塩鉄論 / 散不足篇
「古者、夫婦之好、一男一女、而成家室之道。及後、士一妾、大夫二、諸侯有侄娣九女而已。今諸侯百數、卿大夫十數、中者侍御、富者盈室。是以女或曠怨失時、男或放死無匹。
新字:「古者、夫婦之好、一男一女、而成家室之道。及後、士一妾、大夫二、諸侯有侄娣九女而已。今諸侯百数、卿大夫十数、中者侍御、富者盈室。是以女或曠怨失時、男或放死無匹。
書き下し
古者、夫婦の好は、一男一女にして、家室の道を成す。後に及び、士は一妾、大夫は二、諸侯は侄娣九女有るのみ。今諸侯は百を數え、卿大夫は十を數え、中なる者は侍御あり、富者は室に盈つ。是を以て女は或いは曠怨して時を失い、男は或いは放死して匹無し。
現代語訳
昔は、夫婦の交わりは一人の男と一人の女で、家庭の道が成り立った。後の世になると、士は妾を一人、大夫は二人、諸侯は姪や妹を含めて九人までとされた。いまは諸侯が百人を数え、卿や大夫が十人を数え、中くらいの者でも侍女を置き、富める者は部屋を満たしている。だから女はむなしく怨んで時期を逃し、男は放り出されたまま死んで連れ合いを持てない。
解説
この篇のなかで、いちばん構造的な指摘かもしれません。上位の者が多く抱えれば、下位に回らなくなる。女は時期を逃して怨み、男は連れ合いを持てないまま死ぬ。贅沢を道徳の問題としてではなく、限られた数の分配の問題として書いています。上限の定めがあった時代には、この計算が壊れなかった。定めが外れると、上で吸収された分だけ下が空くという単純な算術が働きます。
この章句が説くこと
女は或いは曠怨して時を失い男は或いは放死して匹無し諸侯は百を数え卿大夫は十を数う一男一女にして家室の道を成す分配偏り格差
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