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淮南子 / 覽冥訓

夫鉗且、大丙不施轡銜而以善禦聞於天下,伏戲、女媧不設法度而以至德遺於後世。何則?至虛無純一而不𡁕喋苛事也。《周書》曰:「掩雉不得,更順其風。」今若夫申、韓、商鞅之為治也,挬拔其根,蕪棄其本,而不窮究其所由生,何以至此也?鑿五刑,為刻削,乃背道德之本,而爭於錐刀之末,斬艾百姓,殫盡太半,而忻忻然常自以為治,是猶抱薪而救火,鑿竇而出水。夫井植生梓而不容甕,溝植生條而不容舟,不過三月必死。所以然者何也?皆狂生而無其本者也。河九折注於海而流不絕者,崑崙之輸也。潦水不泄,瀇瀁極望,旬月不雨則涸而枯澤,受瀷而無源者。譬若羿請不死之藥於西王母,姮娥竊以奔月,悵然有喪,無以續之。何則?不知不死之藥所由生也。是故乞火不若取燧,寄汲不若鑿井。

新字:夫鉗且、大丙不施轡銜而以善禦聞於天下,伏戯、女媧不設法度而以至徳遺於後世。何則?至虚無純一而不𡁕喋苛事也。《周書》曰:「掩雉不得,更順其風。」今若夫申、韓、商鞅之為治也,挬抜其根,蕪棄其本,而不窮究其所由生,何以至此也?鑿五刑,為刻削,乃背道徳之本,而争於錐刀之末,斬艾百姓,殫尽太半,而忻忻然常自以為治,是猶抱薪而救火,鑿竇而出水。夫井植生梓而不容甕,溝植生条而不容舟,不過三月必死。所以然者何也?皆狂生而無其本者也。河九折注於海而流不絶者,崑崙之輸也。潦水不泄,瀇瀁極望,旬月不雨則涸而枯沢,受瀷而無源者。譬若羿請不死之薬於西王母,姮娥竊以奔月,悵然有喪,無以続之。何則?不知不死之薬所由生也。是故乞火不若取燧,寄汲不若鑿井。

書き下し

夫れ鉗且・大丙は轡銜を施さずして善く禦するを以て天下に聞こえ、伏戲・女媧は法度を設けずして至德を以て後世に遺す。何となれば則ち、至虛無純一にして苛事に𡁕喋せざればなり。『周書』に曰く、「雉を掩いて得ざれば、更めて其の風に順え」と。今 夫の申・韓・商鞅の治を為すや、其の根を挬拔き、其の本を蕪棄して、其の由りて生ずる所を窮究せざるは、何を以て此に至らんや。五刑を鑿ち、刻削を為し、乃ち道德の本に背きて、錐刀の末に爭い、百姓を斬艾し、太半を殫盡して、忻忻然として常に自ら以て治と為すは、是れ猶お薪を抱きて火を救い、竇を鑿ちて水を出だすがごとし。夫れ井に梓を植え生やせば甕を容れず、溝に條を植え生やせば舟を容れず、三月を過ぎずして必ず死す。然る所以の者は何ぞや。皆な狂生して其の本無き者なり。河 九たび折れて海に注ぎて流れ絕えざる者は、崑崙の輸すればなり。潦水 泄れずして瀇瀁として望みを極むるも、旬月 雨ふらざれば則ち涸れて澤を枯らすは、瀷を受けて源無き者なり。譬えば羿 不死の藥を西王母に請い、姮娥 竊みて以て月に奔り、悵然として喪う有りて、以て之を續ぐ無きがごとし。何となれば則ち、不死の藥の由りて生ずる所を知らざればなり。是の故に火を乞うは燧を取るに若かず、汲を寄するは井を鑿つに若かず。

現代語訳

そもそも鉗且と大丙は手綱もくつわも使わずに御の巧みさで天下に名を知られ、伏羲と女媧は法度を立てずに極みの徳を後の世に遺した。なぜか。極めて虚しく純一であって、細かい事に口やかましくならなかったからである。『周書』に言う、「雉を覆って捕らえられなければ、あらためて風向きに従え」。ところが申不害や韓非や商鞅の治め方は、その根を引き抜き、その本を荒れるにまかせて、それがどこから生じたかを突き詰めない。それでどうしてここまで至れようか。五つの刑を穿ち、削り取ることを行い、道徳の本に背いて錐や刀の先のような末端を争い、人民を斬り払い、その大半を尽くしておきながら、うれしそうに常に自分では治めていると思っている。これは薪を抱いて火を消しに行き、穴を掘って水を出そうとするようなものだ。そもそも井戸に梓を生やせば甕が入らず、溝に枝を生やせば舟が通れず、三月と経たずに必ず枯れる。そうなる理由は何か。みな勢いだけで生えて、根がないからである。黄河が九度折れて海に注ぎ、流れの絶えないのは、崑崙が送り込んでいるからである。溜まり水が流れ出さずに見渡すかぎり広がっていても、十日か一月も雨が降らなければ涸れて沢を枯らすのは、降った水を受けるだけで源がないからである。たとえば羿が不死の薬を西王母に請い、姮娥がそれを盗んで月へ逃げ、羿は呆然として失ったまま、継ぐすべがなかったようなものだ。なぜか。不死の薬がどこから生まれるかを知らなかったからである。だから、火を乞うのは火打ち石を取るに及ばず、水を汲ませてもらうのは井戸を掘るに及ばない。

解説

覽冥訓の結びです。法家の治め方を「錐刀の末に爭い」と切り、薪を抱いて火を消しに行くようなものだと言います。批判の芯は厳しさではなく、根を見ないことでした。黄河が涸れないのは崑崙が送り込んでいるからで、溜まり水は一月降らなければ枯れる。源があるかどうかだ、と。最後の一句が効きます。「火を乞うは燧を取るに若かず、汲を寄するは井を鑿つに若かず」。もらいに行くより、出どころを自分の手元に持て。

この章句が説くこと

鉗且・大丙は轡銜を施さずして善く禦するを以て天下に聞こゆ道徳の本に背きて錐刀の末に争う是れ猶お薪を抱きて火を救い竇を鑿ちて水を出だすがごとし河九たび折れて海に注ぎて流れ絶えざる者は崑崙の輸すればなり火を乞うは燧を取るに若かず汲を寄するは井を鑿つに若かず根本

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