塩鉄論 / 疾貪篇
大夫曰:「然。為醫以拙矣、又多求謝。為吏既多不良矣、又侵漁百姓。長吏厲諸小吏、小吏厲諸百姓。故不患擇之不熟、而患求之與得異也、不患其不足也、患其貪而無厭也。」
新字:大夫曰:「然。為医以拙矣、又多求謝。為吏既多不良矣、又侵漁百姓。長吏厲諸小吏、小吏厲諸百姓。故不患択之不熟、而患求之与得異也、不患其不足也、患其貪而無厭也。」
書き下し
大夫曰く、然り。醫を為して以て拙なり、又た多く謝を求む。吏と為りて既に多く不良なり、又た百姓を侵漁す。長吏は諸を小吏に厲し、小吏は諸を百姓に厲す。故に之を擇ぶことの熟せざるを患えずして、之を求むると得ると異なるを患うるなり。其の足らざるを患えずして、其の貪りて厭くこと無きを患うるなり。
現代語訳
大夫が言った。「そのとおりだ。医者として腕が拙いうえに、謝礼だけは多く求める。官吏となれば質の悪い者が多いうえに、民から搾り取る。上級の役人は下級の役人を責め立て、下級の役人は民を責め立てる。だから、選び方が十分でないことを憂えるのではない。求めた人物と、実際に得られた人物とが違うことこそ憂えるべきなのだ。能力が足りないことを憂えるのではない。貪って飽きることがないことを憂えるのだ」
解説
「然り」で始まる、この書では珍しい段です。大夫は賢良の選抜論をいったん受け取り、そのうえで論点をずらします。**問題は選び方の甘さではない。求めた人物と、実際に来た人物が違うことだ。**選考の精度ではなく、事後の変質を見ろ、という主張です。医者の比喩が痛い。腕が拙いうえに謝礼だけは多く求める。長吏が小吏を責め、小吏が民を責めるという搾取の連鎖も、一行で描き切っています。
この章句が説くこと
之を求むると得ると異なるを患うるなり長吏は諸を小吏に厲し小吏は諸を百姓に厲す其の貪りて厭くこと無きを患う採用貪欲連鎖
関連する章句
-
『韓非子』問田第四十二二君は聲詞に駆られ、辯説に眩い、屯伯に試みず、州部に關らず。故に政を失い國を亡うの患有り。
-
『韓非子』顯學第五十故に孔子曰く、「容を以て人を取らんか、之を子羽に失す、言を以て人を取らんか、之を宰予に失す。」・・・故に明主の吏・宰相は必ず州部より起こり、猛將は必ず卒伍より發る。
-
『韓非子』外儲說左下第三十三夫れ橘柚を樹うる者は、之を食えば則ち甘く、之を嗅げば則ち香し。枳棘を樹うる者は、成れば而ち人を刺す。故に君子は樹つる所を慎む。
-
『韓非子』難二第三十七桓公曰く、「吾聞く、人に君たる者は人を索むるに労し、人を使うに佚すと。吾仲父を得ること已に難し。仲父を得るの後、何為れぞ易からざらんや。」
-
『商君書』徠民秦の鄰と與にする所の者は、三晉なり。兵を用いんと欲する所の者は、韓魏なり。彼は土狹くして民眾く、その宅は參居して并處し、その賓萌は賈息す。民は上に通名無く、下に田宅無くして、姦に恃み末作を務めて以て處る。人の陰陽澤水に復する者、半ばを過ぐ。これその土のその民を生かすに足らざるなり、秦の民のその土を實たすに足らざるに過ぐる有るに似たり。意うに民の情、その欲する所の者は、田宅なり。而して晉のこれ有る無きは信なり、秦の餘り有るは必なり。此くの如くして民の西せざるは、秦の士は戚みて民は苦しめばなり。
-
論語・泰伯篇子曰く、狂にして直ならず、侗にして愿ならず、悾悾にして信ならずんば、吾之を知らず。