長短経 / 料敵
敵來新到、行陣未定、可擊也。陣雖定、人馬未食、可擊也。涉長道、後行未息、可擊也。行坂涉險、半隠半出、可擊也。涉水半渡、可擊也。險道狹路、可撃也。旌旗亂動、可擊也。陣數動移、可擊也。人馬數顧、可撃也。凡見此者、擊之而勿疑。然兵者、詭道也。能而示之不能、用而示之不用。故匈奴示弱、漢祖有平城之圍、石勒藏鋒、王浚有幽州之陷。即其效也、可不慎哉!
新字:敵来新到、行陣未定、可撃也。陣雖定、人馬未食、可撃也。渉長道、後行未息、可撃也。行坂渉険、半隠半出、可撃也。渉水半渡、可撃也。険道狭路、可撃也。旌旗乱動、可撃也。陣数動移、可撃也。人馬数顧、可撃也。凡見此者、撃之而勿疑。然兵者、詭道也。能而示之不能、用而示之不用。故匈奴示弱、漢祖有平城之囲、石勒蔵鋒、王浚有幽州之陥。即其効也、可不慎哉!
書き下し
敵来たりて新たに到り、行陣未だ定まらざるは、撃つべきなり。陣定まると雖も、人馬未だ食わざるは、撃つべきなり。長道を渉りて、後行未だ息わざるは、撃つべきなり。坂を行き険を渉り、半ば隠れ半ば出づるは、撃つべきなり。水を渉りて半ば渡るは、撃つべきなり。険道狭路は、撃つべきなり。旌旗乱れ動くは、撃つべきなり。陣数々動移するは、撃つべきなり。人馬数々顧みるは、撃つべきなり。凡そ此を見る者は、之を撃ちて疑うこと勿かれ。然れども兵なる者は、詭道なり。能にして之に不能を示し、用いて之に用いざるを示す。故に匈奴弱きを示して、漢祖に平城の囲み有り。石勒鋒を蔵して、王浚に幽州の陥り有り。即ち其の效なり。慎まざるべけんや。
現代語訳
敵が到着したばかりで隊列がまだ定まらないときは撃てる。陣が定まっても人馬がまだ食事をしていないときは撃てる。長い道のりを来て後続がまだ休んでいないときは撃てる。坂を行き険しい所を越えて、半分隠れ半分出ているときは撃てる。川を半分渡ったときは撃てる。険しく狭い道にいるときは撃てる。旗が乱れ動いているときは撃てる。陣がたびたび移動しているときは撃てる。人馬がしきりに振り返っているときは撃てる。これらを見たら、疑わずに撃て。しかし兵とは欺く道である。できるのにできないように見せ、用いるのに用いないように見せる。だから匈奴が弱いふりをして、漢の高祖は平城で包囲された。石勒が鋭い刃を隠して、王浚は幽州を落とされた。これがその証である。慎まずにいられようか。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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孫子・始計篇兵とは詭道なり。
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孫子・始計篇能くしてこれを不能と示し、用いてこれを不用と示し、近くしてこれを遠しと示し、遠くしてこれを近しと示す。
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孫子・始計篇利にしてこれを誘い、乱にしてこれを取り、実にしてこれに備え、強にしてこれを避け、怒にしてこれを撓し、卑にしてこれを驕らしめ、佚にしてこれを労し、親にしてこれを離す。
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孫子・行軍篇兵怒りて相迎え、久しくして合わず、又相去らざるは、必ず謹んでこれを察すべし。
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孫子・行軍篇敵近くして静かなる者は、其の険を恃むなり。遠くして戦いを挑む者は、人の進むを欲するなり。其の居る所の易なる者は、利あればなり。
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『長短経』料敵辞卑くして備えを益す者は、進むなり〔敵備えを増すなり〕。辞強くして進駆する者は、退くなり。約無くして和を請う者は、謀るなり。半ば進み半ば退く者は、誘うなり。杖つきて立つ者は、饑うるなり。汲みて先ず飲む者は、渇くなり。利を見て進まざる者は、労るるなり。鳥集まる者は、虚なり。夜呼ぶ者は、恐るるなり。軍擾るる者は、将重からざるなり。旗動く者は、乱るるなり。吏怒る者は、倦むなり。粟馬食肉、軍に懸垂無く〔音は唾。一簞の食なり〕、其の舎に及ばざる者は、窮寇なり。淳淳翕翕として、徐かに言いて入入する者は、其の衆を失えるなり〔此れ将の其の衆を失うの意なり〕。数々賞する者は、害なり。数々罰する者は、困しむなり。数々顧みる者は、其の群を失うなり。来たりて委謝する者は、休息せんと欲するなり。兵怒りて相近づき、久しくして合わず、又た相去らざれば、必ず謹みて之を察せよ。