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淮南子 / 道應訓

孔子觀桓公之廟,有器焉,謂之宥巵。孔子曰:善哉!予得見此器。」顧曰:「弟子取水。」水至,灌之。其中則正,其盈則覆。孔子造然革容曰:「善哉,持盈者乎!」子貢在側曰:「請問持盈。」曰:「益而損之。」曰:』何謂益而損之?」曰:「夫物盛而衰,樂極則悲,日中而移,月盈而虧。是故聰明睿智,守之以愚;多聞博辯,守之以陋;武力毅勇,守之以畏;富貴廣大,守之以儉;德施天下,守之以讓。此五者,先王所以守天下而弗失也;反此五者,未嘗不危也。」故老子曰:「服此道者不欲盈。夫唯不盈,故能弊而不新成。」

新字:孔子観桓公之廟,有器焉,謂之宥巵。孔子曰:善哉!予得見此器。」顧曰:「弟子取水。」水至,灌之。其中則正,其盈則覆。孔子造然革容曰:「善哉,持盈者乎!」子貢在側曰:「請問持盈。」曰:「益而損之。」曰:』何謂益而損之?」曰:「夫物盛而衰,楽極則悲,日中而移,月盈而虧。是故聰明睿智,守之以愚;多聞博弁,守之以陋;武力毅勇,守之以畏;富貴広大,守之以倹;徳施天下,守之以譲。此五者,先王所以守天下而弗失也;反此五者,未嘗不危也。」故老子曰:「服此道者不欲盈。夫唯不盈,故能弊而不新成。」

書き下し

孔子 桓公の廟を觀るに、器有り。之を宥巵と謂う。孔子曰く、「善いかな。予 此の器を見るを得たり」と。顧みて曰く、「弟子 水を取れ」と。水 至りて、之に灌ぐ。其の中なれば則ち正しく、其の盈つれば則ち覆る。孔子 造然として容を革めて曰く、「善いかな、盈を持する者よ」と。子貢 側に在りて曰く、「請う盈を持するを問わん」と。曰く、「益して之を損す」と。曰く、「何をか益して之を損すと謂う」と。曰く、「夫れ物 盛んにして衰え、樂 極まれば則ち悲しみ、日 中して移り、月 盈ちて虧く。是の故に聰明睿智なるは、之を守るに愚を以てす。多聞博辯なるは、之を守るに陋を以てす。武力毅勇なるは、之を守るに畏を以てす。富貴廣大なるは、之を守るに儉を以てす。德 天下に施すは、之を守るに讓を以てす。此の五つの者は、先王の天下を守りて失わざる所以なり。此の五つの者に反すれば、未だ嘗て危うからずんばあらざるなり」と。故に老子曰く、「此の道を服する者は盈つるを欲せず。夫れ唯だ盈たず、故に能く弊れて新たに成らず」と。

現代語訳

孔子が桓公の廟を見学すると、器があった。これを宥卮という。孔子は言った、「よいものだ。私はこの器を見ることができた」。振り返って言った、「弟子よ、水を取ってこい」。水が来ると、注ぎ入れた。半ばまでなら真っすぐ立ち、満たせばひっくり返った。孔子ははっとして居ずまいを正して言った、「よいものだ、満ちたものを保つとは」。子貢がそばにいて言った、「満ちたものを保つとはどういうことか、お尋ねします」。孔子は言った、「増やして、それを減らすことだ」。「増やして減らすとは、どういうことですか」。孔子は言った、「物は盛んになれば衰え、楽しみは極まれば悲しみになり、日は中天に至れば傾き、月は満ちれば欠ける。だから聡明で知恵のある者は、それを愚かさで守る。博識で弁の立つ者は、それを浅さで守る。武力があり勇ましい者は、それを畏れで守る。富み貴く広大な者は、それを倹約で守る。徳を天下に施す者は、それを譲りで守る。この五つは、いにしえの王が天下を守って失わなかった理由である。この五つに背けば、危うくならなかったためしがない」。だから老子は言った、「この道を身につけた者は満ちることを望まない。ただ満ちないから、古びても新しく作り直す必要がない」。

解説

水を注ぐと、半分なら立っていて、満たすとひっくり返る器。それを見た孔子が「満ちたものを保つ」方法として挙げるのが五つの守りです。聡明さは愚かさで、博識は浅さで、武勇は畏れで、富貴は倹約で、徳は譲りで守る。どれも、持っているものと正反対のものを添えている。増えたぶんだけ減らす、という「益して之を損す」の実際の形が、この五つでした。

この章句が説くこと

孔子桓公の廟を観るに器有り之を宥巵と謂う其の中なれば則ち正しく其の盈つれば則ち覆る盈を持するとは益して之を損すなり聰明睿智なるは之を守るに愚を以てす武力毅勇なるは之を守るに畏を以てす富貴広大なるは之を守るに倹を以てし徳天下に施すは之を守るに譲を以てす

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