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淮南子 / 齊俗訓

衣食饒溢,姦邪不生,安樂無事而天下均平,故孔丘、曾參無所施其善,孟賁、成荊無所行其威。衰世之俗,以其知巧詐偽,飾眾無用,貴遠方之貨,珍難得之財,不積於養生之具。澆天下之淳,析天下之樸,牿服馬牛以為牢。滑亂萬民,以清為濁,性命飛揚,皆亂以營。貞信漫瀾,人失其情性。於是,乃有翡翠犀象、黼黻文章以亂其目,芻豢黍梁、荊吳芬馨以嚂其口,鐘鼓管簫、絲竹金石以淫其耳,趨舍行義、禮節謗議以營其心。於是,百姓糜沸豪亂,暮行逐利,煩挐澆淺,法與義相非,行與利相反。雖十管仲,弗能治也。

新字:衣食饒溢,姦邪不生,安楽無事而天下均平,故孔丘、曽参無所施其善,孟賁、成荊無所行其威。衰世之俗,以其知巧詐偽,飾眾無用,貴遠方之貨,珍難得之財,不積於養生之具。澆天下之淳,析天下之樸,牿服馬牛以為牢。滑乱万民,以清為濁,性命飛揚,皆乱以営。貞信漫瀾,人失其情性。於是,乃有翡翠犀象、黼黻文章以乱其目,芻豢黍梁、荊吳芬馨以嚂其口,鐘鼓管簫、糸竹金石以淫其耳,趨舎行義、礼節謗議以営其心。於是,百姓糜沸豪乱,暮行逐利,煩挐澆浅,法与義相非,行与利相反。雖十管仲,弗能治也。

書き下し

衣食 饒溢すれば、姦邪 生ぜず、安樂にして事無く、天下 均平なり。故に孔丘・曾參も其の善を施す所無く、孟賁・成荊も其の威を行う所無し。衰世の俗は、其の知巧詐偽を以て、眾の無用を飾り、遠方の貨を貴び、得難きの財を珍とし、養生の具に積まず。天下の淳を澆ぎ、天下の樸を析き、馬牛を牿服して以て牢と為す。萬民を滑亂し、清を以て濁と為し、性命 飛揚して、皆な亂れて以て營む。貞信 漫瀾として、人 其の情性を失う。是に於いて、乃ち翡翠犀象、黼黻文章有りて以て其の目を亂し、芻豢黍梁、荊吳芬馨もて以て其の口を嚂し、鐘鼓管簫、絲竹金石もて以て其の耳を淫し、趨舍行義、禮節謗議もて以て其の心を營む。是に於いて、百姓 糜沸豪亂し、暮に行きて利を逐い、煩挐澆淺にして、法と義と相い非とし、行と利と相い反す。十の管仲と雖も、治むる能わざるなり。

現代語訳

衣食が満ち足りていれば、悪は生じず、安らかで事もなく、天下は平らかである。だから孔子や曾参にも善を施す場がなく、孟賁や成荊にも威を振るう場がない。衰えた世の習わしは、知恵と巧みさと偽りによって、多くの無用なものを飾り、遠方の品を貴び、得がたい財を珍重し、生を養う道具のほうには積まない。天下の淳さに水を差し、天下の素朴さを裂き、馬や牛を繋いで囲いに入れる。万民をかき乱し、清いものを濁ったものとし、性と命は飛び散って、みな乱れたまま営む。まことは崩れ、人はその情と性を失う。そこで翡翠や犀や象、刺繍や模様が目を乱し、肉やきびや荊や呉の香りが口をそそのかし、鐘や太鼓や笛、弦や金石が耳を溺れさせ、取捨や義の掲げ方、礼節やそしり合いが心を絡め取る。そこで民は煮え立ち乱れ、暮れても走り回って利を追い、煩わしく浅くなり、法と義が食い違い、行いと利が逆になる。管仲が十人いても、治められない。

解説

冒頭の一行が痛快です。「衣食 饒溢すれば、姦邪 生ぜず……孔丘・曾參も其の善を施す所無し」。満ち足りていれば、聖人にも出番がない。徳の出番が多い世は、それだけ足りていない世だ、という見方になります。衰世の描写では、四つの感覚を順に絡め取っていく。目を乱し、口をそそのかし、耳を溺れさせ、そして最後に「趨舍行義、禮節謗議」が心を絡め取る。義の議論までが誘惑として数えられています。

この章句が説くこと

衣食饒溢すれば姦邪生ぜず安楽にして事無く天下均平なり孔丘・曽参も其の善を施す所無く孟賁・成荊も其の威を行う所無し衰世の俗は眾の無用を飾り遠方の貨を貴ぶ翡翠犀象もて以て其の目を乱し鐘鼓管簫もて以て其の耳を淫す法と義と相い非とし行と利と相い反す充足

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