長短経 / 地形
平原相逺〔逺、離也。、〕仰髙臨下、此弓弩之地、短兵十不當一。兩陣相近、平地淺草、可前可後、此長㦸之地、劍楯三不當一。萑葦竹簫〔簫、蒿也。、〕草木蒙蘢林葉茂接、此矛鋋之地、長㦸二不當一。曲道相伏、險阨相薄此劍楯之地、弓弩三不當一。故曰、“地形者、兵之助。”又曰、“用兵之道、地利為寳。”趙奢趨山、秦師所以覆敗、韓信背水、漢兵由其克勝。此用地利之畧也。
新字:平原相遠〔遠、離也。、〕仰高臨下、此弓弩之地、短兵十不当一。両陣相近、平地浅草、可前可後、此長戟之地、剣楯三不当一。萑葦竹簫〔簫、蒿也。、〕草木蒙蘢林葉茂接、此矛鋋之地、長戟二不当一。曲道相伏、険阨相薄此剣楯之地、弓弩三不当一。故曰、“地形者、兵之助。”又曰、“用兵之道、地利為宝。”趙奢趨山、秦師所以覆敗、韓信背水、漢兵由其克勝。此用地利之略也。
書き下し
平原相遠く〔遠は、離なり〕、高きを仰ぎ下に臨むは、此れ弓弩の地にして、短兵は十も一に当たらず。両陣相近く、平地浅草にして、前むべく後るべきは、此れ長戟の地にして、剣楯は三も一に当たらず。萑葦竹簫〔簫は、蒿なり〕、草木蒙蘢として林葉茂接するは、此れ矛鋋の地にして、長戟は二も一に当たらず。曲道相伏し、険阨相薄るは、此れ剣楯の地にして、弓弩は三も一に当たらず。故に曰く「地形なる者は、兵の助けなり」と。又た曰く「兵を用うるの道は、地利を宝と為す」と。趙奢は山に趨りて、秦の師所以に覆敗し、韓信は水を背にして、漢の兵由りて其の克勝す。此れ地利を用うるの略なり。
現代語訳
平原で互いに離れ〔遠とは離れること〕、高い所から見下ろせる地は弓や弩の地で、短い武器は十でも一に当たらない。両陣が近く、平地で草が浅く、前にも後ろにも動ける地は長い戟の地で、剣と盾は三でも一に当たらない。葦や竹やよもぎが茂り〔簫とはよもぎのこと〕、草木が覆いかぶさり林の葉が茂り合う地は矛や短い槍の地で、長い戟は二でも一に当たらない。曲がった道に伏兵ができ、険しく狭い所で迫り合う地は剣と盾の地で、弓や弩は三でも一に当たらない。だから「地形は兵の助けである」と言い、また「兵を用いる道は、地の利を宝とする」と言う。趙奢が先に山に駆け上ったので秦の軍は覆され、韓信が川を背にしたので漢の兵は勝った。これが地の利を用いるあらましである。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『長短経』地形孫子曰く「三に曰く地利。地利なる者は、遠近・険易・広狭・死生なり。故に山林・険阻・沮沢の形を知らざる者は、軍を行ること能わず。郷導を用いざれば、地利を得ること能わず。故に兵を用うるに、散地有り、軽地有り、争地有り、交地有り、衢地有り、重地有り、汜地有り、囲地有り、死地有り〔九地の名なり〕。諸侯自ら其の地に戦うを、散地と為す〔其の境内の地に戦えば、士卒の意専らならず、自ら潰ゆるの心有るなり。故に経に曰く、散地は、吾将に其の志を一にせんとす、と〕。人の地に入りて深からざる者を、軽地と為す〔人の地に入りて未だ深からざれば、士卒の意尚お未だ専らならずして、軽く走るなり。故に経に曰く、軽地は、吾将に之をして属せしめんとす、と〕。
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『長短経』地形我得れば則ち利あり、彼得るも亦た利ある者を、争地と為す〔少を以て衆に勝ち、弱を以て強に勝つべし。山水の阨口、険固の利有りて、両敵の争う所を謂う。故に経に曰く、争地は、吾将に其の後に趣かんとす、と〕。我以て往くべく、彼以て来たるべきを、交地と為す〔道上相交錯し、平地に数道有りて、往来交通し、絶つべき無きなり。故に経に曰く、交地は、吾将に其の結を固めんとす、と〕。諸侯の地三属し〔我と敵と相対して、旁に他国有るなり〕、先に至りて天下の衆を得る者を、衢地と為す〔先に其の地に至らば、諸侯の衆を交結して助けと為すべきなり。故に経に曰く、衢地は、吾将に其の守りを謹まんとす、と〕。
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孫子・地形篇孫子曰く、凡そ地形には通なる者、掛なる者、支なる者、隘なる者、険なる者、遠なる者あり。我も以て往くべく、彼も以て来たるべきを、通と曰う。通形には、先ず高陽に居り、糧道を利にして、以て戦えば則ち利あり。
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孫子・九変篇孫子曰く、凡そ兵を用うるの法は、将、命を君より受け、軍を合し衆を聚む。圮地には舍せず、衢地には交を合し、絶地には留まらず、囲地には則ち謀り、死地には則ち戦ふ。途に由らざる所有り、軍に撃たざる所有り、城に攻めざる所有り、地に争はざる所有り、君命に受けざる所有り。
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孫子・行軍篇斥沢を絶つには、惟だ亟やかに去りて留まること無かれ。若し軍を斥沢の中に交うれば、必ず水草に依りて衆樹を背にす。此れ斥沢に処るの軍なり。平陸には易きに処りて、右に高きを背にし、前は死し後は生く。此れ平陸に処るの軍なり。凡そ此の四軍の利は、黄帝の四帝に勝ちし所以なり。
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『長短経』地形人の反り難きの地に入ること深く、城邑に倍くこと多き者を、重地と為す〔遠く己が城郭を去りて深く敵地に入れば、心意を専らにす。故に之を重地と謂う。故に経に曰く、重地は、吾将に其の食を継がんとす、と〕。山林・険阻・沮沢を行き、凡そ行き難きの道なる者を、汜地と為す〔汜は、浸洳の地なり。故に経に曰く、汜地は、我将に其の途を進めんとす、と〕。由りて入る所の者隘く、従りて帰る所の者迂にして、彼寡にして以て吾が衆を撃つべき者を、囲地と為す〔入らんと欲する所は阨険、帰らんと欲する道は遠きなり。久しきを持すれば則ち糧乏し。故に敵は少を以て吾が衆を撃つべき者なり。囲地と為す。故に経に曰く、囲地は、吾将に其の闕を塞がんとす、と〕。