韓非子 / 問田第四十二
且足下獨不聞楚將宋觚而失其政,魏相馮離而亡其國?二君者驅於聲詞,眩乎辯說,不試於屯伯,不關乎州部,故有失政亡國之患。
新字:且足下独不聞楚将宋觚而失其政,魏相馮離而亡其国?二君者駆於声詞,眩乎弁説,不試於屯伯,不関乎州部,故有失政亡国之患。
書き下し
二君は聲詞に駆られ、辯説に眩い、屯伯に試みず、州部に關らず。故に政を失い國を亡うの患有り。
現代語訳
(楚と魏の)二人の君主は、うわべの言葉に動かされ、巧みな弁舌に目がくらみ、現場の末端で試用せず、地方で実績を見なかった。だから政治を失い国を滅ぼす憂き目に遭ったのだ。
解説
楚の将軍であった宋觚や、魏の宰相であった馮離という人物を重く用いた二人の君主は、耳あたりの良い評判や、巧みな話しぶりにすっかり心を奪われてしまい、その人物を下っ端の役目からきちんと試すことも、地方での実際の働きぶりを見ることもしなかった。だからこそ政治を失い、国を滅ぼす憂き目にあったのだと韓非は指摘します。話が上手い、評判が良いというだけで人を大役に就けるのは危うい賭けです。子どもの習い事の先生を選ぶときも、新しく雇う人を決めるときも、人づての噂や第一印象だけで決めず、まずは小さな仕事や試しの期間を通して実際の働きぶりを見ておくことが、後々の大きな失敗を防ぐことにつながります。
この章句が説くこと
採用試用期間実務能力実績主義プレゼンテーション即戦力
関連する章句
-
『韓非子』顯學第五十故に孔子曰く、「容を以て人を取らんか、之を子羽に失す、言を以て人を取らんか、之を宰予に失す。」・・・故に明主の吏・宰相は必ず州部より起こり、猛將は必ず卒伍より發る。
-
『韓非子』外儲說左下第三十三夫れ橘柚を樹うる者は、之を食えば則ち甘く、之を嗅げば則ち香し。枳棘を樹うる者は、成れば而ち人を刺す。故に君子は樹つる所を慎む。
-
説苑・君道湯、伊尹に問いて曰く、「三公九卿、二十七大夫、八十一元士、之を知るに道有りや」と。伊尹対えて曰く、「昔者堯は人を見て知り、舜は人に任せて然る後に知り、禹は功を成すを以て之を挙ぐ。夫れ三君の賢を挙ぐるや、皆道を異にして功を成す、然れども尚お失う者有り、況んや法度無くして己に任せ、直ちに意もて人を用うれば、必ず大いに失わん。故に君臣をして自ら其の能を貢がしむれば、則ち万一も失わざるなり。王者は何ぞや、賢を選ぶを以てす。夫れ王者は賢材を得て以て自ら輔け、然る後に治まるなり。堯舜の明有りと雖も、股肱備わらざれば、則ち主恩流れず、化沢行われず。故に明君上に在りて、士を択ぶに慎み、賢を求むるに務め、四佐を設けて以て自ら輔け、英俊有りて以て官を治め、其の爵を尊び、其の禄を重んじ、賢者は進みて以て顕栄し、罷者は退きて力に労す。是を以て主に遺憂無く、下に邪慝無く、百官能く治まり、臣下職を楽しみ、恩は群生に流れ、沢は草木を潤す。昔者虞舜は左に禹、右に皋陶、堂を下らずして天下治まる、此れ能を使うの効なり」と。
-
『韓非子』難二第三十七桓公曰く、「吾聞く、人に君たる者は人を索むるに労し、人を使うに佚すと。吾仲父を得ること已に難し。仲父を得るの後、何為れぞ易からざらんや。」
-
『韓非子』六反第四十六其の言を聴きて其の當を求め、其の身を任じて其の功を責むれば、則ち無術不肖の者窮す。・・・之に任ずるに事を以てすれば、愚智分る。
-
論語・泰伯篇子曰く、狂にして直ならず、侗にして愿ならず、悾悾にして信ならずんば、吾之を知らず。