長短経 / 料敵
若欲先知敵將、當令賤而勇者、將輕鋭以嘗之。觀敵之來、一起一坐、其政以理。其追北、佯為不及、其見利、佯為不知。如此者、將必有智、勿與輕敵〔凡敵上氣黄白潤澤者、將有威徳。或軍上氣發、漸漸如雲、變作山形、將有深謀。或敵上氣外黒中赤在前者、將精悍、皆不可擊。凡氣上與天連、軍中將賢良。凡氣如龍如虎在殺中、或如火烟之形、或如火光之狀、或如山林、或如塵埃、頭大而卑、或氣紫黒如門上樓、或如白粉沸、皆猛將之氣也。〕若其衆讙旗亂、其卒自止自行、其兵或縱或横。其追北恐不及、見利恐不得。如此者、將必無謀、雖衆可獲〔凡敵上氣青而疎散者、將怯弱。前大而後小、將性不明也。〕
新字:若欲先知敵将、当令賤而勇者、将軽鋭以嘗之。観敵之来、一起一坐、其政以理。其追北、佯為不及、其見利、佯為不知。如此者、将必有智、勿与軽敵〔凡敵上気黄白潤沢者、将有威徳。或軍上気発、漸漸如雲、変作山形、将有深謀。或敵上気外黒中赤在前者、将精悍、皆不可撃。凡気上与天連、軍中将賢良。凡気如竜如虎在殺中、或如火烟之形、或如火光之状、或如山林、或如塵埃、頭大而卑、或気紫黒如門上楼、或如白粉沸、皆猛将之気也。〕若其衆讙旗乱、其卒自止自行、其兵或縦或横。其追北恐不及、見利恐不得。如此者、将必無謀、雖衆可獲〔凡敵上気青而疎散者、将怯弱。前大而後小、将性不明也。〕
書き下し
若し先ず敵の将を知らんと欲せば、当に賤にして勇なる者をして、軽鋭を将いて以て之を嘗みしむべし。敵の来たるを観るに、一起一坐、其の政以て理まり、其の北ぐるを追うに、佯りて及ばずと為し、其の利を見るに、佯りて知らずと為す。此くの如き者は、将必ず智有り。与に軽く敵すること勿かれ〔凡そ敵上の気黄白にして潤沢なる者は、将に威徳有り。或いは軍上の気発し、漸漸として雲の如く、変じて山形と作れば、将に深謀有り。或いは敵上の気外は黒く中は赤くして前に在る者は、将精悍なり。皆撃つべからず。凡そ気上天と連なれば、軍中の将賢良なり。凡そ気の龍の如く虎の如くして殺中に在り、或いは火烟の形の如く、或いは火光の状の如く、或いは山林の如く、或いは塵埃の如く、頭大にして卑く、或いは気紫黒にして門上の楼の如く、或いは白粉の沸くが如きは、皆猛将の気なり〕。若し其の衆讙しく旗乱れ、其の卒自ら止まり自ら行き、其の兵或いは縦或いは横にして、其の北ぐるを追うに及ばざるを恐れ、利を見て得ざるを恐る。此くの如き者は、将必ず謀無し。衆しと雖も獲べし〔凡そ敵上の気青くして疎散なる者は、将怯弱なり。前大にして後小なるは、将の性明らかならざるなり〕。
現代語訳
もしまず敵の将を知りたければ、身分が低く勇ましい者に軽装の精兵を率いさせて探りを入れさせるべきである。敵がやって来るのを見て、立つにも座るにも統制がとれ、逃げる者を追うときはわざと追いつけないふりをし、利を見てもわざと気づかないふりをする。このような敵の将には必ず知恵がある。軽く戦ってはならない〔敵の上の気が黄白色でつやがあれば、将に威徳がある。軍の上の気が立ち上り、少しずつ雲のようになって山の形に変われば、将に深い謀がある。敵の上の気が外は黒く中は赤く前にあれば、将は精悍である。どれも撃ってはならない。気が上って天とつながれば、軍中の将は賢く優れている。気が竜や虎のように殺気の中にあったり、火の煙や火の光のようであったり、山林や塵のようであったり、頭が大きく低かったり、紫黒色で門の上の楼閣のようであったり、白い粉が沸き立つようであれば、どれも猛将の気である〕。もし敵兵が騒がしく旗が乱れ、兵が勝手に止まったり進んだりし、隊列が縦横に乱れ、逃げる者を追うときは追いつけないのを恐れ、利を見ると取り逃すのを恐れる。このような敵の将には必ず謀がない。兵が多くても捕らえられる〔敵の上の気が青くてまばらに散っていれば、将は臆病で弱い。前が大きく後ろが小さければ、将の性格は明らかでない〕。
解説
この章句が説くこと
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呉子・応変篇武侯問いて曰く、車堅く馬良く、将勇にして兵強きも、卒かに敵人に遇い、乱れて行を失わば、則ち之を如何せん、と。起対えて曰く、凡そ戦の法は、昼は旌旗旛麾を以て節と為し、夜は金鼓笳笛を以て節と為す。左に麾けば左し、右に麾けば右す。之を鼓すれば則ち進み、之を金すれば則ち止まる。二たび吹けば行き、再び吹けば聚まる。令に従わざる者は誅す。三軍威に服し、士卒命を用うれば、則ち戦うに彊敵無く、攻むるに堅陳無し、と。
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『学問のすゝめ』十二編・演説の法を勧むるの説・視察、推究、読書、談話、著書、演説ゆえに学問の本趣意は読書のみにあらずして、精神の働きにあり。この働きを活用して実地に施すにはさまざまの工夫なかるべからず。オブセルウェーションとは事物を視察することなり。リーゾニングとは事物の道理を推究して自分の説を付くることなり。この二ヵ条にてはもとよりいまだ学問の方便を尽くしたりと言うべからず。なおこのほかに書を読まざるべからず、書を著わさざるべからず、人と談話せざるべからず、人に向かいて言を述べざるべからず、この諸件の術を用い尽くしてはじめて学問を勉強する人と言うべし。すなわち視察、推究、読書はもって智見を集め、談話はもって智見を交易し、著書、演説はもって智見を散ずるの術なり。然りしこうしてこの諸術のうちに、あるいは一人の私をもって能くすべきものありといえども、談話と演説とに至りては必ずしも人とともにせざるを得ず。演説会の要用なることもって知るべきなり。
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