淮南子 / 墜形訓
東方之美者,有醫毋閭之珣玗琪焉;東南方之美者,有會稽之竹箭焉;南方之美者,有梁山之犀象焉;西南方之美者,有華山之金石焉。西方之美者,有霍山之珠玉焉;西北方之美者,有昆侖之球琳、琅玕焉。北方之美者,有幽都之筋角焉;東北方之美者,有斥山之文皮焉;中央之美者,有岱嶽以生五穀桑麻,魚鹽出焉。凡地形,東西為緯,南北為經,山為積德,川為積刑,高者為生,下者為死,丘陵為牡,溪穀為牝。水圓折者有珠,方折者有玉。清水有黃金,龍淵有玉英。土地各以其類生,是故山氣多男,澤氣多女,障氣多喑,風氣多聾,林氣多癃,木氣多傴,岸下氣多腫,石氣多力,險阻氣多癭,暑氣多夭,寒氣多壽,穀氣多痹,丘氣多狂,衍氣多仁,陵氣多貪。輕土多利,重土多遲,清水音小,濁水音大,湍水人輕,遲水人重,中土多聖人。皆象其氣,皆應其類。故南方有不死之草,北方有不釋之冰,東方有君子之國,西方有形殘之屍。寢居直夢,人死為鬼,磁石上飛,雲母來水,土龍致雨,燕雁代飛。蛤蟹珠龜,與月盛衰,是故堅土人剛,弱土人肥,壚土人大,沙土人細,息土人美,毛土人醜。食水者善遊能寒,食土者無心而慧,食木者多力而𡚤,食草者善走而愚,食葉者有絲而蛾,食肉者勇敢而悍,食氣者神明而壽,食穀者知慧而夭。不食者不死而神。
新字:東方之美者,有医毋閭之珣玗琪焉;東南方之美者,有会稽之竹箭焉;南方之美者,有梁山之犀象焉;西南方之美者,有華山之金石焉。西方之美者,有霍山之珠玉焉;西北方之美者,有昆侖之球琳、琅玕焉。北方之美者,有幽都之筋角焉;東北方之美者,有斥山之文皮焉;中央之美者,有岱嶽以生五穀桑麻,魚塩出焉。凡地形,東西為緯,南北為経,山為積徳,川為積刑,高者為生,下者為死,丘陵為牡,渓穀為牝。水円折者有珠,方折者有玉。清水有黄金,竜淵有玉英。土地各以其類生,是故山気多男,沢気多女,障気多喑,風気多聾,林気多癃,木気多傴,岸下気多腫,石気多力,険阻気多癭,暑気多夭,寒気多寿,穀気多痹,丘気多狂,衍気多仁,陵気多貪。軽土多利,重土多遅,清水音小,濁水音大,湍水人軽,遅水人重,中土多聖人。皆象其気,皆応其類。故南方有不死之草,北方有不釈之冰,東方有君子之国,西方有形残之屍。寝居直夢,人死為鬼,磁石上飛,雲母来水,土竜致雨,燕雁代飛。蛤蟹珠亀,与月盛衰,是故堅土人剛,弱土人肥,壚土人大,沙土人細,息土人美,毛土人醜。食水者善遊能寒,食土者無心而慧,食木者多力而𡚤,食草者善走而愚,食葉者有糸而蛾,食肉者勇敢而悍,食気者神明而寿,食穀者知慧而夭。不食者不死而神。
書き下し
東方の美なる者は、醫毋閭の珣玗琪有り。東南方の美なる者は、會稽の竹箭有り。南方の美なる者は、梁山の犀象有り。西南方の美なる者は、華山の金石有り。西方の美なる者は、霍山の珠玉有り。西北方の美なる者は、昆侖の球琳・琅玕有り。北方の美なる者は、幽都の筋角有り。東北方の美なる者は、斥山の文皮有り。中央の美なる者は、岱嶽有りて以て五穀桑麻を生じ、魚鹽焉に出づ。凡そ地形は、東西を緯と為し、南北を經と為す。山を積德と為し、川を積刑と為す。高き者を生と為し、下き者を死と為す。丘陵を牡と為し、溪穀を牝と為す。水の圓く折るる者は珠有り、方に折るる者は玉有り。清水には黃金有り、龍淵には玉英有り。土地は各ミ其の類を以て生ず。是の故に山氣は男多く、澤氣は女多く、障氣は喑多く、風氣は聾多く、林氣は癃多く、木氣は傴多く、岸下の氣は腫多く、石氣は力多く、險阻の氣は癭多く、暑氣は夭多く、寒氣は壽多く、穀氣は痹多く、丘氣は狂多く、衍氣は仁多く、陵氣は貪多し。輕土は利多く、重土は遲多し。清水は音小さく、濁水は音大なり。湍水は人輕く、遲水は人重し。中土は聖人多し。皆な其の氣に象り、皆な其の類に應ず。故に南方に不死の草有り、北方に不釋の冰有り、東方に君子の國有り、西方に形殘の屍有り。寢居は直夢し、人死して鬼と為り、磁石は上飛し、雲母は水を來し、土龍は雨を致し、燕雁は代わる代わる飛ぶ。蛤蟹珠龜は、月と盛衰す。是の故に堅土の人は剛く、弱土の人は肥え、壚土の人は大に、沙土の人は細く、息土の人は美に、毛土の人は醜し。水を食らう者は善く游ぎ寒に能え、土を食らう者は心無くして慧く、木を食らう者は力多くして𡚤く、草を食らう者は善く走りて愚に、葉を食らう者は絲有りて蛾となり、肉を食らう者は勇敢にして悍く、氣を食らう者は神明にして壽く、穀を食らう者は知慧にして夭す。食らわざる者は死せずして神なり。
現代語訳
東方の良いものは、医毋閭の珣玗琪がある。東南の良いものは、会稽の竹の矢がある。南の良いものは、梁山の犀と象がある。西南の良いものは、華山の金と石がある。西の良いものは、霍山の珠と玉がある。西北の良いものは、崑崙の球琳と琅玕がある。北の良いものは、幽都の筋と角がある。東北の良いものは、斥山の模様のある毛皮がある。中央の良いものは、岱岳があって五穀と桑と麻を生じ、魚と塩が出る。およそ地形は、東西を緯とし、南北を経とする。山を積もった徳とし、川を積もった刑とする。高いところを生とし、低いところを死とする。丘陵を雄とし、谷を雌とする。水が丸く曲がるところには珠があり、四角く曲がるところには玉がある。清い水には黄金があり、龍の淵には玉英がある。土地はそれぞれその類によって生む。だから山の気には男が多く、沢の気には女が多く、瘴気には口のきけない者が多く、風の気には耳の遠い者が多く、林の気には足の悪い者が多く、木の気には背の曲がった者が多く、岸の下の気には腫れが多く、石の気には力の強い者が多く、険しい気にはこぶが多く、暑い気には短命が多く、寒い気には長寿が多く、谷の気にはしびれが多く、丘の気には狂が多く、平地の気には仁が多く、陵の気には貪りが多い。軽い土には俊敏が多く、重い土には鈍重が多い。清い水は声が小さく、濁った水は声が大きい。速い流れの人は軽く、遅い流れの人は重い。中央の土には聖人が多い。みなその気にかたどり、みなその類に応じている。だから南方には不死の草があり、北方には解けない氷があり、東方には君子の国があり、西方には形の損なわれた屍がある。寝ていれば夢を見、人は死んで鬼となり、磁石は上に飛び、雲母は水を呼び、土の龍は雨をもたらし、燕と雁は入れ替わりに飛ぶ。蛤や蟹や珠や亀は、月とともに満ち欠けする。だから堅い土の人は剛く、弱い土の人は肥え、黒土の人は大きく、砂地の人は細く、ふくれる土の人は美しく、荒れた土の人は醜い。水を食べるものはよく泳ぎ寒さに耐え、土を食べるものは心がなくて賢く、木を食べるものは力が強くて猛々しく、草を食べるものはよく走って愚かで、葉を食べるものは糸を吐いて蛾となり、肉を食べるものは勇敢で荒々しく、気を食べるものは神妙で長生きし、穀を食べるものは知恵があって短命である。何も食べないものは死なずに神となる。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
『淮南子』墜形訓萬物の生ずるや各ミ類を異にす。蠶は食らいて飲まず、蟬は飲みて食らわず、蜉蝣は飲まず食らわず。介鱗なる者は夏に食らいて冬に蟄す。齧み吞む者は八竅にして卵生し、嚼み咽む者は九竅にして胎生す。四足なる者は羽翼無く、角を戴く者は上齒無し。角無き者は膏ありて前無く、角有る者は指ありて後無し。晝に生まるる者は父に類し、夜に生まるる者は母に似る。至陰は牝を生じ、至陽は牡を生ず。夫れ熊羆は蟄藏し、飛鳥は時に移る。是の故に白水は玉に宜しく、黑水は砥に宜しく、青水は碧に宜しく、赤水は丹に宜しく、黃水は金に宜しく、清水は龜に宜し。汾水は蒙濁にして麻に宜しく、泲水は通和にして麥に宜しく、河水は中濁にして菽に宜しく、雒水は輕利にして禾に宜しく、渭水は多力にして黍に宜しく、漢水は重安にして竹に宜しく、江水は肥仁にして稻に宜し。平土の人は、慧くして五穀に宜し。東方は川穀の注ぐ所、日月の出づる所なり。其の人は兌形にして小頭、隆鼻大口、鳶肩企行、竅は目に通じ、筋氣焉に屬す。蒼色にして肝を主り、長大にして早く知あるも壽ならず。其の地は麥に宜しく、虎豹多し。南方は、陽氣の積む所、暑濕之に居る。其の人は修形にして上兌く、大口決𦚚、竅は耳に通じ、血脈焉に屬す。赤色にして心を主り、早く壯んにして夭す。其の地は稻に宜しく、兕象多し。西方は高土にして、川穀焉に出で、日月焉に入る。其の人は面末僂、修頸卬行、竅は鼻に通じ、皮革焉に屬す。白色にして肺を主り、勇敢にして不仁なり。其の地は黍に宜しく、旄犀多し。
-
『淮南子』墜形訓墬形の載する所、六合の間、四極の内、之を照らすに日月を以てし、之を經するに星辰を以てし、之を紀するに四時を以てし、之を要するに太歲を以てす。天地の間、九州八極、土に九山有り、山に九塞有り、澤に九藪有り、風に八等有り、水に六品有り。何をか九州と謂う。東南の神州を農土と曰い、正南の次州を沃土と曰い、西南の戎州を滔土と曰い、正西の弇州を並土と曰い、正中の冀州を中土と曰い、西北の台州を肥土と曰い、正北の泲州を成土と曰い、東北の薄州を隱土と曰い、正東の陽州を申土と曰う。
-
『淮南子』墜形訓北方は幽晦にして明らかならず、天の閉ずる所なり、寒水の積む所なり、蟄蟲の伏する所なり。其の人は翕形にして短頸、大肩下尻、竅は陰に通じ、骨幹焉に屬す。黑色にして腎を主り、其の人蠢愚にして、禽獸のごとくして壽なり。其の地は菽に宜しく、犬馬多し。中央は四達して、風氣の通ずる所、雨露の會する所なり。其の人は大面短頤、須美しく肥を惡み、竅は口に通じ、膚肉焉に屬す。黃色にして胃を主り、慧聖にして治を好む。其の地は禾に宜しく、牛羊及び六畜多し。木は土に勝ち、土は水に勝ち、水は火に勝ち、火は金に勝ち、金は木に勝つ。故に禾は春に生じ秋に死し、菽は夏に生じ冬に死し、麥は秋に生じ夏に死し、薺は冬に生じ中夏に死す。木壯んなれば、水老い火生じ金囚われ土死す。火壯んなれば、木老い土生じ水囚われ金死す。土壯んなれば、火老い金生じ木囚われ水死す。金壯んなれば、土老い水生じ火囚われ木死す。音に五聲有り、宮は其の主なり。色に五章有り、黃は其の主なり。味に五變有り、甘は其の主なり。位に五材有り、土は其の主なり。是の故に土を煉りて木を生じ、木を煉りて火を生じ、火を煉りて雲を生じ、雲を煉りて水を生じ、水を煉りて土に反る。甘を煉りて酸を生じ、酸を煉りて辛を生じ、辛を煉りて苦を生じ、苦を煉りて鹹を生じ、鹹を煉りて甘に反る。宮を變じて徵を生じ、徵を變じて商を生じ、商を變じて羽を生じ、羽を變じて角を生じ、角を變じて宮を生ず。是の故に水を以て土を和し、土を以て火を和し、火を以て金を化し、金を以て木を治め、木は土に反るを得。五行相い治めて、器用を成す所以なり。
-
『淮南子』說山訓今 曰く、稻は水に生ずるも、湍瀨の流れに生ずる能わず。紫芝は山に生ずるも、盤石の上に生ずる能わず。慈石は能く鐵を引くも、其の銅に於けるに及びては、則ち行われざるなり。水 廣き者は魚 大に、山 高き者は木 脩し。其の地を廣くして其の德を薄くするは、譬えば猶お陶人の器を爲るがごときなり。其の土を揲挻して厚きを益さざれば、破るること乃ち愈々疾し。聖人は風に先んじて吹かず、雷に先んじて毀たず。已むを得ずして動く。故に累無し。月 上に盛衰すれば、則ち蠃蛖 下に應ず。同氣 相い動く。以て遠しと爲す可からず。
-
『淮南子』墜形訓八殥の外に、八紘有り、亦た方千里。東北方より和丘と曰い、荒土と曰う。東方は棘林と曰い、桑野と曰う。東南方は大窮と曰い、眾女と曰う。南方は都廣と曰い、反戶と曰う。西南方は焦僥と曰い、炎土と曰う。西方は金丘と曰い、沃野と曰う。西北方は一目と曰い、沙所と曰う。北方は積冰と曰い、委羽と曰う。凡そ八紘の氣は、是れ寒暑を出だし、以て八正に合し、必ず風雨を以てす。八紘の外に、乃ち八極有り。東北方より方土の山と曰い、蒼門と曰う。東方は東極の山と曰い、開明の門と曰う。東南方は波母の山と曰い、陽門と曰う。南方は南極の山と曰い、暑門と曰う。西南方は編駒の山と曰い、白門と曰う。西方は西極の山と曰い、閶闔の門と曰う。西北方は不周の山と曰い、幽都の門と曰う。北方は北極の山と曰い、寒門と曰う。凡そ八極の雲は、是れ天下に雨ふらす。八門の風は、是れ寒暑を節す。八紘・八殥・八澤の雲は、以て九州に雨ふらして中土を和す。
-
『淮南子』墜形訓壯士の氣は、赤天を禦む。赤天七百歳にして赤丹を生じ、赤丹七百歳にして赤澒を生じ、赤澒七百歳にして赤金を生じ、赤金千歳にして赤龍を生じ、赤龍藏に入りて赤泉を生じ、赤泉の埃は上りて赤雲と為り、陰陽相い薄りて雷と為り、激揚して電と為る。上る者は下に就き、流水は通ずるに就きて、赤海に合す。弱土の氣は、白天を禦む。白天九百歳にして白礜を生じ、白礜九百歳にして白澒を生じ、白澒九百歳にして白金を生じ、白金千歳にして白龍を生じ、白龍藏に入りて白泉を生じ、白泉の埃は上りて白雲と為り、陰陽相い薄りて雷と為り、激揚して電と為る。上る者は下に就き、流水は通ずるに就きて、白海に合す。牝土の氣は、玄天を禦む。玄天六百歳にして玄砥を生じ、玄砥六百歳にして玄澒を生じ、玄澒六百歳にして玄金を生じ、玄金千歳にして玄龍を生じ、玄龍藏に入りて玄泉を生じ、玄泉の埃は上りて玄雲と為り、陰陽相い薄りて雷と為り、激揚して電と為る。上る者は下に就き、流水は通ずるに就きて、玄海に合す。