淮南子 / 說林訓
狡兔得而獵犬烹,高鳥盡而強弩藏。虻與驥,致千里而不飛,無糗糧之資而不飢。失火而遇雨,失火則不幸,遇雨則幸也,故禍中有福也。鬻棺者欲民之疾病也,畜粟者欲歲之荒饑也。水靜則平,平則清,清則見物之形,弗能匿也,故可以為正。川竭而谷虛,丘夷而淵塞,脣竭而齒寒。河水之深,其壤在山。鈞之縞也,一端以為冠,一端以為𥿉,冠則戴致之,𥿉則蹍履之。知己者不可誘以物,明於死生者不可卻以危,故善游者不可懼以涉。
新字:狡兔得而猟犬烹,高鳥尽而強弩蔵。虻与驥,致千里而不飛,無糗糧之資而不飢。失火而遇雨,失火則不幸,遇雨則幸也,故禍中有福也。鬻棺者欲民之疾病也,畜粟者欲歳之荒饑也。水静則平,平則清,清則見物之形,弗能匿也,故可以為正。川竭而谷虚,丘夷而淵塞,脣竭而歯寒。河水之深,其壤在山。鈞之縞也,一端以為冠,一端以為𥿉,冠則戴致之,𥿉則蹍履之。知己者不可誘以物,明於死生者不可却以危,故善游者不可懼以渉。
書き下し
狡兔 得られて獵犬 烹られ、高鳥 盡きて強弩 藏めらる。虻と驥と、千里を致すも飛ばず、糗糧の資無くして飢えず。火を失いて雨に遇う。火を失うは則ち不幸、雨に遇うは則ち幸なり。故に禍の中に福有り。棺を鬻ぐ者は民の疾病を欲し、粟を畜うる者は歲の荒饑を欲す。水 靜かなれば則ち平らかに、平らかなれば則ち清く、清ければ則ち物の形を見て、匿す能わず。故に以て正と爲す可し。川 竭きて谷 虛しく、丘 夷らかにして淵 塞がり、脣 竭きて齒 寒し。河水の深きは、其の壤 山に在り。之を縞に鈞しくするに、一端は以て冠と爲し、一端は以て𥿉と爲す。冠は則ち戴きて之を致し、𥿉は則ち蹍みて之を履む。己を知る者は物を以て誘う可からず、死生に明らかなる者は危を以て卻く可からず。故に善く游ぐ者は涉を以て懼れしむ可からず。
現代語訳
すばしこい兎が捕られれば猟犬は煮られ、高く飛ぶ鳥が尽きれば強弓はしまわれる。虻は駿馬にとりついて千里を行くが自分では飛ばず、食糧の蓄えなしに飢えることもない。火事に遭って雨が降る。火事は不幸だが、雨は幸いである。だから禍の中に福がある。棺を売る者は民が病むことを願い、粟を蓄える者は年の凶作を願う。水は静かなら平らかになり、平らかなら澄み、澄めば物の形が映って隠せない。だから基準にできる。川が涸れれば谷は空になり、丘が崩れれば淵は埋まり、唇が失われれば歯は寒い。黄河の水が深いのは、その土が山にあるからである。同じ白絹でも、一方の端は冠になり、もう一方の端は靴下になる。冠は頭にいただき、靴下は踏んで履く。自分を知る者は物では誘えず、生死に通じた者は危険では退けられない。だから泳ぎのうまい者を、川渡りで怖がらせることはできない。
解説
この章句が説くこと
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『学問のすゝめ』四編・学者の職分を論ず・利あらざるものは必ず害あり以上論ずるところを概すれば、今の世の学者、この国の独立を助けなさんとするに当たりて、政府の範囲に入り官にありて事をなすと、その範囲を脱して私立するとの利害得失を述べ、本論は私立に左袒したるものなり。すべて世の事物をくわしく論ずれば、利あらざるものは必ず害あり、得あらざるものは必ず失あり、利害得失相半ばするものはあるべからず。わが輩もとよりためにするところありて私立を主張するにあらず、ただ平生の所見を証してこれを論じたるのみ。世人もし確証を掲げてこの論説を排し、明らかに私立の不利を述ぶる者あらば、余輩は悦んでこれに従い、天下の害をなすことなかるべし。
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