淮南子 / 齊俗訓
古者,民童蒙不知東西,貌不羨乎情,而言不溢乎行。其衣致煖而無文,其兵戈銖而無刃,其歌樂而無轉,其哭哀而無聲。鑿井而飲,耕田而食。無所施其美,亦不求得。親戚不相毀譽,朋友不相怨德。及至禮義之生,貨財之貴,而詐偽萌興,非譽相紛,怨德並行,於是乃有曾參、孝己之美,而生盜跖、莊蹻之邪。
新字:古者,民童蒙不知東西,貌不羨乎情,而言不溢乎行。其衣致煖而無文,其兵戈銖而無刃,其歌楽而無転,其哭哀而無声。鑿井而飲,耕田而食。無所施其美,亦不求得。親戚不相毀誉,朋友不相怨徳。及至礼義之生,貨財之貴,而詐偽萌興,非誉相紛,怨徳並行,於是乃有曽参、孝己之美,而生盗跖、荘蹻之邪。
書き下し
古者、民は童蒙にして東西を知らず、貌は情に羨れず、而して言は行に溢れず。其の衣は煖を致して文無く、其の兵は戈 銖くして刃無く、其の歌は樂しみて轉無く、其の哭は哀しみて聲無し。井を鑿ちて飲み、田を耕して食らう。其の美を施す所無く、亦た得るを求めず。親戚 相い毀譽せず、朋友 相い怨德せず。禮義の生じ、貨財の貴ばるるに及びて、詐偽 萌興し、非譽 相い紛れ、怨德 並び行わる。是に於いて乃ち曾參・孝己の美有りて、盜跖・莊蹻の邪を生ず。
現代語訳
いにしえの民は幼子のように東も西も知らず、姿かたちが情を超えて飾られず、言葉が行いを超えてあふれることもなかった。その衣は暖かければ模様がなく、その武器は矛が鈍くて刃がなく、その歌は楽しくても節回しがなく、その哭は哀しくても声を張らなかった。井戸を掘って飲み、田を耕して食べた。美しさを見せる場もなく、また得ようともしなかった。親族は互いにけなしも褒めもせず、友は互いに怨みも恩に着せもしなかった。礼義が生まれ、財貨が貴ばれるようになると、偽りが芽を出し、そしりと誉れが入り乱れ、怨みと恩とが並んで行われるようになった。そこではじめて曾参や孝己のような美しさが生まれ、同時に盗跖や荘蹻のような邪も生まれた。
解説
素朴だった頃の暮らしを、無いものの列挙で描きます。模様のない衣、刃のない武器、節回しのない歌、声を張らない哭。「貌は情に羨れず、言は行に溢れず」。見せ方が中身を超えない状態です。結びが強烈でした。「曾參・孝己の美有りて、盜跖・莊蹻の邪を生ず」。並外れた孝行者が現れた時代に、並外れた盗賊も現れる。称賛される極と、忌まれる極は、同じところから同時に出てくる、と。
この章句が説くこと
古者民は童蒙にして東西を知らず貌は情に羨れず言は行に溢れず其の歌は楽しみて転無く其の哭は哀しみて声無し親戚相い毀誉せず朋友相い怨徳せず曽参・孝己の美有りて盗跖・荘蹻の邪を生ず素朴
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