長短経 / 禁令
若變易姓名、衣服不鮮、金鼓不具、兵刃不磨、器仗不堅、矢不著羽、弓弩無絃主者吏士、法令不從、此謂「欺軍」。〔有此者、斬之。〕聞鼓不行、叩金不止、按旗不伏、舉旗不起、指麾不隨、避前在後、縱發亂行、折兵弩之勢、却退不鬬。或左或右、扶傷舉死、因託歸還、此謂「背軍」。〔有此者、斬之。〕
新字:若変易姓名、衣服不鮮、金鼓不具、兵刃不磨、器仗不堅、矢不著羽、弓弩無絃主者吏士、法令不従、此謂「欺軍」。〔有此者、斬之。〕聞鼓不行、叩金不止、按旗不伏、舉旗不起、指麾不随、避前在後、縦発乱行、折兵弩之勢、却退不闘。或左或右、扶傷舉死、因託帰還、此謂「背軍」。〔有此者、斬之。〕
書き下し
若し姓名を変易し、衣服鮮やかならず、金鼓具わらず、兵刃磨かず、器仗堅からず、矢に羽を著けず、弓弩に絃無く、主者吏士、法令に従わざる、此を欺軍と謂う〔此れ有る者は、之を斬る〕。鼓を聞きて行かず、金を叩きて止まらず、旗を按えて伏せず、旗を挙げて起たず、指麾に随わず、前を避けて後に在り、縦に発して行を乱し、兵弩の勢いを折り、却退して闘わず。或いは左し或いは右し、傷を扶け死を挙げ、因りて託して帰還する、此を背軍と謂う〔此れ有る者は、之を斬る〕。
現代語訳
姓名を偽る、衣服が整っていない、鉦や太鼓がそろわない、刃を研がない、武器が堅固でない、矢に羽をつけない、弓や弩に弦がない、責任者や兵が法令に従わない。これを欺軍という〔これがある者は斬る〕。太鼓を聞いても進まない、鉦を打っても止まらない、旗を下げても伏せない、旗を上げても立たない、指揮に従わない、前を避けて後ろにいる、勝手に矢を放って隊列を乱す、武器や弩の勢いをくじく、退いて戦わない。左へ行ったり右へ行ったり、負傷者を助け死者を担ぐことにかこつけて帰ってしまう。これを背軍という〔これがある者は斬る〕。
解説
欺は、見かけを取り繕って中身を整えない行為です。名前を偽り、武器を研がず、矢に羽をつけず、弦のない弓を持つ。準備ができているふりをして実際は使いものにならない。背は、指揮に従わない行為です。合図を聞いても動かず、前に出るのを避け、負傷者を助けるという正当な理由にかこつけて戦場を離れる。見せかけの準備と、もっともらしい理由での持ち場放棄は、組織を内側から弱らせる代表的な行動です。
この章句が説くこと
禁令欺瞞指揮系統準備不足言い訳規律
関連する章句
-
孫子・九変篇故に兵を用うるの法は、其の来たらざるを恃む無く、吾に以て之を待つ有るを恃む。其の攻めざるを恃む無く、吾に攻むべからざる所有るを恃むなり。
-
孫子・行軍篇凡そ軍は高きを好みて下きを悪み、陽を貴びて陰を賤しみ、生を養いて実に処る。軍に百疾無し、是を必勝と謂う。
-
孫子・九地篇能く士卒の耳目を愚にして、之をして知ること無からしむ。其の事を易え、其の謀を革めて、人をして識ること無からしむ。其の居を易え、其の途を迂にして、人をして慮ることを得ざらしむ。
-
『学問のすゝめ』四編・学者の職分を論ず・火をもって火を救うがごとし人あるいはいわく、「政府はしばらくこの愚民を御するに一時の術策を用い、その智徳の進むを待ちて後にみずから文明の域に入らしむるなり」と。この説は言うべくして行なうべからず。わが全国の人民、数千百年専制の政治に窘しめられ、人々その心に思うところを発露すること能わず、欺きて安全を偸み、詐りて罪を遁れ、欺詐術策は人生必需の具となり、不誠不実は日常の習慣となり、恥ずる者もなく怪しむ者もなく、一身の廉恥すでに地を払いて尽きたり、あに国を思うに遑あらんや。政府はこの悪弊を矯めんとしてますます虚威を張り、これを嚇しこれを叱し、強いて誠実に移らしめんとして、かえってますます不信に導き、その事情あたかも火をもって火を救うがごとし。
-
孫子・始計篇兵とは詭道なり。
-
孫子・始計篇能くしてこれを不能と示し、用いてこれを不用と示し、近くしてこれを遠しと示し、遠くしてこれを近しと示す。