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塩鉄論 / 散不足篇

「古者、庶人耋老而後衣絲、其餘則麻枲而已、故命曰布衣。及其後、則絲裏枲表、直領無袆、袍合不緣。夫羅紈文繡者、人君后妃之服也。繭紬縑練者、婚姻之嘉飾也。是以文繒薄織、不粥於市。今富者縟繡羅紈、中者素綈冰錦。常民而被后妃之服、褻人而居婚姻之飾。夫紈素之賈倍縑、縑之用倍紈也。

新字:「古者、庶人耋老而後衣糸、其余則麻枲而已、故命曰布衣。及其後、則糸裏枲表、直領無袆、袍合不縁。夫羅紈文繡者、人君后妃之服也。繭紬縑練者、婚姻之嘉飾也。是以文繒薄織、不粥於市。今富者縟繡羅紈、中者素綈冰錦。常民而被后妃之服、褻人而居婚姻之飾。夫紈素之賈倍縑、縑之用倍紈也。

書き下し

古者、庶人は耋老にして後に絲を衣る、其の餘は則ち麻枲のみ、故に命じて布衣と曰う。其の後に及び、則ち絲を裏にし枲を表にし、直領にして袆無く、袍は合わせて緣らず。夫れ羅紈文繡は、人君后妃の服なり。繭紬縑練は、婚姻の嘉飾なり。是を以て文繒薄織は、市に粥がず。今富者は縟繡羅紈、中なる者は素綈冰錦なり。常民にして后妃の服を被り、褻人にして婚姻の飾に居る。夫れ紈素の賈は縑に倍し、縑の用は紈に倍するなり。

現代語訳

昔は、庶民は年老いてからはじめて絹を着た。それ以外は麻ばかりで、だから庶民を「布衣」と呼んだ。後の世になると、絹を裏にして麻を表にし、襟はまっすぐで飾りがなく、上着は合わせるだけで縁取りもしなかった。そもそも薄絹や刺繍は君主や后妃の服であり、上等の絹織物は婚礼の晴れ着の飾りである。だから模様入りの絹や薄い織物は、市に出さなかった。いまは富める者が刺繍を重ねた薄絹をまとい、中くらいの者でも滑らかな絹や氷のような錦を着る。普通の民が后妃の服を着て、身分の低い者が婚礼の飾りをふだんに着ている。そもそも薄絹の値は上等の絹の倍もするが、実用としては上等の絹のほうが倍もつのだ。

解説

衣服の逸脱です。庶民が年老いてはじめて絹を着る、という線が引かれていました。だから庶民を「布衣」と呼ぶ。いまは誰もが后妃の服を着ている、と。着るものが身分を示さなくなったことを、賢良は秩序の崩壊として語ります。ただし最後の一行が実務的で、**薄絹は値が倍だが、実用としては上等の絹のほうが倍もつ**。高いものが良いとは限らない、という指摘です。値段と耐用年数を並べて見せるところに、この人の観察眼が出ています。

この章句が説くこと

常民にして后妃の服を被る庶人は耋老にして後に糸を衣る文繒薄織は市に粥がず身分衣服逸脱

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