塩鉄論 / 散不足篇
「古者、穀物菜果、不時不食、鳥獸魚鱉、不中殺不食。故僥罔不入於澤、雜毛不取。今富者逐驅殲罔罝、掩捕麑鷇、耽湎沈酒鋪百川。鮮羔䍮、幾胎肩、皮黃口。春鵝秋鶵、冬葵溫韭、浚茈蓼蘇、豐薷耳菜、毛果蟲貉。
新字:「古者、穀物菜果、不時不食、鳥獣魚鱉、不中殺不食。故僥罔不入於沢、雑毛不取。今富者逐駆殲罔罝、掩捕麑鷇、耽湎沈酒鋪百川。鮮羔䍮、幾胎肩、皮黄口。春鵝秋鶵、冬葵温韭、浚茈蓼蘇、豊薷耳菜、毛果虫貉。
書き下し
古者、穀物菜果は、時ならざれば食わず、鳥獸魚鱉は、殺すに中らざれば食わず。故に僥罔は澤に入らず、雜毛は取らず。今富者は驅りて殲罔罝を逐い、麑鷇を掩捕し、耽湎沈酒して百川を鋪く。羔を鮮にし䍮し、胎肩を幾くし、黃口を皮ぐ。春の鵝、秋の鶵、冬の葵、溫かき韭、浚たる茈蓼蘇、豐かなる薷耳の菜、毛果蟲貉あり。
現代語訳
昔は、穀物も野菜も果物も、時季でなければ食べなかった。鳥獣も魚も鼈も、殺してよい大きさに育っていなければ食べなかった。だから細かい網を沢に入れず、まだら毛の若い獣は取らなかった。いまは富める者が獣を追い立てて網や罠にかけ、小鹿や巣立ち前の雛まで捕らえ、酒に溺れて川のように並べ立てる。子羊を生のまま炙り、腹の中の子や肩肉を惜しみなく使い、口の黄色い雛鳥の皮を剥ぐ。春の鵞鳥、秋のひな鳥、冬の葵、温室の韮、生き生きとした紫蘇や蓼、豊かな薬草の菜、獣の毛皮に包んだ果物や虫まで並ぶ。
解説
散不足篇の具体例が始まります。この篇は「古者……今……」という対比を延々と並べる構成で、当時の暮らしぶりを知る資料としても価値が高い箇所です。最初に置かれたのが食べ物でした。時季でなければ食べない、育ちきっていないものは殺さない。取り尽くさないための線引きが、かつては習慣として存在した。いまは小鹿も雛も腹の中の子も取る。持続性の話であり、同時に、線引きが消えると際限がなくなるという話でもあります。
この章句が説くこと
時ならざれば食わず殺すに中らざれば食わず僥罔は沢に入らず麑鷇を掩捕す節度季節乱獲
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