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淮南子 / 氾論訓

伯余之初作衣也,緂麻索縷,手經指挂,其成猶網羅。後世為之機杼勝複以便其用,而民得以揜形御寒。古者剡耜而耕,摩蜃而耨,木鉤而樵,抱甀而汲,民勞而利薄。後世為之耒耜耰鉏,斧柯而樵,桔皋而汲,民逸而利多焉。古者大川名谷,衝絕道路,不通往來也,乃為窬木方版,以為舟航,故地勢有無,得相委輸。乃為靻蹻而超千里,肩荷負儋之勤也,而作為之楺輪建輿,駕馬服牛,民以致遠而不勞。為鷙禽猛獸之害傷人而無以禁御也,而作為之鑄金鍛鐵,以為兵刃,猛獸不能為害。

新字:伯余之初作衣也,緂麻索縷,手経指挂,其成猶網羅。後世為之機杼勝複以便其用,而民得以揜形御寒。古者剡耜而耕,摩蜃而耨,木鉤而樵,抱甀而汲,民労而利薄。後世為之耒耜耰鉏,斧柯而樵,桔皋而汲,民逸而利多焉。古者大川名谷,衝絶道路,不通往来也,乃為窬木方版,以為舟航,故地勢有無,得相委輸。乃為靻蹻而超千里,肩荷負儋之勤也,而作為之楺輪建輿,駕馬服牛,民以致遠而不労。為鷙禽猛獣之害傷人而無以禁御也,而作為之鋳金鍛鉄,以為兵刃,猛獣不能為害。

書き下し

伯余の初めて衣を作るや、麻を緂ぎ縷を索い、手に經し指に挂く。其の成るや猶お網羅のごとし。後世 之が爲に機杼勝複を爲りて以て其の用を便にす。而して民 以て形を揜い寒を御ぐを得たり。古者 耜を剡ぎて耕し、蜃を摩して耨り、木鉤して樵り、甀を抱きて汲む。民 勞して利 薄し。後世 之が爲に耒耜耰鉏、斧柯して樵り、桔皋して汲む。民 逸して利 多し。古者 大川名谷、道路を衝絕して、往來を通ぜざるなり。乃ち木を窬ち版を方にして、以て舟航と爲す。故に地勢の有無、相い委輸するを得たり。乃ち靻蹻を爲りて千里を超え、肩に荷い負儋するの勤めなり。而して作りて之が爲に輪を楺め輿を建て、馬に駕し牛を服す。民 以て遠きを致して勞せず。鷙禽猛獸の人を害傷して以て禁御する無きが爲に、作りて之が爲に金を鑄し鐵を鍛えて、以て兵刃と爲す。猛獸 害を爲す能わず。

現代語訳

伯余がはじめて衣を作ったときは、麻をつなぎ糸をより、手で経糸を張り指に掛けた。できあがったものは網のようだった。後の世が機と杼を作って使いやすくした。それで民は体を覆い寒さを防げるようになった。いにしえには鋤を削って耕し、貝殻を磨いて草を取り、木の鉤で薪を採り、甕を抱えて水を汲んだ。民は苦労して得るものは少なかった。後の世が鋤や鍬や馬鍬を作り、斧の柄で薪を採り、はねつるべで汲むようにした。民は楽になり得るものが多くなった。いにしえには大きな川や谷が道を断ち切り、行き来ができなかった。そこで木をくり抜き板を組んで舟とした。それで土地ごとの有る無しを、互いに融通できるようになった。革の草鞋を作って千里を越えたが、肩に担ぎ背負う苦労があった。そこで輪を曲げて車を組み、馬に引かせ牛を使った。民は遠くへ行っても疲れなくなった。猛禽や猛獣が人を害するのに防ぐ手立てがなかったので、金を鋳て鉄を鍛え、刃物とした。猛獣は害をなせなくなった。

解説

衣・農具・舟・車・武器と、道具の改良が順に並びます。どれも「古者……後世……」の形で書かれていて、後の世が改良したことをはっきり善しとしています。最初の衣が網のようだった、という一行が正直で好ましい。復古を説く書ではなく、必要から生まれた工夫は認める。この後に続く「先王の法度に移り易わる者有り」という主張の、実例による下ごしらえになっています。

この章句が説くこと

伯余の初めて衣を作るや其の成るや猶お網羅のごとし後世之が為に機杼勝複を為りて以て其の用を便にす古者耜を剡ぎて耕し民労して利薄し乃ち木を窬ち版を方にして以て舟航と為す民以て遠きを致して労せず道具

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