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塩鉄論 / 輕重篇

文學曰:「邊郡山居谷處、陰陽不和、寒凍裂地、沖風飄鹵、沙石凝積、地勢無所宜。中國、天地之中、陰陽之際也、日月經其南、斗極出其北、含眾和之氣、產育庶物。今去而侵邊、多斥不毛寒苦之地、是猶棄江臯河濱、而田於嶺阪菹澤也。轉倉廩之委、飛府庫之財、以給邊民。中國困於繇賦、邊民苦於戍禦。力耕不便種糴、無桑麻之利、仰中國絲絮而後衣之、皮裘蒙毛、曾不足蓋形、夏不失復、冬不離窟、父子夫婦內藏於專室土圜之中。中外空虛、扁鵲何力?而鹽、鐵何福也?」

新字:文学曰:「辺郡山居谷処、陰陽不和、寒凍裂地、沖風飄鹵、沙石凝積、地勢無所宜。中国、天地之中、陰陽之際也、日月経其南、斗極出其北、含眾和之気、産育庶物。今去而侵辺、多斥不毛寒苦之地、是猶棄江臯河浜、而田於嶺阪菹沢也。転倉廩之委、飛府庫之財、以給辺民。中国困於繇賦、辺民苦於戍禦。力耕不便種糴、無桑麻之利、仰中国糸絮而後衣之、皮裘蒙毛、曽不足蓋形、夏不失復、冬不離窟、父子夫婦内蔵於専室土圜之中。中外空虚、扁鵲何力?而塩、鉄何福也?」

書き下し

文學曰く、邊郡は山に居り谷に處り、陰陽和せず、寒凍地を裂き、沖風鹵を飄し、沙石凝積して、地勢宜しき所無し。中國は、天地の中、陰陽の際なり、日月は其の南を經り、斗極は其の北に出づ、眾和の氣を含みて、庶物を產育す。今去りて邊を侵し、多く不毛寒苦の地を斥く、是れ猶お江臯河濱を棄てて、嶺阪菹澤に田するがごときなり。倉廩の委を轉じ、府庫の財を飛ばして、以て邊民に給す。中國は繇賦に困しみ、邊民は戍禦に苦しむ。力めて耕すも種糴に便ならず、桑麻の利無く、中國の絲絮を仰ぎて後に之を衣る、皮裘は毛を蒙るも、曾て形を蓋うに足らず、夏も復を失わず、冬も窟を離れず、父子夫婦は專室土圜の中に內藏す。中外空虛たり、扁鵲何の力ぞ、而して鹽・鐵何の福ぞや。

現代語訳

文学が言った。「辺境の郡は山に住み谷に暮らし、陰陽の気は調和せず、寒さと凍結が地を裂き、吹きつける風が塩を舞い上げ、砂と石が積み重なって、土地はどこも適していない。中原は天地の中央、陰陽の接するところで、日月はその南を通り、北斗はその北に出て、あらゆる調和の気を含み、多くの物を産み育てる。いまそこを離れて辺境へ攻め入り、不毛で寒く苦しい土地を多く開いている。これは長江や黄河の肥えた岸辺を捨てて、山の斜面や湿地で田を作るようなものだ。倉の蓄えを回し、国庫の財を飛ばして辺境の民に配る。中原は労役と税に苦しみ、辺境の民は守備に苦しむ。懸命に耕しても種籾を買うにも不便で、桑や麻の利もなく、中原の綿を頼ってようやく衣を着る。毛皮を着ても体を覆いきれず、夏でも重ね着を脱げず、冬は穴倉から出られない。父子も夫婦も、一つの部屋、土を丸く盛った小屋の中にこもっている。内も外もからっぽだ。どこが扁鵲の力で、どこが塩鉄のおかげなのか」

解説

「財政は回っている」への答えが、辺境の暮らしの描写です。冬は穴倉から出られない、父子も夫婦も一つの土小屋にこもっている。数字ではなく、現地で人がどう暮らしているかを持ち出しました。そして投資判断として突きます。肥えた岸辺を捨てて痩せた山を耕している、と。取った土地の生産性が中原より低いなら、獲得そのものが赤字ではないか、という指摘です。事業の拡大が、より条件の悪い場所へ資源を移しているだけではないか。いまも新規展開を評価するときに要る視点です。

この章句が説くこと

江臯河浜を棄てて嶺阪菹沢に田す倉廩の委を転じ府庫の財を飛ばす中外空虚たり投資選択費用

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