淮南子 / 墜形訓
北方幽晦不明,天之所閉也,寒水之所積也,蟄蟲之所伏也,其人翕形短頸,大肩下尻,竅通于陰,骨幹屬焉,黑色主腎,其人蠢愚,禽獸而壽;其地宜菽,多犬馬。中央四達,風氣之所通,雨露之所會也,其人大面短頤,美須惡肥,竅通於口,膚肉屬焉,黃色主胃,慧聖而好治;其地宜禾,多牛羊及六畜。木勝土,土勝水,水勝火,火勝金,金勝木,故禾春生秋死,菽夏生冬死,麥秋生夏死,薺冬生中夏死。木壯,水老火生金囚土死;火壯,木老土生水囚金死;土壯,火老金生木囚水死;金壯,土老水生火囚木死。音有五聲,宮其主也;色有五章,黃其主也;味有五變,甘其主也;位有五材,土其主也。是故煉土生木,煉木生火,煉火生雲,煉雲生水,煉水反土。煉甘生酸,煉酸生辛,煉辛生苦,煉苦生鹹,煉咸反甘。變宮生征,變征生商,變商生羽,變羽生角,變角生宮。是故以水和土,以土和火,以火化金,以金治木,木得反土。五行相治,所以成器用。
新字:北方幽晦不明,天之所閉也,寒水之所積也,蟄虫之所伏也,其人翕形短頸,大肩下尻,竅通于陰,骨幹属焉,黒色主腎,其人蠢愚,禽獣而寿;其地宜菽,多犬馬。中央四達,風気之所通,雨露之所会也,其人大面短頤,美須悪肥,竅通於口,膚肉属焉,黄色主胃,慧聖而好治;其地宜禾,多牛羊及六畜。木勝土,土勝水,水勝火,火勝金,金勝木,故禾春生秋死,菽夏生冬死,麦秋生夏死,薺冬生中夏死。木壮,水老火生金囚土死;火壮,木老土生水囚金死;土壮,火老金生木囚水死;金壮,土老水生火囚木死。音有五声,宮其主也;色有五章,黄其主也;味有五変,甘其主也;位有五材,土其主也。是故煉土生木,煉木生火,煉火生雲,煉雲生水,煉水反土。煉甘生酸,煉酸生辛,煉辛生苦,煉苦生鹹,煉咸反甘。変宮生征,変征生商,変商生羽,変羽生角,変角生宮。是故以水和土,以土和火,以火化金,以金治木,木得反土。五行相治,所以成器用。
書き下し
北方は幽晦にして明らかならず、天の閉ずる所なり、寒水の積む所なり、蟄蟲の伏する所なり。其の人は翕形にして短頸、大肩下尻、竅は陰に通じ、骨幹焉に屬す。黑色にして腎を主り、其の人蠢愚にして、禽獸のごとくして壽なり。其の地は菽に宜しく、犬馬多し。中央は四達して、風氣の通ずる所、雨露の會する所なり。其の人は大面短頤、須美しく肥を惡み、竅は口に通じ、膚肉焉に屬す。黃色にして胃を主り、慧聖にして治を好む。其の地は禾に宜しく、牛羊及び六畜多し。木は土に勝ち、土は水に勝ち、水は火に勝ち、火は金に勝ち、金は木に勝つ。故に禾は春に生じ秋に死し、菽は夏に生じ冬に死し、麥は秋に生じ夏に死し、薺は冬に生じ中夏に死す。木壯んなれば、水老い火生じ金囚われ土死す。火壯んなれば、木老い土生じ水囚われ金死す。土壯んなれば、火老い金生じ木囚われ水死す。金壯んなれば、土老い水生じ火囚われ木死す。音に五聲有り、宮は其の主なり。色に五章有り、黃は其の主なり。味に五變有り、甘は其の主なり。位に五材有り、土は其の主なり。是の故に土を煉りて木を生じ、木を煉りて火を生じ、火を煉りて雲を生じ、雲を煉りて水を生じ、水を煉りて土に反る。甘を煉りて酸を生じ、酸を煉りて辛を生じ、辛を煉りて苦を生じ、苦を煉りて鹹を生じ、鹹を煉りて甘に反る。宮を變じて徵を生じ、徵を變じて商を生じ、商を變じて羽を生じ、羽を變じて角を生じ、角を變じて宮を生ず。是の故に水を以て土を和し、土を以て火を和し、火を以て金を化し、金を以て木を治め、木は土に反るを得。五行相い治めて、器用を成す所以なり。
現代語訳
北方は薄暗く明るくない。天が閉じるところであり、冷たい水が積もるところであり、冬ごもりの虫が伏すところである。その人は縮んだ体つきで首が短く、肩が大きく尻が下がり、穴は陰に通じ、骨がそこに属する。黒い色で腎を司り、その人は鈍く愚かで、獣のようで長生きする。その地は豆に適し、犬や馬が多い。中央は四方に通じ、風の気が通うところ、雨露が集まるところである。その人は顔が大きく顎が短く、髭が立派で肥満を嫌い、穴は口に通じ、皮膚と肉がそこに属する。黄色で胃を司り、賢く聖なるところがあって治めることを好む。その地は稲に適し、牛や羊や六畜が多い。木は土に勝ち、土は水に勝ち、水は火に勝ち、火は金に勝ち、金は木に勝つ。だから稲は春に生じて秋に死に、豆は夏に生じて冬に死に、麦は秋に生じて夏に死に、薺は冬に生じて真夏に死ぬ。木が盛んなときは、水は老い火は生まれ金は囚われ土は死ぬ。火が盛んなときは、木は老い土は生まれ水は囚われ金は死ぬ。土が盛んなときは、火は老い金は生まれ木は囚われ水は死ぬ。金が盛んなときは、土は老い水は生まれ火は囚われ木は死ぬ。音には五つの声があり、宮がその主である。色には五つの章があり、黄がその主である。味には五つの変化があり、甘がその主である。位には五つの材があり、土がその主である。だから土を練って木を生み、木を練って火を生み、火を練って雲を生み、雲を練って水を生み、水を練って土に返る。甘を練って酸を生み、酸を練って辛を生み、辛を練って苦を生み、苦を練って鹹を生み、鹹を練って甘に返る。宮を変じて徴を生み、徴を変じて商を生み、商を変じて羽を生み、羽を変じて角を生み、角を変じて宮を生む。だから水で土を和らげ、土で火を和らげ、火で金を溶かし、金で木を治め、木は土に返る。五行が互いに治め合って、器物ができあがるのである。
解説
この章句が説くこと
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五行大義・第三明数・第二論五行及生成数天の九は地四の偶たるなり。地の十は天五の匹たるなり。陰陽各おの合う有りて、然る後に気性相得て、施化行わるるなり。故に四時の運、五行に成る。土は四行を総べ、時の季に居りて、以て之を成すなり。五行伝及び白虎通、皆云う、「木は土に非ざれば生ぜず、根核茂栄す。火は土に非ざれば栄えず、木を得て形を著す。金は土に非ざれば成らず、範に入りて名を成す。水は土に非ざれば停まらず、隄防して盈つるを禁ず。土は微を扶け衰えを助け、其の道を成すに応ず」と。故に五行更互に土を須(ま)つ。土は四季に王として中央に居り、名を以て時を成さず。故に知る、同時に倶に起こり、但だ義を託して相生ずることを。伝に曰く、「五行並び起こり、各おの名を以て別つ」と。常に数に従う義に云う、北方の亥子は水なり、生数は一。丑は土なり、生数は五。一と五と相得て六と為る。故に水の成数は六なり。東方の寅卯は木なり、生数は三。辰は土なり、生数は五。三と五と相得て八と為る。故に木の成数は八なり。南方の巳午は火なり、生数は二。未は土なり、生数は五。二と五と相得て七と為る。故に火の成数は七なり。西方の申酉は金なり、生数は四。戌は土なり、生数は五。四と五と相得て九と為る。故に金の成数は九なり。中央の戊己は土なり、生数は五。又土の位は中に在り、其の数本五。両五相得て十と為る。故に土の成数は十なり。此れ陰陽両気各おの一周するなり。
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五行大義・第四論相生・一者論相生第四、相生を論ず。此に就きて分かちて三段と為す。一は相生を論じ、二は生死の所を論じ、三は四時の休王(きゅうおう)を論ず。 経に云う、天は一を生じ、北方の水に始まる。地は二を生じ、南方の火に始まる。人は三を生じ、東方の木に始まる。時は四を生じ、西方の金に始まる。五行は五を生じ、中央の土に始まる、と。又曰く、天始めて一を生ずとは、一に因りて天を生ずるなり、天、一を生ずるに非ざるなり。故に云う、一は二を生じ、二は三を生じ、三は万物を生ず、と。地、二を生ずとは、亦二に因りて地を生じ、三に因りて人を生じ、四に因りて時を生ず。五行は皆一に由りて生じ、数五に至りて、土最も後に在り、五を得て五行を生ずるなり。五行同じく出でて時を異にするは、出でて其の親を離れ、配偶する所有り。譬えば人の生の如し。亦同じく元気にして生じ、各一家より出で、配して夫妻と為り、子息を化生す。故に五行は皆相須(ま)ちて成るなり。五行は胎を同じくして居を異にし、先後有るのみ。夫れ五行は皆陰陽の気に資(よ)りて生ず。故に云う、濡気は水を生じ、温気は火を生じ、強気は木を生じ、剛気は金を生じ、和気は土を生ず、と。故に知る、五行は同時に起こり、義を託して相生ずるを。伝に曰く、五行竝び起こり、各名を以て別つ、と。然れども五行既に名を以て別たれ、更互に事を用い、輪転して休王す、故に相生ずるなり。潁容(えいよう)云う、凡そ五行の相生は、異類相化するを謂う。男女の姓を異にして、能く繁殖に至るが如し。若し水を以て水を済(ととの)うれば、嘉味を生ぜず、と。河間献王、温城の董君に問いて曰く、孝は天の経、地の義なりとは、何の謂いぞや、と。対えて曰く、天に五行有り、木・火・土・金・水是れなり。
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五行大義・第四論相生・一者論相生木は火を生じ、火は土を生じ、土は金を生じ、金は水を生じ、水は木を生ず。木は春たり。春は生を主り、夏は長養を主り、秋は収を主り、冬は蔵を主る。蔵は冬の成す所なり。是の故に父の生ずる所、其の子之を長じ、父の長ずる所、其の子之を養い、父の養う所、其の子之を成す。敢えて父の意を致さずんばあらず、人の道を尽くすなり。故に五行は五常なり、と。白虎通に云う、木、火を生ずとは、木の性は温暖にして、火其の中に伏し、鑽灼(さんしゃく)して出づ、故に木、火を生ず。火、土を生ずとは、火は熱し、故に能く木を焚く。木焚けて灰と成る、灰は即ち土なり。故に火、土を生ず。土、金を生ずとは、金は石に居り、山に依りて津潤して生ず。土を聚めて山と成し、山は必ず石を生ず。故に土、金を生ず。金、水を生ずとは、少陰の気は潤沢にして、津を流し金を銷(と)かせば、亦水と為る。所以に山雲りて潤いに従う。故に金、水を生ず。水、木を生ずとは、水の潤いに因りて能く生ず、故に水、木を生ずるなり、と。元命苞に云う、陽は吐き陰は化す、故に水、木を生ずるなり、と。春秋繁露に云う、東方は木、木は農の本なり。司農は仁を尚ぶ。五穀畜積し、司馬之を食む。故に木、火を生ず。火は本朝の司馬、知を尚ぶ。天の時の形兆未だ萌さざるに、昭然として独り見る。天下既に寧く、以て君臣を安んず。故に火、土を生ずるなり。土は君、信を尚ぶ。時の威武強御に因りて、以て大理司徒を成す。故に土、金を生ず。金は大理司徒、義を尚ぶ。辺境安寧にして、寇賊発せず、邑に獄訟無ければ、則ち執法司寇安し。故に金、水を生ず。水は執法司寇、礼を尚ぶ。君臣位有り、長幼序有り、百工維れ時あり、以て歳用を成す。器械既に成りて、以て司農田官に給す。故に水、木を生ず、と。両説、事義別なりと雖も、相生は是れ同じ。五行各形を定むるに、唯だ火のみ鑽灼して方に出づるは、火は是れ大陽の気、温まる故に乃ち生ず。木を鑽りて出づるは、還りて万物に寄託するのみ。聖人は名無くして、能く万物を理め、還りて万物を以て名と為すが如し。陽気は至神なり、故に隠顕有り。
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五行大義・第一釈名・第一釈五行名其の時は季夏。季は老なり。万物此に於いて成就し、方(まさ)に老ゆ。四時の季に王たり、故に老と曰うなり。其の位は内に処る。内は通なり。礼斗威儀(れいとい ぎ)に云う、「皇極の正気を得、黄中の徳を含み、能く万物を苞(つつ)む」と。許慎云う、「金は禁なり。陰気始めて起こり、万物禁止するなり。土、金を生ず、字は土に従い、左右の注は、金の土中に在るの形に象るなり」と。其の時は秋なり。礼記に云う、「秋の言たる愁なり。之を愁えしむるに時を以て察し、義を守る者なり」と。尸子云う、「秋は粛なり。万物粛敬恭荘せざる莫し。礼の主なり」と。説文に曰く、「天地、物を反すを秋と為す」と。其の位は西方。尚書大伝に云う、「西は鮮なり。鮮は訊なり。訊とは始めて入るの貌なり」と。釈名・広雅・白虎通、皆曰く、「水は準なり。万物を平準す」と。元命苞に曰く、「水の言たる演なり。陰化して淖濡(とうじゅ)し、流施して潜行するなり」と。故に字を立つるに、両人交わり、一の中より出づる者を水と為す。一は数の始めなり。両人は男女に譬う。陰陽交わりて以て一を起こすなり。水は五行の始め、元気の湊液(そうえき)なり。管子に云う、「水は地の血気、筋脈の通流する者なり」と。故に水と曰う。許慎云う、「其の字は泉の並び流るるに象り、中に微陽の気有り」と。其の時は冬。尸子云う、「冬は終なり。万物此に至りて終わり蔵(かく)るるなり」と。礼記に云う、「冬の言たる中なり。中は蔵なり」と。其の位は北方。尸子云う、「北は伏なり。万物冬に至りて皆伏し、貴賤一の若きなり」と。五行の時及び方位、故に分かちて之を釈す。
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『淮南子』天文訓何をか五星と謂う。東方は、木なり。其の帝は太皞、其の佐は句芒、規を執りて春を治む。其の神は歲星と為り、其の獸は蒼龍、其の音は角、其の日は甲乙。南方は、火なり。其の帝は炎帝、其の佐は朱明、衡を執りて夏を治む。其の神は熒惑と為り、其の獸は朱鳥、其の音は徵、其の日は丙丁。中央は、土なり。其の帝は黃帝、其の佐は后土、繩を執りて四方を制す。其の神は鎮星と為り、其の獸は黃龍、其の音は宮、其の日は戊己。西方は、金なり。其の帝は少昊、其の佐は蓐收、矩を執りて秋を治む。其の神は太白と為り、其の獸は白虎、其の音は商、其の日は庚辛。北方は、水なり。其の帝は顓頊、其の佐は玄冥、權を執りて冬を治む。其の神は辰星と為り、其の獸は玄武、其の音は羽、其の日は壬癸。
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五行大義・第二弁体性体は形質を以て名と為し、性は功用を以て義と為す。五行の体性、万物に資益するを以て、故に合わせて之を弁ず。木は少陽の位に居り、春気和煦(わく)温柔にして、弱き火其の中に伏す。故に木は温柔を以て体と為し、曲直を性と為す。火は大陽の位に居り、炎熾(えんし)赫烈なり。故に火は明熱を以て体と為し、炎上を性と為す。土は四時の中に在り、季夏の末に処る。陽衰え陰長じ、位の中に居り、四行を総ぶ。塵を積みて実を成す。積めば則ち間有り、間有るが故に含容し、実を成すが故に能く持す。故に土は含散持実を以て体と為し、稼穡(かしょく)を性と為す。金は少陰の位に居り、西方は物を成すの所なり。物成れば則ち凝り強く、少陰なれば則ち清冷なり。故に金は強冷を以て体と為し、従革を性と為す。水は寒虚を以て体と為し、潤下を性と為す。洪範に云う、「木を曲直と曰い、火を炎上と曰い、土を稼穡と曰い、金を従革と曰い、水を潤下と曰う」と。是れ其の性なり。淮南子に云う、「天地の襲精は陰陽と為り、陰陽の専精は四時と為り、四時の散精は万物と為る。積陰の寒気反する者は水と為り、積陽の熱気反する者は火と為る」と。水は陰物と雖も、陽其の内に在り。故に水の体は内明らかなり。火は陽物と雖も、陰其の内に在り。故に火の体は内暗し。木は少陽たり、其の体亦た陰気を含む。故に内空虚にして、外に花葉有り、敷栄して観るべし。金は少陰たり、其の体剛利にして、殺性外に在り、内も亦た光明にして照らすべし。土は四徳を苞(つつ)む、故に其の体能く虚実を兼ぬ。洪範伝に曰く、「木を曲直と曰うは、東方なり。易に云う、

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