塩鉄論 / 遵道篇
大夫曰:「御史!」御史未應。謂丞相史曰:「文學結髮學語、服膺不舍、辭若循環、轉若陶鈞。文繁如春華、無效如抱風。飾虛言以亂實、道古以害今。從之、則縣官用廢、虛言不可實而行之、不從、文學以為非也、眾口囂囂、不可勝聽。諸卿都大府日久矣、通先古、明當世、今將何從而可矣?」
新字:大夫曰:「御史!」御史未応。謂丞相史曰:「文学結髪学語、服膺不舎、辞若循環、転若陶鈞。文繁如春華、無効如抱風。飾虚言以乱実、道古以害今。従之、則県官用廃、虚言不可実而行之、不従、文学以為非也、眾口囂囂、不可勝聴。諸卿都大府日久矣、通先古、明当世、今将何従而可矣?」
書き下し
大夫曰く、御史よ、と。/御史未だ應ぜず。/丞相史に謂いて曰く、文學は結髮より語を學び、膺に服して舍てず、辭は循環するが若く、轉ずること陶鈞の若し。文は繁きこと春華の如く、效無きこと風を抱くが如し。虛言を飾りて以て實を亂し、古を道いて以て今を害す。之に從えば、則ち縣官の用は廢る、虛言は實として之を行うべからず、從わざれば、文學は以て非と為す、眾口囂囂として、聽くに勝うべからず。諸卿は都大府なること日久し、先古に通じ、當世に明らかなり、今將た何に從いて可ならんや。
現代語訳
大夫が言った。「御史よ」。御史は答えなかった。/そこで丞相史に向かって言った。「文学は髪を結う年頃から言葉を学び、胸に納めて手放さない。言葉は輪のように巡り、ろくろのようにくるくる回る。文章は春の花のように繁っているが、成果は風を抱くように何もない。空虚な言葉を飾って実質を乱し、古を語って今を害する。彼らに従えば官の財政は立ち行かなくなる。空言は実際に行えるものではない。従わなければ、文学はそれを非とする。多くの口がやかましく、聴きおおせるものではない。諸卿は大官庁にいることが久しく、古に通じ当世にも明るい。いま、いったい何に従えばよいのか」
解説
大夫が御史を呼んだが、答えがない。前の篇で二度も黙り込んだ御史は、もう出てこられません。そこで丞相史に振ります。ここで出てくるのが「文は繁きこと春華の如く、効無きこと風を抱くが如し」——言葉は春の花のように咲き乱れているが、抱えているのは風だけだ、と。的確で美しい悪口です。そのうえで、従っても従わなくても行き詰まるという困りかたを率直に述べている。議事の記録として生々しい一段です。
この章句が説くこと
文は繁きこと春華の如く効無きこと風を抱くが如し虚言を飾りて以て実を乱す古を道いて以て今を害す成果言葉実効
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