長短経 / 懼戒
彗星夕出、蝗蟲數起、此萬世一時、而愁勞聖人之所起也。故吳王内欲以晁錯為討、外隨大王後車、彷徉天下、所鄉〔音向〕者降、所指者下、天下莫敢不服。大王誠幸而許之一言、則吳王帥楚王畧函谷闗、守滎陽敖倉之粟、距漢兵。治次舍、須大王有幸而臨之、則天下可并、兩主分割、不亦可乎?」王曰、「善。」七國皆反、兵敗伏誅。
新字:彗星夕出、蝗虫数起、此万世一時、而愁労聖人之所起也。故呉王内欲以晁錯為討、外随大王後車、彷徉天下、所郷〔音向〕者降、所指者下、天下莫敢不服。大王誠幸而許之一言、則呉王帥楚王略函谷関、守滎陽敖倉之粟、距漢兵。治次舎、須大王有幸而臨之、則天下可并、両主分割、不亦可乎?」王曰、「善。」七国皆反、兵敗伏誅。
書き下し
彗星夕べに出で、蝗虫数々起こる。此れ万世の一時にして、愁労は聖人の起こる所なり。故に呉王は内に晁錯を以て討と為さんと欲し、外に大王の後車に随いて、天下に彷徉し、郷う所の者は降り、指す所の者は下り、天下敢えて服せざるは莫からん。大王誠に幸いにして之を一言に許さば、則ち呉王は楚王を帥いて函谷関を略し、滎陽敖倉の粟を守り、漢兵を距ぎ、次舎を治めて、大王の幸いにして之に臨むを須たん。則ち天下并すべく、両主分割す。亦た可ならずや」と。王曰く「善し」と。七国皆反し、兵敗れて誅に伏す。
現代語訳
彗星が夕方に現れ、蝗が何度も発生しています。これは万世に一度の時であり、民の苦しみは聖人が起こるきっかけです。だから呉王は、内には晁錯を討つことを名目にし、外には大王の車の後に従って天下を巡りたいのです。向かうところは降り、指すところは落ち、天下に従わない者はいないでしょう。大王がもし一言お許しくだされば、呉王は楚王を率いて函谷関を攻め取り、滎陽の敖倉の穀物を守って漢の兵を防ぎ、宿営を整えて大王のおいでを待ちます。そうすれば天下を併せ、二人の主で分け合えます。よいではありませんか」。膠西王は「よし」と言った。七国は皆反乱を起こしたが、兵は敗れて誅に伏した。
解説

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『長短経』懼戒王曰く「然り、之有り。子将に奈何せん」と。高曰く「悪を同じくすれば相助け、好を同じくすれば相留め、情を同じくすれば相成し、欲を同じくすれば相趨き、利を同じくすれば相死す。今、呉王は自ら以為えらく大王と憂いを同じくすと。願わくは時に因り理に循い、軀を棄てて以て患害を天下に除かん。抑も亦た可ならんか」と。王矍然として駭きて曰く「寡人何ぞ敢えて是くの如くせん。今、主急なりと雖も、固より死有るのみ。安んぞ戴かざるを得ん」と。高曰く「御史大夫晁錯、天子を熒惑し、諸侯を侵奪し、忠を蔽い賢を塞ぎ、朝廷疾怨し、諸侯皆背叛の意有り。人事極まれり。
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『長短経』懼戒呉王濞、子の故を以て朝せず〔孝文帝の時、呉の太子入朝し、皇太子に侍して飲博し、道を争いて恭しからず。皇太子、博局を引きて呉の太子に投じ、之を殺す〕。削地の書至るに及び、是に於て乃ち中大夫応高をして膠西王を誂わしむ。文書無く、口もて報じて曰く「呉王不肖にして、宿夕の憂い有り。敢えて自ら外にせず、其の歓心を喩さしむ」と。王曰く「何を以てか之を教えん」と。高曰く「今者、主上は姦雄に興り、邪臣に飾られ、小善を好み、讒賊を聴き、擅に律令を変更し、諸侯の地を侵奪し、徴求滋々多く、良善を誅罰すること、日に以て益々甚だし。語に之有りて曰く『糠を舐めて米に及ぶ』と。呉と膠西とは、名を知らるる諸侯なり。一時に察せられて、恐らくは安肆なるを得ざらん。呉王は身に内病有りて、朝請すること能わざること二十余年、常に疑われて以て自ら白す無きを患う。今、肩を脅し足を累ぬるも、猶お釈されざらんことを懼る。竊かに聞く、大王は爵事を以て謫有り、と。聞く所の諸侯の削地は、罪此に至らず。此れ恐らくは地を削らるるを得るのみならざらん」と。
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史記 呉王濞列伝呉と膠西とは、名を知らるる諸侯なり。一時に察せらるれば、恐らくは安肆するを得ざらん。呉王身に内病有り、朝請する能はざること二十余年、嘗て疑はるるを患ふるも、以て自ら白す無し。今肩を脅め足を累ぬるも、猶ほ釈かれざるを懼る。竊かに聞く、大王爵事を以て適有りと。聞く所の諸侯の地を削らるるは、罪此に至らず。此れ恐らくは地を削らるるを得るのみならざらん」と。王曰く、「然り。之有り。子将に奈何せんとす」と。高曰く、「悪を同じくするは相助け、好を同じくするは相留め、情を同じくするは相成し、欲を同じくするは相趨り、利を同じくするは相死す。今呉王自ら以為へらく大王と憂を同じくすと。願はくは時に因り理に循ひ、軀を棄てて以て患害を天下より除かん。億ふに亦可ならんか」と。王瞿然として駭きて曰く、「寡人何ぞ敢へて是の如くせん。今主上急なりと雖も、固より死有るのみ。安んぞ戴かざるを得ん」と。高曰く、「御史大夫晁錯、天子を熒惑し、諸侯を侵奪し、忠を蔽ひ賢を塞ぎ、朝廷疾み怨み、諸侯皆倍畔の意有り。人事極まれり。彗星出で、蝗虫数々起こる。此れ万世の一時にして、愁労は聖人の起こる所以なり。故に呉王内は晁錯を以て討を為し、外は大王の後車に随ひ、天下に彷徉し、郷ふ所の者は降り、指す所の者は下り、天下敢へて服せざるは莫からんと欲す。大王誠に幸ひにして之に一言を許さば、則ち呉王楚王を率ゐて函谷関を略し、滎陽敖倉の粟を守り、漢兵を距がん。次舎を治めて、大王を須たん。大王幸ひにして之に臨む有らば、則ち天下并すべく、両主分割せん。亦可ならずや」と。王曰く、「善し」と。高帰りて呉王に報ず。呉王猶ほ其の与せざるを恐れ、乃ち身自ら使と為り、膠西に使ひして、面して之と結ぶ。膠西の群臣或いは王の謀を聞き、諫めて曰く、「一帝を承くるは、至楽なり。今大王呉と西に郷ふ。弟令ひ事成るとも、両主分争し、患乃ち始めて結ばん。諸侯の地は漢郡の什の二と為すに足らず。而して畔逆を為して以て太后を憂へしむるは、長策に非ざるなり」と。王聴かず。
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『長短経』懼戒夫れ鋭気は険塞に挫け、而して糧食は内蔵に竭き、百姓罷極して、怨望依倚する所無し。臣を以て之を料るに、其の勢い天下の聖賢に非ずんば、固より天下の禍を息むること能わず。当今、両主の命は足下に懸かる。足下漢の為にすれば則ち漢勝ち、楚に与すれば則ち楚勝つ。臣願わくは腹心を披き、肝胆を輸し、愚計を効さん。恐らくは足下用いざらん。誠に能く臣の計を聴かば、両つながら利して俱に之を存し、天下を三分し、鼎足して居るに若くは莫し。其の勢い敢えて先に動く莫し。夫れ足下の賢聖を以て、甲兵の衆有り、強斉に拠り、燕・趙を従え、空虚の地に出でて其の後を制し、民の欲に因りて、西に嚮かいて百姓の為に命を請わば、則ち天下風のごとく起こりて響応せん。孰か敢えて聴かざらん。大を割き強を弱めて、以て諸侯を立て、諸侯已に立たば、天下服聴して徳を斉に帰せん。斉の故を案じ、膠・泗の地を有ち、諸侯を懐くるに徳を以てし、深く拱して揖譲せば、則ち天下の君王相率いて斉に朝せん。蓋し聞く、天与うるに取らずんば、反りて其の咎を受け、時至りて行わずんば、反りて其の殃を受く、と。願わくは足下之を熟慮せよ」と。
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『長短経』懼戒何をか瓦解と謂う。曰く、呉・楚・斉・趙の兵是れなり。七国大逆を為さんことを謀る。是れ皆万乗の君に乗じ、甲を帯ぶること数十万、威は以て其の境内を厳にするに足り、財は以て其の士民を勧むるに足る。然れども西のかた尺寸の地を攘うこと能わずして、身は中原に禽と為る。此れ其の故は何ぞや。権の匹夫より軽く、兵の陳渉より弱きに非ざるなり。是の時に当たりて、先帝の徳沢未だ衰えず、而して土に安んじ俗を楽しむの民衆し。故に諸侯に境外の助け無し。此れ之を瓦解と謂う。是に由りて之を観れば、天下誠に土崩の勢い有らば、布衣窮処の士と雖も、或いは首めに悪を為して海内を危うくす。陳渉是れなり。況んや三晋の君或いは存するをや。天下未だ大いに治まる有らずと雖も、誠に能く土崩の勢い無からしめば、強国勁兵有りと雖も、踵を旋らすを待たずして身已に擒とならん。呉・楚・斉・趙是れなり。況んや群臣百姓、能く乱を為さんや。此の二体は、安危の明要にして、賢主の宜しく意を留めて察度すべき所なり。間者、関中の五穀数々登らず。数を推し治に循いて之を観れば、則ち又た且に其の処に安んぜざる者有らんとす。安んぜざるが故に動き易し。動き易き者は、土崩の隣なり。願わくは之を廟堂の上に修め、未形の患いを銷せ。〕
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『長短経』懼戒〔太史公曰く、漢興りて、孝文大徳を施し、天下懐安す。孝景に至りて、復た異姓を憂えず。而して晁錯諸侯を刻削し、遂に七国をして俱に起こらしめ、合従して西に向かわしむ。諸侯大いに盛んにして、晁錯之を為すに漸を以てせざればなり。主父偃之を言うに及びて、諸侯以て弱し。安危の機、豈に謀を以てせざらんや。〕