塩鉄論 / 散不足篇
「古者、人君敬事愛下、使民以時、天子以天下為家、臣妾各以其時供公職、古今之通義也。今縣官多畜奴婢、坐稟衣食、私作產業、為奸利、力作不盡、縣官失實。百姓或無斗筲之儲、官奴累百金、黎民昏晨不釋事、奴婢垂拱遨遊也。
新字:「古者、人君敬事愛下、使民以時、天子以天下為家、臣妾各以其時供公職、古今之通義也。今県官多畜奴婢、坐稟衣食、私作産業、為奸利、力作不尽、県官失実。百姓或無斗筲之儲、官奴累百金、黎民昏晨不釈事、奴婢垂拱遨遊也。
書き下し
古者、人君は事を敬み下を愛し、民を使うに時を以てす、天子は天下を以て家と為し、臣妾は各々其の時を以て公職に供す、古今の通義なり。今縣官は多く奴婢を畜い、坐して衣食を稟け、私に產業を作し、奸利を為す、力作盡くさずして、縣官實を失う。百姓は或いは斗筲の儲け無く、官奴は百金を累ぬ、黎民は昏晨に事を釋かず、奴婢は垂拱遨遊するなり。
現代語訳
昔は、君主は事を慎み下の者を愛し、民を使うにも時期を選んだ。天子は天下を我が家とし、臣下も下働きもそれぞれの時に応じて公の職に仕えた。これが古今を通じた道理である。いまは官が多くの奴婢を抱え、彼らは座ったまま衣食を支給され、私的に商売をして不正な利を得ている。労働は尽くされず、官は実を失っている。民には一斗の蓄えすらない者がいるのに、官の奴婢は百金を積んでいる。民は明け方から夕方まで仕事を離れられないのに、奴婢は手をこまねいて遊び歩いている。
解説
官が抱える人員の話です。支給されるものは受け取り、労働は尽くさず、私的な商売で不正な利を得ている。そして民には一斗の蓄えもないのに、官の奴婢は百金を積む。制度の内側にいる人と外側にいる人のあいだで、負担と取り分が逆転している、という指摘です。組織のなかにも、外にも、これに似た構図は生まれます。守られている側が、守られていない側より豊かになる瞬間に、制度への支持は急に失われます。
この章句が説くこと
百姓は斗筲の儲け無く官奴は百金を累ぬ黎民は昏晨に事を釈かず奴婢は垂拱遨遊す力作尽くさずして県官実を失う制度公私運用
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