淮南子 / 主術訓
故有野心者,不可借便勢;有愚質者,不可與利器。魚得水而游焉則樂,唐決水涸,則為螻蟻所食。有掌修其堤防,補其缺漏,則魚得而利之,國有以存,人有以生。國之所以存者,仁義是也;人之所以生者,行善是也。國無義,雖大必亡;人無善志,雖勇必傷。治國上使不得與焉。孝于父母,弟于兄嫂,信于朋友,不得上令而可得為也。釋己之所得為,而責於其所不得制,悖矣。士處卑隱,欲上達,必先反諸己。上達有道,名譽不起,而不能上達矣;取譽有道,不信于友,不能得譽;信于友有道,事親不說,不信于友;說親有道,修身不誠,不能事親矣;誠身有道,心不專一,不能專誠。道在易而求之難,驗在近而求之遠,故弗得也。
新字:故有野心者,不可借便勢;有愚質者,不可与利器。魚得水而游焉則楽,唐決水涸,則為螻蟻所食。有掌修其堤防,補其欠漏,則魚得而利之,国有以存,人有以生。国之所以存者,仁義是也;人之所以生者,行善是也。国無義,雖大必亡;人無善志,雖勇必傷。治国上使不得与焉。孝于父母,弟于兄嫂,信于朋友,不得上令而可得為也。釈己之所得為,而責於其所不得制,悖矣。士処卑隠,欲上達,必先反諸己。上達有道,名誉不起,而不能上達矣;取誉有道,不信于友,不能得誉;信于友有道,事親不説,不信于友;説親有道,修身不誠,不能事親矣;誠身有道,心不専一,不能専誠。道在易而求之難,験在近而求之遠,故弗得也。
書き下し
故に野心有る者には、便勢を借す可からず。愚質有る者には、利器を與う可からず。魚 水を得て游げば則ち樂しむも、唐 決れ水 涸くれば、則ち螻蟻の食らう所と為る。掌りて其の堤防を修め、其の缺漏を補う有れば、則ち魚 得て之を利し、國 以て存する有り、人 以て生くる有り。國の存する所以の者は、仁義 是れなり。人の生くる所以の者は、善を行う 是れなり。國に義無ければ、大なりと雖も必ず亡ぶ。人に善志無ければ、勇なりと雖も必ず傷つく。國を治むるに上 與るを得ざらしむ。父母に孝、兄嫂に弟、朋友に信なるは、上の令を得ずして為すを得可きなり。己の為すを得る所を釋てて、其の制するを得ざる所に責むるは、悖れり。士 卑隱に處り、上達せんと欲せば、必ず先ず諸を己に反す。上達に道有り、名譽 起こらざれば、上達する能わず。譽を取るに道有り、友に信ぜられざれば、譽を得る能わず。友に信ぜらるるに道有り、親に事えて說ばれざれば、友に信ぜられず。親を說ばすに道有り、身を修めて誠ならざれば、親に事うる能わず。身を誠にするに道有り、心 專一ならざれば、專誠なる能わず。道は易きに在るに之を難きに求め、驗は近きに在るに之を遠きに求む。故に得ざるなり。
現代語訳
だから野心のある者に、都合のよい勢いを貸してはならない。愚かな性質の者に、鋭い道具を与えてはならない。魚は水を得て泳げば楽しむが、堤が切れて水が涸れれば、螻や蟻の餌になる。堤防を修め、欠けや漏れを補う者があれば、魚はそれによって利を得、国は保たれ、人は生きられる。国が保たれる理由は仁義であり、人が生きられる理由は善を行うことである。国に義がなければ、大きくても必ず亡ぶ。人に善への志がなければ、勇があっても必ず傷つく。国を治めることに、上が関わらないようにさせる。父母に孝、兄や嫂に従い、友に信であることは、上の命令がなくてもできることである。自分にできることを捨てて、自分に制しようのないものを責めるのは、道理に反する。士が低い身分にいて上に達しようとするなら、必ずまず自分に返る。上に達するには道がある。名誉が起こらなければ、上に達せない。誉れを得るには道がある。友に信じられなければ、誉れは得られない。友に信じられるには道がある。親に仕えて喜ばれなければ、友に信じられない。親を喜ばせるには道がある。身を修めて誠でなければ、親に仕えられない。身を誠にするには道がある。心が専一でなければ、誠を尽くせない。道は易しいところにあるのに難しいところに求め、証は近いところにあるのに遠いところに求める。だから得られないのである。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
『後世への最大遺物』第二回・己の信ずることを実行する者己の信ずることを実行するものが真面目なる信者です。ただただ壮言大語することは誰にもできます。いくら神学を研究しても、いくら哲学書を読みても、われわれの信じた主義を真面目に実行するところの精神がありませぬあいだは、神はわれわれにとって異邦人であります。それゆえに、われわれは神がわれわれに知らしたことをそのまま実行いたさなければなりません。こういたさねばならぬと思うたことは、われわれはことごとく実行しなければならない。もしわれわれが、正義はついに勝つものにして不義はついに負けるものであるということを世間に発表するものであるならば、そのとおりにわれわれは実行しなければならない。これを称して真面目なる信徒と申すのです。
-
『正法眼蔵随聞記』巻三作すことの難きにはあらず、能くすることの難きなり、出離得道の行は人ごとに心にかけたるには似たれとも、能くする人まれなればなり、生死事大なり、無常迅速なり、心を緩くすることなかれ、世を捨ては実とに世を捨つべきなり、仮名はいかにてもありなんとおぼゆるなり、
-
『囲炉夜話』第三十則・身體力行凡そ事は徒らに人に委ぬる勿れ、必ず身に體し力めて行ひて、方に能く濟す有り。 凡そ事は己に執るべからず、必ず廣く思ひ益を集めて、乃ち後艱罔し。
-
『呻吟語』内篇・應務・空言何ぞ益あらん為さんと欲せば便ち為せ、空言何ぞ益あらん。為さずんば便ち為さざれ、空言何ぞ益あらん。
-
『後世への最大遺物』第二回・人に頼らず天と己にたよるその考えを持ったばかりでなく、その考えを実行した。その話は長うございますけれども、ついには何万石という村々を改良して、自分の身をことごとく人のために使った。旧幕の末路にあたって、経済上、農業改良上について非常の功労のあった人であります。それでわれわれもそういう人の生涯、二宮金次郎先生のような人の生涯を見ますときに、「もしあの人にもああいうことができたならば、私にもできないことはない」という考えを起します。普通の考えではありますけれども、非常に価値のある考えであります。それで人に頼らずとも、われわれが神にたより己にたよって宇宙の法則に従えば、この世界はわれわれの望むとおりになり、この世界にわが考えを行うことができるという感覚が起ってくる。
-
論語・子罕篇子曰く、之に語げて惰らざる者は、其れ回なるか。

人生を、一行の式にしてみた。
志×積×時×憤÷(1+執)+命。古典から導いた式『人生の方程式』と、二十四の悩みに古典が答える『人生の教科書』(PDF)、師導の全機能1か月がセットで700円です。
本の中身を見る