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塩鉄論 / 刺權篇

文學曰:「有司之慮遠、而權家之利近、令意所禁微、而僭奢之道著。自利害之設、三業之起、貴人之家、雲行於塗、轂擊於道、攘公法、申私利、跨山澤、擅官市、非特巨海魚鹽也、執國家之柄、以行海內、非特田常之勢、陪臣之權也、威重於六卿、富累於陶、衛、輿服僭於王公、宮室溢於制度、幷兼列宅、隔絕閭巷、閣道錯連、足以遊觀、鑿池曲道、足以騁騖、臨淵釣魚、放犬走兔、隆豺鼎力、蹋鞠鬥雞、中山素女撫流徵於堂上、鳴鼓巴俞作於堂下、婦女被羅紈、婢妾曳絺纻、子孫連車列騎、田獵出入、畢弋捷健。是以耕者釋耒而不勤、百姓冰釋而懈怠。何者?己為之而彼取之、僭侈相效、上升而不息、此百姓所以滋偽而罕歸本也。」

新字:文学曰:「有司之慮遠、而権家之利近、令意所禁微、而僭奢之道著。自利害之設、三業之起、貴人之家、雲行於塗、轂擊於道、攘公法、申私利、跨山沢、擅官市、非特巨海魚塩也、執国家之柄、以行海内、非特田常之勢、陪臣之権也、威重於六卿、富累於陶、衛、輿服僭於王公、宮室溢於制度、幷兼列宅、隔絶閭巷、閣道錯連、足以遊観、鑿池曲道、足以騁騖、臨淵釣魚、放犬走兔、隆豺鼎力、蹋鞠鬥雞、中山素女撫流徴於堂上、鳴鼓巴俞作於堂下、婦女被羅紈、婢妾曳絺纻、子孫連車列騎、田猟出入、畢弋捷健。是以耕者釈耒而不勤、百姓冰釈而懈怠。何者?己為之而彼取之、僭侈相効、上升而不息、此百姓所以滋偽而罕帰本也。」

書き下し

文學曰く、有司の慮は遠くして、權家の利は近し、令意の禁ずる所は微にして、僭奢の道は著し。利害の設けられ、三業の起こりてより、貴人の家、雲のごとく塗に行き、轂は道に擊つ、公法を攘い、私利を申べ、山澤を跨ぎ、官市を擅にす、特り巨海の魚鹽のみに非ざるなり、國家の柄を執りて、以て海內に行う、特り田常の勢、陪臣の權のみに非ざるなり、威は六卿より重く、富は陶・衛に累なる、輿服は王公を僭し、宮室は制度に溢る、列宅を幷兼して、閭巷を隔絕し、閣道錯連して、以て遊觀するに足り、池を鑿ち道を曲げて、以て騁騖するに足る、淵に臨みて魚を釣り、犬を放ちて兔を走らす、豺を隆くし鼎を力とし、蹋鞠鬥雞す、中山の素女は流徵を堂上に撫し、鳴鼓巴俞は堂下に作す、婦女は羅紈を被り、婢妾は絺纻を曳く、子孫は車を連ね騎を列ね、田獵に出入し、畢弋捷健なり。是を以て耕す者は耒を釋てて勤めず、百姓は冰のごとく釋けて懈怠す。何ぞや。己之を為して彼之を取ればなり、僭侈相い效い、上升して息まず、此れ百姓の偽りを滋して本に歸すること罕なる所以なり。

現代語訳

文学が言った。「担当官の考えが遠くまで及んでいるとしても、権勢家の利益は目の前にある。法令が禁じるのは細かなことなのに、身分を越えた奢りのほうははっきり目に見える。利権の仕組みが設けられ、三つの官営事業が起こって以来、身分の高い家の者たちは雲のように道を行き、車の軸がぶつかり合う。公の法を押しのけ、私の利を伸ばし、山沢にまたがり、官の市を独占する。大海の魚や塩だけではない。国家の権柄を握って天下に振るう。田常の勢いや家臣の家臣の権力どころではない。威は六卿より重く、富は陶朱公や衛の富豪に匹敵する。車も衣服も王侯のものを僭し、屋敷は規定を超える。並びの家を買い占めて路地を封じ、渡り廊下を張り巡らせて遊び歩き、池を掘り道を曲げて馬を走らせる。淵に臨んで魚を釣り、犬を放って兎を追い、猛獣を飼い鼎を持ち上げて力を競い、蹴鞠や闘鶏に興じる。中山の女は座敷で琴の調べを奏で、庭では太鼓と巴渝の舞が鳴る。婦人は薄絹をまとい、下女までが上等の麻を引きずる。子や孫は車を連ね騎馬を並べ、狩りに出入りして網や矢に手慣れている。だから耕す者は鋤を捨てて働かず、民は氷が解けるように気力を失っていく。なぜか。自分が作ったものを、あちらが取っていくからだ。行き過ぎた贅沢が互いに真似され、際限なく上へ上へと昇っていく。民が偽りに走り、本業に戻る者がまれなのは、そのためだ」

解説

官営の目的は併呑の防止だ、という大夫の主張への実地の反証です。長々と続く描写は、その仕組みで実際に太った側の暮らしぶりです。屋敷、渡り廊下、闘鶏、下女の着物まで書き並べる。理屈ではなく、目に見えるものを突きつけている。そして原因を一行で言い切ります。「己之を為して彼之を取る」。働く者と取る者が分かれてしまえば、働く理由がなくなる。制度の趣旨がどれほど正しくても、実際に誰が得をしているかを人は見ている、という指摘です。

この章句が説くこと

己之を為して彼之を取る公法を攘い私利を申ぶ僭侈相い効いて上升して息まず不公平特権士気

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