塩鉄論 / 散不足篇
「古者、采椽茅茨、陶桴復穴、足禦寒暑、蔽風雨而已。及其後世、采椽不斲、茅茨不翦、無斲削之事、磨礱之功。大夫達棱楹、士穎首、庶人斧成木構而已。今富者井幹增梁、雕文檻楯、堊壁飾。
書き下し
古者、采椽茅茨、陶桴復穴、寒暑を禦ぎ、風雨を蔽うに足るのみ。其の後世に及び、采椽斲らず、茅茨翦らず、斲削の事、磨礱の功無し。大夫は棱楹に達し、士は穎首し、庶人は斧もて木構を成すのみ。今富者は井幹梁を增し、雕文檻楯、堊壁を飾る。
現代語訳
昔は、削らない垂木に茅葺きの屋根、土をこねた梁や穴を掘った住まいで、寒さ暑さを防ぎ、風雨をよければそれで足りた。後の世になっても、垂木は削らず茅葺きの端も揃えず、切り削る仕事も磨き上げる手間もなかった。大夫でようやく角柱を通し、士は先を整える程度、庶民は斧で木を組むだけだった。いまは富める者が井桁を組んで梁を重ね、彫刻を施した文様や手すりを設け、白壁を塗って飾り立てる。
解説
二つめは住まいです。ここでも基準は同じで、**寒暑をしのぎ風雨をよければ足りる**。用が足りているかどうかが線でした。注目したいのは中段で、後の世になっても大夫は角柱、士は先を整える程度、庶民は斧で組むだけ、と身分ごとの上限が示されていること。制度による歯止めとは、この上限のことです。それが外れた結果として、いまの彫刻と白壁がある、という並べ方になっています。
この章句が説くこと
寒暑を禦ぎ風雨を蔽うに足るのみ井幹梁を增し雕文檻楯す采椽斲らず茅茨翦らず住まい身の丈節度
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