淮南子 / 原道訓
今夫狂者之不能避水火之難而越溝瀆之險者,豈無形神氣志哉?然而用之異也。失其所守之位,而離其外內之舍,是故舉錯不能當,動靜不能中,終身運枯形於連嶁列埒之門,而蹪蹈於污壑阱陷之中,雖生俱與人鈞,然而不免為人戮笑者,何也?形神相失也。故以神為主者,形從而利;以形為制者,神從而害。貪饕多欲之人,漠歐於勢利,誘慕於名位,冀以過人之智植於高世,則神日以耗而彌遠,久淫而不還,形閉中距,則神無由入矣。是以天下時有盲妄自失之患。此膏燭之類也,火逾然而消逾亟。夫精神氣志者,靜而日充者以壯,躁而日耗者以老。是故聖人將養其神,和弱其氣,平夷其形,而與道沈浮俛仰,恬然則縱之,迫則用之。其縱之也若委衣,其用之也若發機。如是,則萬物之化無不遇,而百事之變無不應。
新字:今夫狂者之不能避水火之難而越溝瀆之険者,豈無形神気志哉?然而用之異也。失其所守之位,而離其外内之舎,是故舉錯不能当,動静不能中,終身運枯形於連嶁列埒之門,而蹪蹈於污壑阱陥之中,雖生倶与人鈞,然而不免為人戮笑者,何也?形神相失也。故以神為主者,形従而利;以形為制者,神従而害。貪饕多欲之人,漠欧於勢利,誘慕於名位,冀以過人之智植於高世,則神日以耗而弥遠,久淫而不還,形閉中距,則神無由入矣。是以天下時有盲妄自失之患。此膏燭之類也,火逾然而消逾亟。夫精神気志者,静而日充者以壮,躁而日耗者以老。是故聖人将養其神,和弱其気,平夷其形,而与道沈浮俛仰,恬然則縦之,迫則用之。其縦之也若委衣,其用之也若発機。如是,則万物之化無不遇,而百事之変無不応。
書き下し
今夫れ狂者の水火の難を避け溝瀆の險を越ゆる能わざるは、豈に形神氣志無からんや。然れども之を用うること異なればなり。其の守る所の位を失いて、其の外内の舍を離る。是の故に舉錯當たる能わず、動靜中る能わず、身を終うるまで枯形を連嶁列埒の門に運び、污壑阱陷の中に蹪蹈す。生きながらにして俱に人と鈞しと雖も、然れども人の戮笑と為るを免れざる者は、何ぞや。形神相い失えばなり。故に神を以て主と為す者は、形從いて利あり。形を以て制と為す者は、神從いて害あり。貪饕多欲の人は、勢利に漠歐せられ、名位に誘慕せられ、過人の智を以て高世に植えんことを冀う。則ち神は日に以て耗して彌ミ遠く、久しく淫して還らず、形閉じ中距めば、則ち神由りて入る無し。是を以て天下時に盲妄自失の患い有り。此れ膏燭の類なり。火逾ミ然えて消ゆること逾ミ亟し。夫れ精神氣志なる者は、靜かにして日に充つる者は以て壯んに、躁がしくして日に耗する者は以て老ゆ。是の故に聖人將に其の神を養い、其の氣を和弱にし、其の形を平夷にして、道と沈浮俛仰せんとす。恬然たれば則ち之を縱にし、迫れば則ち之を用う。其の之を縱にするや衣を委つるが若く、其の之を用うるや機を發するが若し。是くの如くんば、則ち萬物の化遇わざる無く、百事の變應ぜざる無し。
現代語訳
いま狂った者が水や火の難を避けられず溝の危うさを越えられないのは、形も神も気も志もないからだろうか。そうではなく、その用い方が違うからである。守るべき位を失って、外と内の宿を離れている。だから振る舞いが当たらず、動きも静けさも的を射ず、生涯枯れた体をあちこちの門に運び、汚れた谷や落とし穴の中に踏み落ちる。生きているぶんには人と同じなのに、人の笑い者になるのを免れないのはなぜか。形と神が互いを失っているからである。だから神を主とする者は、形が従って利がある。形を主とする者は、神が従って害がある。貪って欲の多い人は、勢いと利に駆り立てられ、名と位に誘われ、人並み外れた知恵で世に高く立とうと願う。すると神は日ごとに減ってますます遠ざかり、長く溺れて帰らず、形が閉じ内が塞がれば、神が入る道がなくなる。だから世にはときどき、目がくらんで自分を失う患いがある。これは蝋燭のたぐいである。火が燃えるほど、消えるのが早い。そもそも精神と気と志は、静かにして日ごとに満ちる者は盛んになり、騒がしくて日ごとに減る者は老いる。だから聖人はその神を養い、その気を和らげ弱くし、その形を平らかにして、道とともに沈み浮かび伏し仰ごうとする。安らかなときは放っておき、迫れば用いる。放っておくときは衣を脱ぎ捨てるようで、用いるときは仕掛けを放つようである。だから万物の変化に出会えないことがなく、百事の変化に応じられないことがない。
解説
この章句が説くこと
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