塩鉄論 / 散不足篇
「古者不粥飪、不市食。及其後、則有屠沽、沽酒市脯魚鹽而已。今熟食遍列、殽施成市、作業墮怠、食必趣時、楊豚韭卵、狗䐲馬朘、煎魚切肝、羊淹雞寒、挏馬酪酒、蹇捕胃脯、胹羔豆賜、鷇膹鴈羹、臭鮑甘瓠、熟梁貊炙。
新字:「古者不粥飪、不市食。及其後、則有屠沽、沽酒市脯魚塩而已。今熟食遍列、殽施成市、作業堕怠、食必趣時、楊豚韭卵、狗䐲馬朘、煎魚切肝、羊淹雞寒、挏馬酪酒、蹇捕胃脯、胹羔豆賜、鷇膹鴈羹、臭鮑甘瓠、熟梁貊炙。
書き下し
古者、飪を粥がず、食を市わず。其の後に及び、則ち屠沽有り、酒を沽り脯魚鹽を市うのみ。今熟食遍く列し、殽施市を成す、作業墮怠して、食は必ず時に趣く、楊豚韭卵、狗䐲馬朘、煎魚切肝、羊淹雞寒、挏馬酪酒、蹇捕胃脯、胹羔豆賜、鷇膹鴈羹、臭鮑甘瓠、熟梁貊炙あり。
現代語訳
昔は、調理した物を売らず、出来合いの食べ物を買わなかった。後の世になると、屠って売る者や酒を売る者が現れ、酒や干し肉、魚や塩を売るだけだった。いまは調理済みの食べ物が並び、料理が市場を成している。仕事のほうは怠けておいて、食事の時刻には必ず出かけていく。豚の煮物に韮と卵、犬の肉、馬の肉、魚の煮つけ、肝の切り身、羊の漬け肉、鶏の煮こごり、馬乳の酒、干した胃袋、煮た子羊、雛鳥の吸い物、雁の羹、なれ鮨、瓜、蒸した粟、異国風の炙り肉——何でもある。
解説
外食産業の誕生を、批判の形で記録した一段です。ここに面白い一句があります。**作業墮怠して、食は必ず時に趣く**——仕事は怠けるのに、食事の時間には必ず出かける。並んだ料理の名前の多さが、そのまま市場の充実を示していて、これは経済の発展の記録としても読めます。同じ光景を、賢良は生産からの離脱として見た。豊かさの指標と衰えの兆候は、しばしば同じものです。
この章句が説くこと
飪を粥がず食を市わず熟食遍く列し殽施市を成す作業堕怠して食は必ず時に趣く外食便利労働
関連する章句
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『塩鉄論』散不足篇古者、庶人は糲食藜藿にして、鄉飲酒・膢臘・祭祀に非ざれば酒肉無し。故に諸侯は故無くして牛羊を殺さず、大夫士は故無くして犬豕を殺さず。今閭巷縣佰、阡伯にて屠沽し、故無くして烹殺し、相い聚まりて野外にす。粟を負いて往き、肉を挈げて歸る。夫れ一豕の肉は、中年の收を得、十五斗の粟は、丁男半月の食に當たる。
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『塩鉄論』散不足篇古者、穀物菜果は、時ならざれば食わず、鳥獸魚鱉は、殺すに中らざれば食わず。故に僥罔は澤に入らず、雜毛は取らず。今富者は驅りて殲罔罝を逐い、麑鷇を掩捕し、耽湎沈酒して百川を鋪く。羔を鮮にし䍮し、胎肩を幾くし、黃口を皮ぐ。春の鵝、秋の鶵、冬の葵、溫かき韭、浚たる茈蓼蘇、豐かなる薷耳の菜、毛果蟲貉あり。
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『塩鉄論』散不足篇古者、黍を燔き稗を食い、而して豚を捭きて以て相い饗す。其の後、鄉人酒を飲むに、老者は豆を重ね、少者は立ちて食う、一醬一肉、旅飲するのみ。其の後に及び、賓婚相い召せば、則ち豆羹白飯、綦膾熟肉なり。今民間の酒食は、殽旅重疊し、燔炙案に滿ち、臑鱉膾鯉、麑卵鶉鷃橙枸、鮐鱧醢醯、眾物雜味なり。
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『塩鉄論』散不足篇古者、衣服の制に中らず、器械の用に中らざるは、市に粥がず。今民間は不中の物を雕琢し、玩好無用の器を刻畫す。玄黃青を雜え、五色の繡衣あり、蒲人雜婦を戲弄し、百獸馬戲鬥虎、唐銻追人、奇蟲胡妲あり。
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『塩鉄論』散不足篇古者、庶人は春夏に耕耘し、秋冬に收藏す、昏晨に力作し、夜を以て日に繼ぐ。詩に云う、『晝は爾に茅を於り、宵は爾に绹を索う、亟かに其れ屋に乘れ、其れ始めて百穀を播かん』と。膢臘に非ざれば休息せず、祭祀に非ざれば酒肉無し。今賓昏の酒食は、接連して相い因り、酲を析くこと什の半ば、事を棄てて相い隨う、慮るに乏しき日無し。
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『塩鉄論』水旱篇賢良曰く、卒徒工匠とや。故に民の租を占めて鼓鑄し、鹽を煮るを得し時、鹽は五穀と賈を同じくし、器は和利にして用に中れり。今、縣官の鐵器を作るや、多く苦惡にして、用費省かれず、卒徒煩わしくして力作盡くさず。家人相い一にし、父子力を戮せ、各々善器を為るを務め、器の善からざる者は集まらず。農事急なれば、挽運して之を阡陌の間に衍く。民相い與に市買し、財貨・五穀・新幣を以て貨に易うるを得、或いは時に民に貰し、作業を棄てず。田器を置くに、各々欲する所を得たり。更繇は省約にして、縣官は徒を以て復た作りて道橋諸發を繕治す、民之を便とせり。今、其の原を總べ、其の賈を壹にすれば、器多く堅くして、善惡擇ぶ所無し。吏數しば在らず、器得難し。家人多く儲うる能わず、多く儲うれば則ち鎮生ず。膏腴の日を棄てて、遠く田器を市れば、則ち良時に後る。鹽・鐵の賈貴くして、百姓便ならず。貧民は或いは木もて耕し手もて耨り、土耰して淡食す。鐵官は器を賣るも售れず、或いは頗る民に賦與す。卒徒作りて呈に中らず、時に命じて之を助けしむ。發征限り無く、更繇以て劇を均しくす、故に百姓之に疾苦す。古者、千室の邑、百乘の家、陶冶工商、四民の求め、以て相い更うるに足れり。故に農民は畦畝を離れずして田器に足り、工人は斬伐せずして材木に足り、陶冶は田を耕さずして粟米に足る、百姓各々其の便を得て、上は事無し。是を以て王者は本を務めて末を作さず、炫耀を去り、雕琢を除き、民を湛うるに禮を以てし、民に示すに樸を以てす、是を以て百姓は本を務めて末に營まず。