長短経 / 天時
〔諸謀立武事、征伐四方、興兵動衆、忌大風雷雨、隂不見日。辰午酉亥、自刑之日。夫牙旗者、將軍之精。凡竪牙旗、必以制日。制日者、謂上尅下也。初立牙門、禡之曰、“兩儀有正、四海有王、寳命在天、世徳彌光。蕞爾凶狡、敢謀亂常、天子命我、秉鉞專征。爰整其旅、討兹不庭。夫天道助順、神祗害傾使凶醜時殱海隅聿清。兵不血刃、凱歸上京。神氣増輝、永觀厥成。寔正直之賴、凡乃神之靈、急急如律令。”凡氣初出如甑上氣、勃勃上昇、氣積為霧、霧為隂、隂氣結為虹蜺暈珥之屬。凡氣不積不結、散漫一方、不能為灾。必和雜殺氣、森森然疾起、乃可。論占、常以平旦、下晡、日出没時候之、期内有風雨、灾不成也。〕若風不旁勃、旌旗暈暈、順風而揚舉、或向敵終日、軍行有功、勝候也。
新字:〔諸謀立武事、征伐四方、興兵動衆、忌大風雷雨、陰不見日。辰午酉亥、自刑之日。夫牙旗者、将軍之精。凡竪牙旗、必以制日。制日者、謂上尅下也。初立牙門、禡之曰、“両儀有正、四海有王、宝命在天、世徳弥光。蕞爾凶狡、敢謀乱常、天子命我、秉鉞専征。爰整其旅、討茲不庭。夫天道助順、神祗害傾使凶醜時殱海隅聿清。兵不血刃、凱帰上京。神気増輝、永観厥成。寔正直之頼、凡乃神之霊、急急如律令。”凡気初出如甑上気、勃勃上昇、気積為霧、霧為陰、陰気結為虹蜺暈珥之属。凡気不積不結、散漫一方、不能為災。必和雑殺気、森森然疾起、乃可。論占、常以平旦、下晡、日出没時候之、期内有風雨、災不成也。〕若風不旁勃、旌旗暈暈、順風而揚舉、或向敵終日、軍行有功、勝候也。
書き下し
〔諸々武事を立て、四方を征伐し、兵を興し衆を動かさんと謀るには、大風雷雨、陰にして日を見ざるを忌む。辰午酉亥は、自刑の日なり。夫れ牙旗なる者は、将軍の精なり。凡そ牙旗を竪つるには、必ず制日を以てす。制日なる者は、上下を剋するを謂うなり。初めて牙門を立つるに、之を禡して曰く「両儀に正有り、四海に王有り。宝命は天に在り、世徳弥々光る。蕞爾たる凶狡、敢えて乱常を謀る。天子我に命じ、鉞を秉りて専ら征せしむ。爰に其の旅を整え、茲の不庭を討つ。夫れ天道は順を助け、神祇は傾を害す。凶醜をして時に殲きしめ、海隅聿に清からしめよ。兵は刃に血ぬらず、凱して上京に帰らん。神気輝きを増し、永く厥の成るを観ん。寔に正直の頼み、凡そ乃ち神の霊。急急なること律令の如くせよ」と。凡そ気の初めて出づるは甑上の気の如く、勃勃として上昇す。気積もりて霧と為り、霧は陰と為り、陰気結びて虹蜺暈珥の属と為る。凡そ気積もらず結ばず、一方に散漫すれば、災を為すこと能わず。必ず殺気に和雑し、森森然として疾く起こりて、乃ち可なり。占いを論ずるに、常に平旦・下晡・日の出没の時を以て之を候う。期内に風雨有らば、災成らざるなり。〕若し風旁勃せず、旌旗暈暈として、順風に揚挙し、或いは敵に向かうこと終日なれば、軍行きて功有り。勝候なり。
現代語訳
〔武事を立て、四方を征伐し、兵を起こし人を動かそうとするときは、大風や雷雨、曇って日が見えない日を避ける。辰・午・酉・亥は自刑の日である。大将旗は将軍の精神である。大将旗を立てるには必ず制日を用いる。制日とは、上が下に勝つ日のことである。初めて陣門を立てるときは祭って言う。「天地には正しさがあり、四海には王がある。尊い天命は天にあり、代々の徳はますます輝く。ちっぽけな凶悪の輩が、あえて秩序を乱そうとしている。天子は私に命じ、鉞を取ってもっぱら征伐させる。そこで軍を整え、この従わぬ者を討つ。天の道は順う者を助け、神々は傾く者を害する。凶悪な者をすぐに滅ぼし、海の隅まで清めたまえ。兵は刃を血で汚さず、凱旋して都に帰る。神の気は輝きを増し、永くその成就を見守りたまえ。まことに正直を頼みとし、すべては神の霊による。律令のごとく速やかに」。気が初めて出るときは甑の上の湯気のように勢いよく上り、気が積もると霧になり、霧は陰となり、陰の気が結ぶと虹や日月のかさなどになる。気が積もらず結ばず一方に散らばっていれば、災いにはならない。必ず殺気と混じり、ぞくぞくと速く起こってはじめて兆しとなる。占うときは、いつも夜明け、夕方、日の出と日の入りに観察する。期限内に風雨があれば、災いは起こらない。〕もし風が乱れて吹かず、旗がゆったりとなびき、追い風に翻り、あるいは一日中敵の方を向いていれば、軍を進めて功がある。これは勝ちの兆しである。
解説
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『長短経』天時若し細雨軍を沐せば、機に臨みて必ず捷有り。迴風相触るれば、道還りて功無し。雲の群羊に類するは、必ず走るの道なり。気の驚鹿の如きは、必ず敗るるの勢いなり。黒雲塁より出で、赤気軍に臨み、六窮に風起こり、三刑に霧起こるは、此れ皆師の出づるを見て其の入るを見ざるなり。烟の若くして烟に非ざるは、此れ慶雲なり。星の若くして星に非ざるは、此れ帰邪なり。霧の若くして霧に非ざるは、此れ泣軍なり。雷の若くして雷に非ざるは、此れ天鼓なり。慶雲開けば、徳有り。帰邪あれば、降人有り。泣軍あれば、多く将を殺す。天鼓あれば、多く軍を敗る。是に知る、風雲の占い、歳月の候、其の来たること久し。故に古は初めて将を立て、始めて門を出でて首めて牙を建つるの時、必ず風雲の気を観る。
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『長短経』天時若し下其の将を軽んじ、妖怪並び作り、衆口相惑わば、当に徳を修め令を審らかにし、鋒甲を繕礪し、勤めて誠に士に誓い、以て天の怒りを避くべし。然る後に復た吉日を択び、牙旗を祭り、太牢の饌を具え、鼓鐸の音を震わし、誠心に啓請して、以て天の問いに備え、其の祥応を観て、以て吉凶を占う。若し人馬喜び躍り、旌旗皆前みて高陵を指し、金鐸の声揚がりて以て清く、鞞鼓の音宛として以て鳴らば、此れ神明の助けを得たり。持して以て衆心を安んずれば、乃ち用うべし。
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『長短経』天時〔凡そ軍上の気の山堤上の林木の如きは、与に戦うべからず。我が軍に在れば大いに勝つ。或いは火光の如きも、亦た大いに勝つ。或いは敵上の白気粉拂として楼の如く、縁るに赤気を以てする者は、兵勁くして撃つべからず。吾が軍に在れば必ず大いに勝つ。或いは敵上の気黄白にして厚潤にして重き者は、与に戦うこと勿かれ。或いは雲の広さ三匹の帛の如き有れば、前後の大軍の行き好し。遥かに軍上の雲の闘鶏の如く赤白相随うを望めば、気中に在りて天の助けを得、撃つべからず。両軍相当たるに、上に気の蛇の如く、頭を挙げて敵に向かう者有れば、戦えば必ず勝つ。凡そ軍営の上に五色の気有りて、上天と連なれば、此れ天に応ずるの軍、撃つべからず。赤黄の気の天を干す有らば、亦た攻むべからず。或いは雲の日月の如くにして、赤気之を繞り、日暈の状の如く、光有る者有らば、見る所の地は大いに勝つ。攻むべからず。敵上の気の暈の状の如きは、其の軍攻むべからず。此れ皆勝気なり。〕
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『長短経』天時若し逆風来たり応じ、気旁勃し、牙杠折れ、陰にして日を見ず、旌幡激揚すれば、敗候なり。〔若し雲気敵の所より来たりて、終日止まざれば、軍出づべからず。出づれば則ち利あらず。若し風気俱に来たらば、此れ敗候と為し、急撃するに在るなり。凡そ敵上の気色の馬肝の如く、死灰の如く、或いは偃蓋に類するは、皆敗徴なり。或いは黒気の環山の如く、軍に随いて上る者は、軍必ず敗る。或いは軍上の気昏発して、夜に連なりて人を照らせば、則ち軍事散乱す。或いは軍上の気半ばにして、一たび絶ゆれば一たび敗れ、再び絶ゆれば再び敗る。東に在りて白気を発する者は、災深し。或いは軍上の気五色雑乱し、東西南北定まらざる者は、其の軍敗れんと欲す。或いは軍上に赤気炎炎として天より降る有らば、将死し衆乱る。或いは軍上に黒気の牛馬の形なる有りて、気霧の中より下りて漸く軍に入らば、名づけて天狗下りて血を食うと曰う。敗軍なり。或いは雲気の道を蓋い、濛蔽して昼冥き有らば、炊ぎを釈きて熟するに暇あらず、急ぎ去れ。此れ皆敗候なり。〕
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『長短経』天時賢に任じ能を使えば、則ち占わずして事利あり。令明らかに法審らかなれば、則ち筮せずして計成る。功を封じ労を賞すれば、則ち禱らずして福従う。苦を共にし甘を同じくすれば、則ち逆を犯して功就ると云うと雖も、然り而して機に臨み用を制するに、五助有り。一に曰く謀を助く。二に曰く勢いを助く。三に曰く怯を助く。四に曰く疑を助く。五に曰く地を助く。此の五者は、勝ちを助くるの術なり。故に曰く「地を知り天を知らば、勝ち乃ち全うすべし」と。審らかに察せざるべからざるなり。
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『長短経』出軍夫れ兵なる者は、凶器なり。戦いなる者は、危事なり。兵戦の場は、尸を立つるの所なり。帝王已むを得ずして之を用う。〔凡そ天に白雲の匹布の如くして丑未を経る者有らば、天下兵多し。赤き者は尤も甚だし。或いは雲の匹布の如くして天を竟る有り、或いは雲の胡人の行列の陣の如き有らば、皆天下兵多し。或いは子の日に於いて四望に雲無く、独り赤雲の旌旗の如きを見れば、天下兵起こる。若し四方に遍ければ、天下尽く兵あり。或いは四望に雲無く、独り黒雲の天を極むるを見れば、亦た天下兵起こる。三日の内に雨有らば、災解く。或いは赤雲赫然たる者有らば、見る所の地に、兵大いに起こる。凡そ白雲の仙人の衣の如く、千万連結し、部隊相逐い、罷みて復た興る有らば、当に千里の兵有るべし。或いは人の刀楯を持つが如き有らば、此れ暴兵の気なり。或いは白気の広さ六丈、東西天を竟る者有らば、亦た兵起こるなり。青き者は、大喪有るなり。〕