長短経 / 将体
將無慮、則謀士去〔將無防慮、不能從謀、故去之。、〕將無勇、則吏士恐〔將怯、則下無所恃、故恐也。、〕將遷怒、則軍士懼。慮也、謀也、將之所重、勇也、怒也、將之所用。故曰、必死、可殺也、必生、可慮也、忿速、可悔也、亷潔、可辱也、愛人、可煩也。此五者、將軍之過、用兵之灾。
新字:将無慮、則謀士去〔将無防慮、不能従謀、故去之。、〕将無勇、則吏士恐〔将怯、則下無所恃、故恐也。、〕将遷怒、則軍士懼。慮也、謀也、将之所重、勇也、怒也、将之所用。故曰、必死、可殺也、必生、可慮也、忿速、可悔也、廉潔、可辱也、愛人、可煩也。此五者、将軍之過、用兵之災。
書き下し
将に慮り無ければ、則ち謀士去る〔将防慮無く、謀に従うこと能わず。故に之を去る〕。将に勇無ければ、則ち吏士恐る〔将怯なれば、則ち下恃む所無し。故に恐るるなり〕。将怒りを遷せば、則ち軍士懼る。慮りや、謀りや、将の重んずる所なり。勇や、怒りや、将の用うる所なり。故に曰く、必死は、殺すべきなり。必生は、虜にすべきなり。忿速は、侮るべきなり。廉潔は、辱むべきなり。人を愛するは、煩わすべきなり。此の五者は、将軍の過ちにして、用兵の災なり。
現代語訳
将に思慮がなければ謀士は去る〔将に備えの考えがなく謀を採れないので去る〕。将に勇気がなければ役人や兵は恐れる〔将が臆病なら部下は頼るものがないので恐れる〕。将が怒りを他の者に向ければ兵は恐れおののく。思慮と謀は将が重んじるもの、勇気と怒りは将が用いるものである。だから孫子は言う。死ぬ覚悟ばかりの将は殺され、生き延びることばかり考える将は捕らえられ、怒りっぽく短気な将は侮られて挑発され、清廉潔白な将は辱めて動かされ、民を愛する将は煩わされて疲れさせられる。この五つは将軍の過ちであり、兵を用いるうえでの災いである。
解説
孫子の、将の五つの危うさです。死ぬ覚悟ばかりの将は無謀に突っ込んで討たれ、生き延びることばかり考える将は捕らえられ、短気な将は挑発に乗り、潔癖な将は侮辱で動かされ、民を愛する将は民を人質に取られて疲弊させられる。興味深いのは、勇気、慎重さ、正義感、清廉、慈愛という美徳が、極端になると弱点になることです。自分の長所が、相手にとって最も突きやすい隙になっていないか確かめる必要があります。
この章句が説くこと
将体孫子五危長所と短所挑発極端
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孫子・九変篇将に五危有り。必死は殺すべきなり。必生は虜にすべきなり。忿速は侮るべきなり。廉潔は辱むべきなり。愛民は煩わすべきなり。
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『長短経』将体万機論に曰く「百万の師有りと雖も、時に臨みて敵を呑むは、将に在るなり」と。呉子曰く「凡そ人の将を論ずるは、恒に之を勇に観る。勇の将に於けるは、乃ち万分の一のみ」と。故に六韜に曰く「将仁ならざれば、則ち三軍親しまず。将勇ならざれば、則ち三軍為に動かず」と。孫子曰く「将なる者は、勇・智・仁・信・必なり」と。勇なれば、則ち犯すべからず。智なれば、則ち乱すべからず。仁なれば、則ち人を愛す。信なれば、則ち人を欺かず。必なれば、則ち二心無し。此れ所謂五才なる者なり。
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『長短経』将体故に将諫を拒めば、則ち英雄散ず。策従われざれば則ち謀士叛く。善悪同じければ、則ち功臣倦む〔賞罰明らかならず、善悪異なる無ければ、則ち功有るの臣皆懈倦するなり〕。将己を専らにすれば則ち下咎を帰す〔己を専らにして自ら任じ、下と謀らざれば、衆皆罪を将に帰して之を責む〕。将自ら臧しとすれば、則ち下功少なし〔臧は、善なり。将自ら勲を伐り、下を忘れて自ら用うる者、故に功少なしと曰うなり〕。将讒を受くれば、則ち下離心有り。将財を貪れば、則ち奸禁ぜず〔上貪れば、則ち下益々なり〕。将内顧すれば、則ち士卒淫す〔内顧は、妻妾を思うなり〕。将一有れば、則ち衆服せず。二有れば、則ち軍に試無し〔試は、法なり〕。三有れば、則ち軍乖背す。四有れば、則ち禍国に及ぶ。
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孫子・九変篇凡そ此の五者は、将の過ちなり、用兵の災いなり。軍を覆し将を殺すは、必ず五危を以てす。察せざるべからず。
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『長短経』将体故に凡そ戦いの要は、先ず其の将を占いて其の才を察す。刑に因りて権を用うれば、則ち労せずして功興る。其の将愚にして人を信ずれば、謀りて詐くべし。貪りて名を忽にすれば、貨にして賂うべし。軽変なれば、労して困しむべし。上富みて驕り、下貧しくして磔うれば、離して間すべし。将怠り士懈れば、潜みて襲うべし。智にして心緩き者は、迫るべきなり。勇にして死を軽んずる者は、暴すべきなり。急にして心速き者は、誘うべきなり。貪りて利を喜ぶ者は、襲うべきなり、遺るべきなり。仁にして人に忍びざる者は、労すべきなり。智にして心緩き者は、驚かすべきなり。信にして人に信を喜ぶ者は、誑くべきなり。廉潔にして人を愛せざる者は、侮るべきなり。剛毅にして自ら用うる者は、事うべきなり。懦心にして人に用いらるるを喜ぶ者は、人をして欺かしむべきなり。此れ皆用兵の要にして、将為るの略なり。
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『長短経』将体危うき者は之を安んじ、懼るる者は之を懽ばせ、叛く者は之を還し〔将に合わずして去る者有らば、慰誘して之を還す。蕭何の韓信を追うが若し〕、冤なる者は之を原し、訴うる者は之を察し、卑しき者は之を貴び〔士卒の卑賤なる者の若きは、之を貴ぶ。昔、呉起の下りて士卒と衣食を同じくせしは是れなり〕、強き者は之を抑え、敵する者は之を残い〔卑中に賤有りて、貴に敵する者は、上下の礼を乱す。之を残殺す〕、貪る者は之を豊かにし〔賞を懸けて以て其の心を豊かにす。貪を使う所以なり〕、欲する者は之を使い〔敵に臨みて将に戦わんとするに、功名を立てんと欲する有り、敵人を利せんと欲する有り。皆許して之を使う。所謂勇を使い貪を使うなり〕、畏るる者は之を隠し〔士卒に畏懼する所有る者は、後に隠蔽し、軍鋒と為さしむること勿かれ。軍の敗るるは鋒の怯なるに由る〕、謀る者は之に近づき、讒する者は之を覆し〔讒闘する者有らば、之を覆亡す〕、毀るる者は之を復し〔官職に毀廃する者有らば、則ち修めて之を復す〕、反する者は之を廃し、横なる者は之を挫き、服する者は之を活かし〔首めて罪に服する者は、之を活かす〕、降る者は之を説ばす〔説は、含〕。