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淮南子 / 人間訓

秦牛缺徑於山中而遇盜,奪之車馬,解其橐笥,拖其衣被。盜還反顧之,無懼色憂志,驩然有以自得也。盜遂問之曰:「吾奪子財貨,劫子以刀,而志不動,何也?」秦牛缺曰:「車馬所以載身也,衣服所以揜形也。聖人不以所養害其養。」盜相視而笑曰:「夫不以欲傷生,不以利累形者,世之聖人也。以此而見王者,必且以我為事也。」還反殺之。

新字:秦牛欠径於山中而遇盗,奪之車馬,解其橐笥,拖其衣被。盗還反顧之,無懼色憂志,驩然有以自得也。盗遂問之曰:「吾奪子財貨,劫子以刀,而志不動,何也?」秦牛欠曰:「車馬所以載身也,衣服所以揜形也。聖人不以所養害其養。」盗相視而笑曰:「夫不以欲傷生,不以利累形者,世之聖人也。以此而見王者,必且以我為事也。」還反殺之。

書き下し

秦牛缺 山中を徑きて盜に遇う。之が車馬を奪い、其の橐笥を解き、其の衣被を拖く。盜 還り反りて之を顧みるに、懼るる色 憂うる志 無く、驩然として以て自得すること有り。盜 遂に之に問いて曰く「吾 子の財貨を奪い、子を劫かすに刀を以てす。而るに志 動かざるは、何ぞや」と。秦牛缺曰く「車馬は身を載する所以なり。衣服は形を揜う所以なり。聖人は養う所を以て其の養いを害せず」と。盜 相い視て笑いて曰く「夫れ欲を以て生を傷らず、利を以て形を累わせざる者は、世の聖人なり。此れを以て王者に見えば、必ず且に我を以て事と爲さん」と。還り反りて之を殺す。

現代語訳

秦牛缺が山道を行って盗賊に遭った。車馬を奪われ、荷袋を解かれ、衣まで剝ぎ取られた。盗賊が振り返って見ると、恐れる色も憂える様子もなく、晴れやかに自足している。盗賊はそこで尋ねた。「おれはお前の財貨を奪い、刀で脅した。それなのに心が動かないのはなぜだ」。秦牛缺は言った。「車馬は身を載せるためのもの、衣服は体を覆うためのものだ。聖人は、養うための道具のために、養われる本体を損なったりしない」。盗賊たちは顔を見合わせて笑って言った。「欲のために生を損なわず、利のために身を煩わせない者は、世に言う聖人だ。こんな人物が王に会えば、必ずおれたちを討つ相手にするだろう」。そして引き返して殺した。

解説

秦牛缺の言葉は正しい。車馬も衣服も、身を養う道具であって、本体ではない。だからこそ奪われても動じなかった。その落ち着きが、盗賊に危険を知らせます。「此れを以て王者に見えば、必ず且に我を以て事と爲さん」——立派さは、立場の違う相手には脅威として見える。前の章の孔子が「仁にして且つ忍ぶ」と言ったのと、ちょうど裏側です。出しどころを誤れば、徳そのものが身を危うくする。

この章句が説くこと

秦牛欠山中を径きて盗に遇う之が車馬を奪い其の衣被を拖く懼るる色憂うる志無く驩然として以て自得すること有り車馬は身を載する所以なり衣服は形を揜う所以なり聖人は養う所を以て其の養いを害せず此れを以て王者に見えば必ず且に我を以て事と為さん還り反りて之を殺す

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