淮南子 / 人間訓
是故使人高賢稱譽己者,心之力也;使人卑下誹謗己者,心之罪也。夫言出於口者不可止於人,行發於邇者不可禁於遠。事者,難成而易敗也;名者,難立而易廢也。千里之隄,以螻螘之穴漏;百尋之屋,以突隙之煙焚。
新字:是故使人高賢称誉己者,心之力也;使人卑下誹謗己者,心之罪也。夫言出於口者不可止於人,行発於邇者不可禁於遠。事者,難成而易敗也;名者,難立而易廃也。千里之隄,以螻螘之穴漏;百尋之屋,以突隙之煙焚。
書き下し
是の故に人をして高賢にして己を稱譽せしむるは、心の力なり。人をして卑下にして己を誹謗せしむるは、心の罪なり。夫れ言の口より出づる者は人に止むる可からず。行いの邇きに發する者は遠きに禁ずる可からず。事なる者は、成り難くして敗れ易し。名なる者は、立ち難くして廢れ易し。千里の隄も、螻螘の穴を以て漏る。百尋の屋も、突隙の煙を以て焚く。
現代語訳
だから、人が敬意をもって自分を称えてくれるのは、心のはたらきによる。人が見下して自分をそしるのは、心の落ち度による。口から出た言葉は、人の口に上るのを止められない。身近なところで起こした行いは、遠くで語られるのを禁じられない。事というものは、成し遂げるのは難しく、壊れるのはたやすい。名というものは、立てるのは難しく、失われるのはたやすい。千里の堤も、螻や蟻の穴から漏れる。百尋の屋敷も、煙出しの隙間から漏れた煙で焼ける。
解説
「千里の隄も、螻螘の穴を以て漏る」。長大な堤を壊すのは大水ではなく、蟻の穴です。手前の「事なる者は、成り難くして敗れ易し。名なる者は、立ち難くして廢れ易し」がその前提にあります。積み上げと崩れは、かかる手間が釣り合っていない。だから「言の口より出づる者は人に止むる可からず」——出てしまった言葉は追いかけて止められない、という一行が効いてきます。
この章句が説くこと
人をして高賢にして己を称誉せしむるは心の力なり人をして卑下にして己を誹謗せしむるは心の罪なり言の口より出づる者は人に止むる可からず行いの邇きに発する者は遠きに禁ずる可からず事なる者は成り難くして敗れ易し名なる者は立ち難くして廃れ易し千里の隄も螻螘の穴を以て漏る百尋の屋も突隙の煙を以て焚く小事
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