淮南子 / 俶真訓
夫挾依於跂躍之術,提挈人間之際,撢掞挺挏世之風俗,以摸蘇牽連物之微妙,猶得肆其志,充其欲,何況懷瑰瑋之道,忘肝膽,遺耳目,獨浮游無方之外,不與物相弊摋,中徙倚無形之域而和以天地者乎!若然者,偃其聰明而抱其太素,以利害為塵垢,以死生為晝夜,是故目觀玉輅琬象之狀,耳聽白雪、清角之聲,不能以亂其神。登千仞之谿,臨蝯眩之岸,不足以滑其和。譬若鍾山之玉,炊以鑪炭,三日三夜而色澤不變。則至德天地之精也。是故生不足以使之,利何足以動之;死不足以禁之,害何足以恐之。明於死生之分,達於利害之變,雖以天下之大,易骭之一毛,無所概於志也。
新字:夫挟依於跂躍之術,提挈人間之際,撢掞挺挏世之風俗,以摸蘇牽連物之微妙,猶得肆其志,充其欲,何況懐瑰瑋之道,忘肝胆,遺耳目,独浮游無方之外,不与物相弊摋,中徙倚無形之域而和以天地者乎!若然者,偃其聰明而抱其太素,以利害為塵垢,以死生為昼夜,是故目観玉輅琬象之状,耳聴白雪、清角之声,不能以乱其神。登千仞之谿,臨蝯眩之岸,不足以滑其和。譬若鍾山之玉,炊以鑪炭,三日三夜而色沢不変。則至徳天地之精也。是故生不足以使之,利何足以動之;死不足以禁之,害何足以恐之。明於死生之分,達於利害之変,雖以天下之大,易骭之一毛,無所概於志也。
書き下し
夫れ跂躍の術に挾依し、人間の際に提挈し、世の風俗を撢掞挺挏し、以て物の微妙を摸蘇牽連するすら、猶お其の志を肆にし、其の欲を充たすを得たり。何ぞ況んや瑰瑋の道を懷き、肝膽を忘れ、耳目を遺れ、獨り無方の外に浮游し、物と相い弊摋せず、中は無形の域に徙倚して天地を以て和する者をや。然る若き者は、其の聰明を偃せて其の太素を抱き、利害を以て塵垢と為し、死生を以て晝夜と為す。是の故に目に玉輅琬象の狀を觀、耳に白雪・清角の聲を聽くも、以て其の神を亂す能わず。千仞の谿に登り、蝯眩の岸に臨むも、以て其の和を滑すに足らず。譬えば鍾山の玉を、炊くに鑪炭を以てし、三日三夜にして色澤變ぜざるが若し。則ち至德は天地の精なり。是の故に生も以て之を使うに足らず、利何ぞ以て之を動かすに足らん。死も以て之を禁ずるに足らず、害何ぞ以て之を恐れしむるに足らん。死生の分に明らかに、利害の變に達すれば、天下の大を以て骭の一毛に易うと雖も、志に概する所無きなり。
現代語訳
そもそも小手先の術に寄りかかり、人の世の際で手を貸し合い、世の風俗を揺すって探り、物の微妙なところを手繰り寄せる程度の者でさえ、志を思うままにし、欲を満たすことができた。まして立派な道を胸に抱き、肝も胆も忘れ、耳目を捨て、ひとり方角のない外に漂い、物とぶつかり合わず、内は形のない領域に身を寄せて天地と和する者ならなおさらである。そういう者は、その聡明さを伏せてその素の姿を抱き、利害を塵や垢とし、死と生を昼と夜とする。だから目に玉の車や象牙の飾りを見、耳に白雪や清角の名曲を聞いても、その神を乱せない。千仞の谷に登り、猿もめまいするような崖に臨んでも、その和を乱すには足りない。たとえば鐘山の玉を、炉の炭で炊いて、三日三晩たっても色つやが変わらないようなものだ。至徳は天地の精である。だから生も彼を使うには足りず、利がどうして彼を動かせよう。死も彼を禁じるには足りず、害がどうして彼を恐れさせよう。死生の分かれ目に明るく、利害の変化に通じていれば、天下という大きなものをすねの毛一本と取り替えるとしても、志に引っかかるところがない。
解説
この章句が説くこと
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