淮南子 / 人間訓
秦穆公使孟盟舉兵襲鄭,過周以東。鄭之賈人弦高、蹇他相與謀曰:「師行數千里,數絕諸侯之地,其勢必襲鄭。凡襲國者,以為無備也。今示以知其情,必不敢進。」乃矯鄭伯之命,以十二牛勞之。三率相與謀曰:「凡襲人者,以為弗知。今已知之矣,守備必固,進必無功。」乃還師而反。晉先軫舉兵擊之,大破之殽。鄭伯乃以存國之功賞弦高,弦高辭之曰:「誕而得賞,則鄭國之信廢矣。為國而無信,是俗敗也。賞一人而敗國俗,仁者弗為也。以不信得厚賞,義者弗為也。」遂以其屬徙東夷,終身不反。
新字:秦穆公使孟盟舉兵襲鄭,過周以東。鄭之賈人弦高、蹇他相与謀曰:「師行数千里,数絶諸侯之地,其勢必襲鄭。凡襲国者,以為無備也。今示以知其情,必不敢進。」乃矯鄭伯之命,以十二牛労之。三率相与謀曰:「凡襲人者,以為弗知。今已知之矣,守備必固,進必無功。」乃還師而反。晉先軫舉兵擊之,大破之殽。鄭伯乃以存国之功賞弦高,弦高辞之曰:「誕而得賞,則鄭国之信廃矣。為国而無信,是俗敗也。賞一人而敗国俗,仁者弗為也。以不信得厚賞,義者弗為也。」遂以其属徙東夷,終身不反。
書き下し
秦の穆公 孟盟をして兵を舉げて鄭を襲わしめ、周を過ぎて東す。鄭の賈人 弦高・蹇他 相い與に謀りて曰く「師 行くこと數千里、數々諸侯の地を絕つ。其の勢 必ず鄭を襲わん。凡そ國を襲う者は、以て備え無しと爲せばなり。今 示すに其の情を知るを以てせば、必ず敢えて進まざらん」と。乃ち鄭伯の命を矯めて、十二牛を以て之を勞う。三率 相い與に謀りて曰く「凡そ人を襲う者は、以て知らずと爲せばなり。今 已に之を知れり。守備 必ず固し。進むも必ず功無からん」と。乃ち師を還して反る。晉の先軫 兵を舉げて之を擊ち、大いに之を殽に破る。鄭伯 乃ち國を存するの功を以て弦高を賞す。弦高 之を辭して曰く「誕きて賞を得ば、則ち鄭國の信 廢れん。國を爲めて信無きは、是れ俗の敗るるなり。一人を賞して國俗を敗るは、仁者の爲さざるなり。不信を以て厚賞を得るは、義者の爲さざるなり」と。遂に其の屬を以て東夷に徙り、終身 反らず。
現代語訳
秦の穆公が孟盟に兵を挙げて鄭を襲わせ、周を過ぎて東へ向かわせた。鄭の商人の弦高と蹇他が相談して言った。「軍は数千里を行き、いくつも諸侯の地を横切っている。その勢いでは必ず鄭を襲うだろう。およそ国を襲うのは、備えがないと思うからだ。いま、こちらが事情を知っていると示せば、必ず進んでは来ない」。そこで鄭伯の命令と偽って、十二頭の牛で秦軍をねぎらった。三人の将は相談して言った。「およそ人を襲うのは、知られていないと思うからだ。すでに知られている。守りは必ず固い。進んでも功はあるまい」。そして軍を返して帰った。晋の先軫が兵を挙げてこれを撃ち、殽で大いに破った。鄭伯は国を救った功として弦高を賞した。弦高は辞退して言った。「偽って賞を得れば、鄭国の信は廃れます。国を治めて信がないのは、風俗が壊れることです。一人を賞して国の風俗を壊すのは、仁者のしないことです。偽りで厚い賞を得るのは、義者のしないことです」。そして一族を連れて東夷へ移り、生涯帰らなかった。
解説
この章句が説くこと
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論語・学而篇有子曰く、「信義に近ければ、言復む可きなり。恭礼に近ければ、恥辱に遠ざかるなり。因りて其の親を失わざれば、亦宗とす可きなり。」
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説苑・君道成王、唐叔虞と燕居し、梧桐の葉を剪りて以て珪と為し、唐叔虞に授けて曰く、「余此を以て汝に封ぜん」と。唐叔虞喜びて、以て周公に告ぐ。周公以て請いて曰く、「天子虞に封ずるか」と。成王曰く、「余一に虞と戯るるなり」と。周公対えて曰く、「臣之を聞く、天子に戯言無し、言えば則ち史之を書し、工之を誦し、士之を称すと」と。是に於いて遂に唐叔虞を晋に封ず。周公旦善く説くと謂うべし。一たび称して成王言を重んずるを益し、弟を愛するの義を明らかにし、王室を輔くるの固き有り。
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呂氏春秋・貴信①凡そ人主は必ず信。信にして又信ならば、誰人か親しまざらん。故に周書に曰く、「允なるかな允なるかな。」以て信に非ざれば、則ち百事滿たざるを言うなり。故に信の功為るや大なり。信立てば則ち虚言以て賞す可し。虚言以て賞す可くんば、則ち六合の內皆己が府為り。信の及ぶ所、盡く之を制す。之を制して用いざれば、人の有なり。之を制して之を用うれば、己の有なり。己、之を有すれば、則ち天地の物畢く用を為す。人主にして此の論を見る有る者は、其の王たること久しからず。人臣にして此の論を知る有る者は、以て王者の佐為る可し。
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呂氏春秋・貴信②天行信ならざれば、歲を成すこと能わず。地行信ならざれば、草木大ならず。春の德は風、風、信ならざれば、其の華盛ならず。華盛ならざれば、則ち果實生ぜず。夏の德は暑なり。暑、信ならざれば、其の土肥えず。土肥えざれば、則ち長遂精ならず。秋の德は雨なり。雨、信ならざれば、其の穀堅からず。穀堅かざれば、則ち五種成らず。冬の德は寒なり。寒、信ならざれば、其の地剛ならず。地剛ならざれば、則ち凍閉開かず。天地の大、四時の化すら、猶ほ信ならざるを以て物を成すこと能わず。又況んや人事をや。君臣、信ならずんば、則ち百姓誹謗し、社稷寧かならず。官を處くこと信ならずんば、則ち少、長を畏れず、貴賤相輕んず。賞罰信ならずんば、則ち民易しく法を犯して、使令す可からず。交友、信ならずんば、則ち離散鬱怨して、相親しむこと能わず。百工、信ならずんば、則ち器械苦偽して、丹漆染色貞ならず。夫れ與に始めを為す可く、與に終りを為す可く、與に尊通なる可く、與に卑窮なる可き者は、其れ唯だ信か。信にして又信、身に重襲すれば、乃ち轉に通ず。此を以て人を治むれば、則ち膏雨甘露降り、寒暑四時當たらん。
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論語・学而篇曾子曰く、「吾日に三たび吾が身を省みる。人の為に謀りて忠ならざるか、朋友と交わりて信ならざるか、習わざるを伝えしか。」