淮南子 / 齊俗訓
夫先知遠見,達視千里,人才之隆也,而治世不以責於民。博聞強志,口辯辭給,人智之美也,而明主不以求於下。敖世輕物,不汙於俗,士之伉行也,而治世不以為民化。神機陰閉,剞劂無跡,人巧之妙也,而治世不以為民業。故萇弘、師曠,先知禍福,言無遺策,而不可與眾同職也;公孫龍折辯抗辭,別同異,離堅白,不可與眾同道也;北人無擇非舜而自投清泠之淵,不可以為世儀;魯般、墨子以木為鳶而飛之,三日不集,而不可使為工也。
新字:夫先知遠見,達視千里,人才之隆也,而治世不以責於民。博聞強志,口弁辞給,人智之美也,而明主不以求於下。敖世軽物,不汙於俗,士之伉行也,而治世不以為民化。神機陰閉,剞劂無跡,人巧之妙也,而治世不以為民業。故萇弘、師曠,先知禍福,言無遺策,而不可与眾同職也;公孫竜折弁抗辞,別同異,離堅白,不可与眾同道也;北人無択非舜而自投清泠之淵,不可以為世儀;魯般、墨子以木為鳶而飛之,三日不集,而不可使為工也。
書き下し
夫れ先知遠見、達視千里なるは、人才の隆なり。而れども治世は以て民に責めず。博聞強志、口辯辭給なるは、人智の美なり。而れども明主は以て下に求めず。世に敖り物を輕んじ、俗に汙れざるは、士の伉行なり。而れども治世は以て民の化と為さず。神機陰閉、剞劂 跡無きは、人巧の妙なり。而れども治世は以て民の業と為さず。故に萇弘・師曠は、先に禍福を知り、言に遺策無きも、而も與に眾と職を同じくす可からざるなり。公孫龍は辯を折り辭を抗げ、同異を別ち、堅白を離すも、與に眾と道を同じくす可からざるなり。北人無擇は舜を非として自ら清泠の淵に投ず。以て世の儀と為す可からず。魯般・墨子は木を以て鳶と為して之を飛ばし、三日 集まらざるも、而も工と為さしむ可からざるなり。
現代語訳
先を知り遠くを見通し、千里の先まで見えるのは、人の才の高みである。それでも治まった世は、それを民に求めない。博く聞いてよく覚え、弁が立ち言葉が滑らかなのは、人の知の美点である。それでも明君は、それを下に求めない。世を見下し物を軽んじ、俗に汚れないのは、士の高い行いである。それでも治まった世は、それを民の手本にしない。神妙なからくりを仕込み、鑿の跡も残さないのは、人の技の妙である。それでも治まった世は、それを民の生業にしない。萇弘や師曠は先に禍福を知り、言葉に外れがなかったが、多くの人と同じ職には就けない。公孫龍は弁を打ち破り言葉を掲げ、同と異を分け、堅と白を離したが、多くの人と同じ道は行けない。北人無択は舜を非として自ら清泠の淵に身を投げた。世の手本にはできない。魯般と墨子は木で鳶を作って飛ばし、三日降りてこなかったが、職人の基準にはできない。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
『韓非子』難一第三十六今赫は僅かに驕侮せざるのみにして、襄子之を賞するは、是れ賞を失うなり。明主は賞を無功に加えず、罰を無罪に加えず。
-
論語・先進篇子貢問う、「師と商とは孰れか賢れる。」子曰く、「師や過ぎたり、商や及ばず。」曰く、「然らば則ち師愈れるか。」子曰く、「過ぎたるは猶お及ばざるがごとし。」
-
孫子・始計篇一に曰く道、二に曰く天、三に曰く地、四に曰く将、五に曰く法。
-
論語・郷党篇食は精を厭わず、膾は細きを厭わず。食の饐して餲せると、魚の餒れて肉の敗れたるとは、食らわず。色悪しきは食らわず、臭悪しきは食らわず。飪を失えるは食らわず、時ならざるは食らわず。割正しからざるは食らわず、其の醬を得ざれば食らわず。肉は多しと雖も、食気に勝たしめず。唯だ酒は量無きも、乱に及ばず。沽える酒と市える脯とは食らわず。薑を撤てて食らい、多くは食らわず。公に祭れば、肉を宿さず。祭肉は三日を出ださず。三日を出ずれば、之を食らわず。食らうに語らず、寝ぬるに言わず。疏食菜羹瓜と雖も祭れば、必ず斉如たり。
-
論語・憲問篇子路、成人を問う。子曰く、「臧武仲の知、公綽の不欲、卞荘子の勇、冉求の芸の若き、之を文るに礼楽を以てせば、亦た以て成人と為す可し。」曰く、「今の成人なる者は、何ぞ必ずしも然らん。利を見ては義を思い、危うきを見ては命を授け、久要平生の言を忘れざれば、亦た以て成人と為す可し。」
-
『韓非子』問辯第四十一或るひと問いて曰く、「辯は安くにか生ずる。」対えて曰く、「上の不明に生ずるなり。」