塩鉄論 / 地廣篇
大夫曰:「挾管仲之智者、非為廝役之使也。懷陶朱之慮者、不居貧困之處。文學能言而不能行、居下而訕上、處貧而非富、大言而不從、高厲而行卑、誹譽訾議、以要名采善於當世。夫祿不過秉握者、不足以言治、家不滿檐石者、不足以計事。儒皆貧羸、衣冠不完、安知國家之政、縣官之事乎?何鬥辟造陽也!」
新字:大夫曰:「挟管仲之智者、非為廝役之使也。懐陶朱之慮者、不居貧困之処。文学能言而不能行、居下而訕上、処貧而非富、大言而不従、高厲而行卑、誹誉訾議、以要名采善於当世。夫禄不過秉握者、不足以言治、家不満檐石者、不足以計事。儒皆貧羸、衣冠不完、安知国家之政、県官之事乎?何鬥辟造陽也!」
書き下し
大夫曰く、管仲の智を挾む者は、廝役の使を為さざるなり。陶朱の慮を懷く者は、貧困の處に居らず。文學は能く言いて行う能わず、下に居りて上を訕り、貧に處りて富を非り、大言して從わず、高厲にして行い卑し、誹譽訾議して、以て名を要め善を當世に采る。夫れ祿の秉握に過ぎざる者は、以て治を言うに足らず、家の檐石に滿たざる者は、以て事を計るに足らず。儒は皆貧羸にして、衣冠完からず、安んぞ國家の政、縣官の事を知らんや。何ぞ鬥辟造陽ぞ。
現代語訳
大夫が言った。「管仲ほどの知恵を持つ者は、下働きの使い走りなどしない。陶朱公ほどの思慮を抱く者は、貧しい場所に住まない。文学は言うことはできても行うことができず、下にいて上をそしり、貧しい立場から富を非難し、大きなことを言いながらそのとおりにせず、高く構えながら行いは低い。けなしたり褒めたりして、それで名を求め当世の評判を稼いでいる。そもそも俸禄がひと握りにも満たない者は、政治を語るに足りない。家に一石の蓄えもない者は、事を計るに足りない。儒者はみな貧しく痩せ、着るものも整っていない。どうして国家の政治や官の事務が分かろうか。飛び地や造陽がどうしたというのだ」
解説
議論が完全に人身攻撃に転じました。貧しい者に国の事は分からない、と。論としては成り立ちません。ただしその手前にある「言うことはできても行うことができない」は、この書を通じて繰り返されてきた批判で、まったくの言いがかりでもない。問題は、それが立場そのものの否定に滑ったことです。相手の議論に答えられなくなったとき、相手の資格を疑う形に移る。この転換は、いまも会議室で見られます。
この章句が説くこと
能く言いて行う能わず禄の秉握に過ぎざる者は以て治を言うに足らず下に居りて上を訕る資格批判実績
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