淮南子 / 主術訓
遍知萬物而不知人道,不可謂智;遍愛群生而不愛人類,不可謂仁。仁者愛其類也,智者不可惑也。仁者雖在斷割之中,其所不忍之色可見也。智者雖煩難之事,其不暗之效可見也。內恕反情,心之所欲,其不加諸人,由近知遠,由己知人,此仁智之所合而行也。小有教而大有存也,小有誅而大有寧也,唯惻隱推而行之,此智者之所獨斷也。故仁智錯,有時合,合者為正,錯者為權,其義一也。府吏守法,君制義,法而無義,亦府吏也,不足以為政。
新字:遍知万物而不知人道,不可謂智;遍愛群生而不愛人類,不可謂仁。仁者愛其類也,智者不可惑也。仁者雖在断割之中,其所不忍之色可見也。智者雖煩難之事,其不暗之効可見也。内恕反情,心之所欲,其不加諸人,由近知遠,由己知人,此仁智之所合而行也。小有教而大有存也,小有誅而大有寧也,唯惻隠推而行之,此智者之所独断也。故仁智錯,有時合,合者為正,錯者為権,其義一也。府吏守法,君制義,法而無義,亦府吏也,不足以為政。
書き下し
遍く萬物を知りて人道を知らざるは、智と謂う可からず。遍く群生を愛して人類を愛せざるは、仁と謂う可からず。仁なる者は其の類を愛するなり。智なる者は惑わす可からざるなり。仁なる者は斷割の中に在りと雖も、其の忍びざる所の色 見る可きなり。智なる者は煩難の事にありと雖も、其の暗からざるの效 見る可きなり。內に恕し情に反り、心の欲する所、其れ諸を人に加えず、近きに由りて遠きを知り、己に由りて人を知る。此れ仁智の合して行う所なり。小に教うる有りて大に存する有り、小に誅する有りて大に寧んずる有り。唯だ惻隱もて推して之を行う。此れ智者の獨り斷ずる所なり。故に仁智 錯わり、時に合する有り。合する者を正と為し、錯わる者を權と為す。其の義は一なり。府吏は法を守り、君は義を制す。法ありて義無くんば、亦た府吏なり。以て政を為すに足らず。
現代語訳
あまねく万物を知っていても人の道を知らなければ、知恵とはいえない。あまねく生きものを愛しても人の類を愛さなければ、仁とはいえない。仁とは自分と同じ類を愛することであり、知とは惑わされないことである。仁のある者は、断ち切らねばならない場にあっても、忍びないという表情が見て取れる。知恵のある者は、こみ入った難事にあっても、暗くないという効きめが見て取れる。内で思いやり自分の情に立ち返り、自分の心が望まないことを人に加えず、近いところから遠いところを知り、自分から人を知る。これが仁と知が合わさって行われるところである。小さく教えて大きく保つことがあり、小さく罰して大きく安んじることがある。ただ惻隠の心から推し進めて行う。これは知者が独りで断ずるところである。だから仁と知は交わり、時に合う。合うときが正であり、交わるときが権である。その義は一つである。役所の吏は法を守り、君は義を定める。法があって義がなければ、それも役所の吏にすぎない。政を行うには足りない。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『韓非子』六反第四十六前は苦しくして長く利あり。仁の道為る、偸楽にして後に窮す。聖人其の軽重を権り、其の大利を出だす、故に法の相忍ぶを用ひて、仁人の相憐れむを弃つるなり。
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『韓非子』六反第四十六今家人の産を治むるや、相忍ぶに饑寒を以てし、相強ふるに労苦を以てすれば、軍旅の難、饑饉の患を犯すと雖も、温衣美食する者は、必ず是の家なり。相憐れむに衣食を以てし、相恵むに佚楽を以てすれば、天饑ゑ歳荒るるに、妻を嫁し子を売る者は、必ず是の家なり。故に法の道為る、
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『君子訓』巻之中一家を治め民を治むるには、厳なるを善とす。厳とはまづ我が身を正しくし、軽々しからず、法を立つるにゆるがせならず、民の僻事を制して赦さざるをいふ。厳なれば人恐るる故に、法立ちて破れず、民悪をなさず、罪に陥るもの稀なり。厳ならずしてゆるがせなれば、初は民も家人も悦んで誉むれども、後には怠りおそれず、法ゆるまりて立たず、罪を犯す者多し。始厳なれば後に事なし。始緩なれば後に事多くなる。厳はきびしきなり、不仁なるにあらず。民を悪に入れぬため、きびしくするなり。譬へば水は柔かなるゆゑ、人侮りて溺死する者多し。火は厳なるゆゑ、人恐れて近づかず、焼死する者少し。法も亦如斯。
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『長短経』反経〔議に曰く、国を理むるの要は、仁義賞罰、此れ其の大略なり。然れども用うるに其の宜しきを失えば、反って以て害と為る。故に反経一章を著して以て之を明らかにするなり。〕臣聞く、三代の亡ぶるは、法の亡ぶるに非ざるなり。法を御する者、其の人に非ざればなり。故に知る、法なる者は先王の陳迹なり。苟くも其の人に非ざれば、道は虚しく行われず。故に尹文子曰く「仁義礼楽、名法刑賞、此の八者は、五帝三王治世の術なり」と。故に仁なる者は、物に博く施す所以にして、亦た偏私を生ずる所以なり。
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言志四録・言志耋録 第二百六十八条 訟を聴くの道訟を聴くの道は、仁以て体と為し、荘以て之に涖み、智以て之を察す。先づ其の言を聞きて情偽を攷へ、次に顔色を観て真贋を弁じ、或は寛、或は厳、以て之を抑揚す。然る後に義以て之を断じ、勇以て之を行ふ。大抵是くの如きのみ。

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