淮南子 / 本經訓
煎熬焚炙,調齊和之適,以窮荊、吳甘酸之變,焚林而獵,燒燎大木,鼓橐吹埵,以銷銅鐵,靡流堅鍛,無厭足目,山無峻幹,林無柘梓,燎木以為炭,燔草而為灰,野莽白素,不得其時,上掩天光,下殄地財,此遁於火也。此五者,一足以亡天下矣。是故古者明堂之制,下之潤濕弗能及,上之霧露弗能入,四方之風弗能襲;土事不文,木工不斫,金器不鏤;衣無隅差之削,冠無觚蠃之理;堂大足以周旋理文,靜潔足以享上帝、禮鬼神,以示民知儉節。夫聲色五味,遠國珍怪,瑰異奇物,足以變心易志,搖盪精神,感動血氣者,不可勝計也。夫天地之生財也,本不過五。聖人節五行,則治不荒。
新字:煎熬焚炙,調斉和之適,以窮荊、呉甘酸之変,焚林而猟,焼燎大木,鼓橐吹埵,以銷銅鉄,靡流堅鍛,無厭足目,山無峻幹,林無柘梓,燎木以為炭,燔草而為灰,野莽白素,不得其時,上掩天光,下殄地財,此遁於火也。此五者,一足以亡天下矣。是故古者明堂之制,下之潤湿弗能及,上之霧露弗能入,四方之風弗能襲;土事不文,木工不斫,金器不鏤;衣無隅差之削,冠無觚蠃之理;堂大足以周旋理文,静潔足以享上帝、礼鬼神,以示民知倹節。夫声色五味,遠国珍怪,瑰異奇物,足以変心易志,揺盪精神,感動血気者,不可勝計也。夫天地之生財也,本不過五。聖人節五行,則治不荒。
書き下し
煎熬焚炙し、齊和の適を調え、以て荊・吳の甘酸の變を窮め、林を焚きて獵し、大木を燒燎し、橐を鼓し埵を吹きて、以て銅鐵を銷かし、靡流堅鍛して、目を厭足すること無く、山に峻幹無く、林に柘梓無く、木を燎きて以て炭と為し、草を燔きて灰と為し、野莽 白素として、其の時を得ず、上は天光を掩い、下は地財を殄くす。此れ火に遁るるなり。此の五つの者は、一つにして以て天下を亡ぼすに足る。是の故に古者 明堂の制は、下の潤濕も及ぶ能わず、上の霧露も入る能わず、四方の風も襲う能わず。土事は文らず、木工は斫らず、金器は鏤まず。衣に隅差の削無く、冠に觚蠃の理無し。堂の大なるは以て周旋理文するに足り、靜潔なるは以て上帝を享け鬼神を禮するに足り、以て民に儉節を知るを示す。夫れ聲色五味、遠國の珍怪、瑰異奇物の、以て心を變じ志を易え、精神を搖盪し、血氣を感動せしむるに足る者は、勝げて計う可からざるなり。夫れ天地の財を生ずるや、本より五に過ぎず。聖人 五行を節すれば、則ち治まりて荒れず。
現代語訳
煮炊きし焼きあぶり、味つけの加減を調え、荊や呉の甘い酸っぱいの変化を窮め、林を焼いて狩りをし、大木を焼き払い、ふいごを鳴らし炉に吹きつけて銅と鉄を溶かし、流し込んでは鍛え、目は満ち足りることを知らず、山に高い幹はなく、林に柘や梓はなく、木を焼いて炭にし、草を焼いて灰にし、野は白々として時を得ず、上は天の光を覆い、下は地の産物を絶やす。これが火に溺れるということである。この五つは、どれか一つで天下を亡ぼすに足りる。だから昔の明堂の造りは、下の湿気も届かず、上の霧や露も入らず、四方の風も入り込めなかった。土の仕事に飾りはなく、木の仕事に彫りはなく、金の器に刻みはない。衣に凝った裁ちはなく、冠に飾りの筋目はない。広さは礼の作法を行うに足り、静かで清らかなことは天帝を饗し鬼神を礼するに足り、それによって民に倹約を知ることを示した。そもそも音や色や五つの味、遠い国の珍しいもの、めずらしく奇なる品で、心を変え志を移し、精神を揺さぶり、血気を動かすに足るものは、数え切れない。そもそも天地が財を生むのは、もともと五つを出ない。聖人が五行を節すれば、治まって荒れることはない。
解説
この章句が説くこと
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『都鄙問答』卷之二・或人親へ仕之事ヲ問之段曰く、いかさま是の不審は尤もに候。一事を挙げて云はゞ、芝居の顔見世毎に、桟敷二三軒も借り候へば、相応の雑用かゝり申し候。委細は申すに及ばず、思し召しの外入用これあり候。此味は、学知の及ぶ所にては此なく候。答ふ、芝居顔見世、一度に桟敷二三軒も借ると云へり。其客と云ふは、振舞の雑用のみならず、其上悉く金銀を出す客ならん。其金銀の出づる客を、二三軒の桟敷に一杯おかば、親の渡さるゝ小遣ひにて、足らざること聞えたり。いかさま世に稀なる薬袋なしとは、汝がことなり。家内の手代は、一分二分五厘三厘を争ひて商売をなし、汗を流し設くる金銀を、一度に遣ひ費すこと、家内の人の血肉を吸ひからすに同じ。殷の紂王の、比干が胸をさくに異ならず。
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『都鄙問答』卷之二・或人親へ仕之事ヲ問之段如何となれば、紂王は、我を助け諫むる者の胸をさく。汝は家を思ふ手代の心を痛ましむ。是忠義の者を害ふこと、紂王に、なんぞ替りあらん。恐るべきことなり。人たる道を以て云はゞ、其一日遣ひ費す金銀を、家内の者に恵まば、汝が志を神の如くに思ふべし。家内の者に、神の如くに思はれなば、主人の法と成るべきに、汝ごとき者は、必ず内にては吝きものなり。両親は是を見て、あの細さにては、多分の金は遣ふまじと思ひ居て、津波に値ひたる如く、家屋鋪一度に取らるゝ時のいたましさよ。扠又右のことを、供の小者や男どもは、家内にて物語は致さず候や。
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『呻吟語』外篇・治道・要他何用而今民窮し財盡くるの時に當たり、動もすれば礦稅の害を稱す。以為へらく事君父に幹り、之を諫むるも行はれずんば、總て無可奈何に付すと。吾且く吾輩の民を安んじ用を節して以て自ら便とする者に就きて之を言はん。飲食腹に入るは、三分の銀もて之を用ひて盡きず。而るに食前方丈は、總て暴殄に屬す。他を要して何の用ぞ。僕隸二人、三十里として肉食せざる無き者は、飯桌を程せず、他を要して何の用ぞ。轎扛人夫、吏書馬匹は、寬然として餘り有り。而るに鼓吹旌旗は、他を要して何の用ぞ。下に莞し上に簟し、公座圍裙は、盡く物采を章にせり。而るに滿房に氈を鋪くは、他を要して何の用ぞ。上司新たに到らば、須らく參謁すべし。而るに節壽の日、各州懸の幣帛下程、庭に充ち門に盈つるは、他を要して何の用ぞ。前呼後擁、百人を減ぜず、巡捕聽事、官吏を缺かず。而るに司道府官の交界送接、到る處に追隨するは、他を要して何の用ぞ。隨巡の司道、拜揖の外、筵を張り互ひに款し、期會遑あらず。而るに帶道の文卷盡く取りて抬隨し、帶道の書吏盡く人をして跟隨せしむるは、他を要して何の用ぞ。官官此の如く、在在此の如し。民間の節省、一歲盡く多し。此れ豈に朝廷之を令して此の如くならざるを得ざらんや。吾輩以て深く省みる可し。
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