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長短経 / 詭信

使臣信如尾生、亷如伯夷、孝如曽參、三者天下之髙行、而以事王、可乎?”燕王曰、“可也。”蘇秦曰、“有此臣、亦不事主矣。孝如曽參、義不離其親、宿昔於外、王又安得使之歩行千里而事弱燕之危王哉?亷如伯夷、義不為孤竹君之嗣、不肯為武王之臣、不受封侯、而餓死於首陽之下。有亷如此者、王又安能使之歩行千里、而進取於齊哉?信如尾生、與女子期於梁柱之下、女子不來、水至不去、抱梁柱而死。有信如此、何肯揚燕、秦之威、却齊之强兵哉〔韓子曰、“夫許由、續牙、卞隨、務光、伯夷、叔齊、此數人者、皆見利不喜、臨難不恐。夫見利不喜、雖厚賞無以勸之、臨難不恐、雖嚴刑無以威之。此謂不令之人、先古聖王、皆不能臣。當今之代、将安用之?”。〕

新字:使臣信如尾生、廉如伯夷、孝如曽参、三者天下之高行、而以事王、可乎?”燕王曰、“可也。”蘇秦曰、“有此臣、亦不事主矣。孝如曽参、義不離其親、宿昔於外、王又安得使之歩行千里而事弱燕之危王哉?廉如伯夷、義不為孤竹君之嗣、不肯為武王之臣、不受封侯、而餓死於首陽之下。有廉如此者、王又安能使之歩行千里、而進取於斉哉?信如尾生、与女子期於梁柱之下、女子不来、水至不去、抱梁柱而死。有信如此、何肯揚燕、秦之威、却斉之強兵哉〔韓子曰、“夫許由、続牙、卞随、務光、伯夷、叔斉、此数人者、皆見利不喜、臨難不恐。夫見利不喜、雖厚賞無以勧之、臨難不恐、雖厳刑無以威之。此謂不令之人、先古聖王、皆不能臣。当今之代、将安用之?”。〕

書き下し

臣をして信なること尾生の如く、廉なること伯夷の如く、孝なること曽参の如くならしめば、三者は天下の高行なり。而して以て王に事えば、可ならんか」と。燕王曰く「可なり」と。蘇秦曰く「此の臣有らば、亦た主に事えず。孝なること曽参の如くならば、義として其の親を離れて外に宿昔せず。王又た安んぞ之をして歩行千里にして弱燕の危王に事えしむるを得んや。廉なること伯夷の如くならば、義として孤竹君の嗣と為らず、武王の臣と為るを肯んぜず、封侯を受けずして、首陽の下に餓死す。廉なること此くの如き者有らば、王又た安んぞ能く之をして歩行千里にして、斉に進取せしめんや。信なること尾生の如くならば、女子と梁柱の下に期し、女子来たらず、水至るも去らず、梁柱を抱きて死す。信なること此くの如き有らば、何ぞ肯えて燕・秦の威を揚げ、斉の強兵を却けんや〔韓子曰く「夫れ許由・続牙・卞随・務光・伯夷・叔斉、此の数人の者は、皆利を見て喜ばず、難に臨みて恐れず。夫れ利を見て喜ばざれば、厚賞と雖も以て之を勧むる無し。難に臨みて恐れざれば、厳刑と雖も以て之を威す無し。此れ不令の人と謂う。先古の聖王も皆臣とすること能わず。当今の代、将た安んぞ之を用いん」と〕。

現代語訳

もし私が尾生のように信義に厚く、伯夷のように清廉で、曽参のように孝行だったとしたら、この三つは天下の高い行いです。それで王に仕えたら、よろしいでしょうか」。燕王は「よい」と言った。蘇秦は言った。「そんな臣がいたら、主君に仕えたりしません。曽参のように孝行なら、義として親から離れて一晩も外に泊まりません。王はどうしてその者に千里を歩かせて、弱い燕の危うい王に仕えさせられましょう。伯夷のように清廉なら、義として孤竹君の跡継ぎにもならず、武王の臣になることも承知せず、封侯も受けずに首陽山のふもとで餓死します。これほど清廉な者がいたら、王はどうしてその者に千里を歩かせて斉から城を取り返させられましょう。尾生のように信義に厚ければ、女と橋の柱の下で会う約束をして、女が来ず、水が満ちてきても去らず、柱を抱いて死にます。これほど信義に厚い者が、どうして燕と秦の威を揚げ、斉の強兵を退けたりしましょう〔韓非子は言う。「許由・続牙・卞随・務光・伯夷・叔斉、この人々は皆、利を見ても喜ばず、難に臨んでも恐れない。利を見て喜ばないなら、厚い賞でも励ませない。難に臨んで恐れないなら、厳しい刑でも脅せない。これを使えない人という。昔の聖王も皆臣下にできなかった。今の世でどうして用いられようか」〕。

解説

蘇秦は、世間が称える三つの美徳を持つ人物は、王の役に立たないと論じます。孝行な曽参は親元を離れない。清廉な伯夷は王に仕えることすら拒む。約束を守る尾生は、来ない女を待って溺れ死ぬ。完璧な徳を持つ人は、自分の徳を守ることが目的なので、主君のために危険を冒したり、駆け引きしたりしない。韓非子も、賞にも罰にも動じない人は使えないと言う。組織が求める人材と、世間が称える聖人は、必ずしも同じではないのです。

この章句が説くこと

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