵を總べ、其の用を一にし、其の賈を平らかにし、以て百姓の公私を便にせんことを請えり。虞・夏の治を為すと雖も、此より易えず。吏其の教を明らかにし、工其の事を致さば、則ち剛柔和し、器用便なり。此れ則ち百姓何ぞ苦しみ、而して農夫何ぞ疾まんや。
現代語訳
大夫が言った。「兵卒や工匠は、官のもとで日々公の仕事をしている。財も潤沢で、道具もそろっている。民間が寄り合って作ると、日数に追われて使うことばかりを急ぎ、鉄はよく溶かし鍛えられず、硬さと粘りが釣り合わない。だから担当官は、塩と鉄を統括し、規格を一つにし、値を一定にして、民の公私両面を便利にするよう願い出たのだ。虞や夏の世の治め方をもってしても、これより良いやり方には変えられまい。役人が指導を明らかにし、工人が仕事を尽くせば、硬さと粘りは釣り合い、道具は使いやすくなる。それで民のどこが苦しく、農夫のどこが痛むというのか」
解説
品質は官営のほうが高い、という反論です。**民間が寄り合って作れば、日数に追われて鉄はよく鍛えられず、硬さと粘りが釣り合わない。**規格を一つにし値を一定にするのは民のためだ、と。前段が「割り当てに追われて現場に届かない」と言ったのに対し、こちらは「急いでいるのは民間のほうだ」と押し返している。同じ製造現場を、正反対の側から描いた対の段です。
この章句が説くこと
其の用を一にし其の賈を平らかにす鉄力銷煉せられず堅柔和せず吏其の教を明らかにし工其の事を致さば規格品質集約
関連する章句
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『塩鉄論』水旱篇賢良曰く、卒徒工匠とや。故に民の租を占めて鼓鑄し、鹽を煮るを得し時、鹽は五穀と賈を同じくし、器は和利にして用に中れり。今、縣官の鐵器を作るや、多く苦惡にして、用費省かれず、卒徒煩わしくして力作盡くさず。家人相い一にし、父子力を戮せ、各々善器を為るを務め、器の善からざる者は集まらず。農事急なれば、挽運して之を阡陌の間に衍く。民相い與に市買し、財貨・五穀・新幣を以て貨に易うるを得、或いは時に民に貰し、作業を棄てず。田器を置くに、各々欲する所を得たり。更繇は省約にして、縣官は徒を以て復た作りて道橋諸發を繕治す、民之を便とせり。今、其の原を總べ、其の賈を壹にすれば、器多く堅くして、善惡擇ぶ所無し。吏數しば在らず、器得難し。家人多く儲うる能わず、多く儲うれば則ち鎮生ず。膏腴の日を棄てて、遠く田器を市れば、則ち良時に後る。鹽・鐵の賈貴くして、百姓便ならず。貧民は或いは木もて耕し手もて耨り、土耰して淡食す。鐵官は器を賣るも售れず、或いは頗る民に賦與す。卒徒作りて呈に中らず、時に命じて之を助けしむ。發征限り無く、更繇以て劇を均しくす、故に百姓之に疾苦す。古者、千室の邑、百乘の家、陶冶工商、四民の求め、以て相い更うるに足れり。故に農民は畦畝を離れずして田器に足り、工人は斬伐せずして材木に足り、陶冶は田を耕さずして粟米に足る、百姓各々其の便を得て、上は事無し。是を以て王者は本を務めて末を作さず、炫耀を去り、雕琢を除き、民を湛うるに禮を以てし、民に示すに樸を以てす、是を以て百姓は本を務めて末に營まず。
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『塩鉄論』水旱篇大夫曰く、議する者は其の辭約にして指の明らかなるを貴ぶ。眾人の聽に可なれば、繁文稠辭に至らず。多言は有司の俗を化するの計を害して、家人の語となる。陶朱の生を為すや、本末徑を異にし、一家に數事ありて、治生の道乃ち備わる。今、縣官農器を鑄て、民をして本を務め、末に營まざらしむれば、則ち饑寒の累い無し。鹽・鐵、何ぞ害あらんとして罷めんや。
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『塩鉄論』復古篇大夫曰く、故の扇水都尉彭祖寧に歸り、言えらく、『鹽・鐵の令品、令品甚だ明らかなり。卒徒は縣官に衣食し、鐵器を作鑄して、給用甚だ眾く、民に妨げ無し。而るに吏或いは良ならず、禁令行われず、故に民之を煩苦す』と。令の意は鹽・鐵を總一するは、獨り利入の為のみに非ず、將に以て本を建て末を抑え、朋黨を離し、淫侈を禁じ、幷兼の路を絕たんとするなり。古者、名山大澤は以て封ぜず、下の利を專らにするが為なり。山海の利、廣澤の畜えは、天地の藏なり、皆宜しく少府に屬すべきも、陛下は私せず、以て大司農に屬せしめ、以て百姓を佐助す。浮食奇民は、山海の貨を擅にせんと好欲し、以て富業を致し、細民を役利す、故に事を沮み議する者眾し。鐵器兵刃は、天下の大用なり、眾庶の宜しく事とすべき所に非ざるなり。往者、豪強大家は、山海の利を管するを得、鐵石を采り鼓鑄し、海を煮て鹽と為す。一家に眾を聚むること、或いは千餘人に至る、大抵は盡く放流の人民を收むるなり。遠く鄉里を去り、墳墓を棄て、大家に依倚し、深山窮澤の中に聚まり、奸偽の業を成し、朋黨の權を遂ぐ、其の輕がるしく非を為すこと亦た大なり。今者、賢を進むるの途を廣め、守尉を練り擇ぶ、鹽・鐵を去るを待たずして民を安んずるなり。
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『塩鉄論』水旱篇賢良曰く、農は天下の大業なり、鐵器は民の大用なり。器用便利なれば、則ち力を用うること少なくして作を得ること多く、農夫は事を樂しみ功を勸む。用具わらざれば、則ち田疇荒れ、穀殖えず、力を用うること鮮くして、功自ずから半ばす。器の便と不便と、其の功相い什して倍するなり。縣官の鐵器を鼓鑄するや、大抵多く大器を為り、員程に應ずるを務めて、民用に給せず。民用は鈍弊にして、草を割るも痛からず、是を以て農夫は作劇しくして、獲るを得る者少なく、百姓之に苦しむ。
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『塩鉄論』禁耕篇大夫曰く、家人に寶器有れば、尚お函匣して之を藏す、況んや人主の山海をや。夫れ權利の處は、必ず深山窮澤の中に在り、豪民に非ずんば其の利を通ずる能わず。異時、鹽鐵未だ籠せられず、布衣に朐・邴有り、人君に吳王有り、皆鹽鐵の初議なり。吳王は山澤の饒を專らにし、其の民に薄く賦し、窮乏を賑贍して、以て私威を成す。私威積みて逆節の心作る。夫れ蚤くに其の源を絕たずして其の末を憂うるは、呂梁を決するが若く、沛然として、其の傷る所必ず多からん。太公曰く、『一家百家を害し、百家諸侯を害し、諸侯天下を害す、王法之を禁ず』と。今民を權利に放ち、鹽鐵を罷めて以て暴強に資し、其の貪心を遂げしめば、眾邪群聚して、私門黨を成し、則ち強禦は日に以て制せられずして、幷兼の徒の奸形成らん。
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『塩鉄論』本議篇大夫曰く、管子云う、國に沃野の饒有るも民の食に足らざる者は、器械備わらざればなり。山海の貨有るも民の財に足らざる者は、商工備わらざればなり、と。隴・蜀の丹漆旄羽、荊・揚の皮革骨象、江南の楠梓竹箭、燕・齊の魚鹽旃裘、兗・豫の漆絲絺纻は、養生送終の具なり。商を待ちて通じ、工を待ちて成る。故に聖人は舟楫の用を作爲して、以て川谷を通じ、牛を服し馬を駕して、以て陵陸に達す。遠きを致し深きを窮むるは、庶物を交えて百姓を便ずる所以なり。是を以て先帝は鐵官を建てて以て農用に贍らせ、均輸を開きて以て民財を足らしむ。鹽・鐵・均輸は、萬民の戴仰して取給する所の者なり。之を罷むるは、便ならざるなり、と。