長短経 / 懼戒
王曰、「然、有之。子將奈何?」髙曰、「同惡相助、同好相㽞同情相成、同欲相趨、同利相死。今吴王自以為與大王同憂、願因時循理、棄驅以除患害於天下、抑亦可乎?」王矍然駭曰、「寡人何敢如是?今主雖急、固有死耳、安得勿戴?」髙曰、「御史大夫晁錯、熒惑天子、侵奪諸侯、蔽忠塞賢、朝廷疾怨、諸侯皆有背叛之意、人事極矣。
新字:王曰、「然、有之。子将奈何?」高曰、「同悪相助、同好相㽞同情相成、同欲相趨、同利相死。今呉王自以為与大王同憂、願因時循理、棄駆以除患害於天下、抑亦可乎?」王矍然駭曰、「寡人何敢如是?今主雖急、固有死耳、安得勿戴?」高曰、「御史大夫晁錯、熒惑天子、侵奪諸侯、蔽忠塞賢、朝廷疾怨、諸侯皆有背叛之意、人事極矣。
書き下し
王曰く「然り、之有り。子将に奈何せん」と。高曰く「悪を同じくすれば相助け、好を同じくすれば相留め、情を同じくすれば相成し、欲を同じくすれば相趨き、利を同じくすれば相死す。今、呉王は自ら以為えらく大王と憂いを同じくすと。願わくは時に因り理に循い、軀を棄てて以て患害を天下に除かん。抑も亦た可ならんか」と。王矍然として駭きて曰く「寡人何ぞ敢えて是くの如くせん。今、主急なりと雖も、固より死有るのみ。安んぞ戴かざるを得ん」と。高曰く「御史大夫晁錯、天子を熒惑し、諸侯を侵奪し、忠を蔽い賢を塞ぎ、朝廷疾怨し、諸侯皆背叛の意有り。人事極まれり。
現代語訳
膠西王は言った。「そうだ、そのとおりだ。あなたはどうするつもりか」。応高は言った。「憎むものを同じくすれば助け合い、好むものを同じくすれば引き留め合い、情を同じくすれば成し遂げ合い、欲するものを同じくすれば同じ方へ向かい、利を同じくすれば共に死にます。いま呉王は、自分は大王と憂いを同じくしていると思っております。時勢に従い道理に沿って、身を捨てて天下の災いを除きたいと願っているのですが、いかがでしょうか」。膠西王は驚いて顔色を変えた。「私がどうしてそんなことをできよう。いまの主上が厳しくても、私にはただ死があるだけだ。どうして主上を戴かずにいられようか」。応高は言った。「御史大夫の晁錯が天子を惑わし、諸侯の領地を奪い、忠臣を覆い賢者を塞ぎ、朝廷の人々は憎み恨み、諸侯は皆背こうという思いを抱いています。人の世の乱れは極まりました。
解説

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『長短経』懼戒彗星夕べに出で、蝗虫数々起こる。此れ万世の一時にして、愁労は聖人の起こる所なり。故に呉王は内に晁錯を以て討と為さんと欲し、外に大王の後車に随いて、天下に彷徉し、郷う所の者は降り、指す所の者は下り、天下敢えて服せざるは莫からん。大王誠に幸いにして之を一言に許さば、則ち呉王は楚王を帥いて函谷関を略し、滎陽敖倉の粟を守り、漢兵を距ぎ、次舎を治めて、大王の幸いにして之に臨むを須たん。則ち天下并すべく、両主分割す。亦た可ならずや」と。王曰く「善し」と。七国皆反し、兵敗れて誅に伏す。
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『長短経』懼戒呉王濞、子の故を以て朝せず〔孝文帝の時、呉の太子入朝し、皇太子に侍して飲博し、道を争いて恭しからず。皇太子、博局を引きて呉の太子に投じ、之を殺す〕。削地の書至るに及び、是に於て乃ち中大夫応高をして膠西王を誂わしむ。文書無く、口もて報じて曰く「呉王不肖にして、宿夕の憂い有り。敢えて自ら外にせず、其の歓心を喩さしむ」と。王曰く「何を以てか之を教えん」と。高曰く「今者、主上は姦雄に興り、邪臣に飾られ、小善を好み、讒賊を聴き、擅に律令を変更し、諸侯の地を侵奪し、徴求滋々多く、良善を誅罰すること、日に以て益々甚だし。語に之有りて曰く『糠を舐めて米に及ぶ』と。呉と膠西とは、名を知らるる諸侯なり。一時に察せられて、恐らくは安肆なるを得ざらん。呉王は身に内病有りて、朝請すること能わざること二十余年、常に疑われて以て自ら白す無きを患う。今、肩を脅し足を累ぬるも、猶お釈されざらんことを懼る。竊かに聞く、大王は爵事を以て謫有り、と。聞く所の諸侯の削地は、罪此に至らず。此れ恐らくは地を削らるるを得るのみならざらん」と。
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史記 呉王濞列伝呉と膠西とは、名を知らるる諸侯なり。一時に察せらるれば、恐らくは安肆するを得ざらん。呉王身に内病有り、朝請する能はざること二十余年、嘗て疑はるるを患ふるも、以て自ら白す無し。今肩を脅め足を累ぬるも、猶ほ釈かれざるを懼る。竊かに聞く、大王爵事を以て適有りと。聞く所の諸侯の地を削らるるは、罪此に至らず。此れ恐らくは地を削らるるを得るのみならざらん」と。王曰く、「然り。之有り。子将に奈何せんとす」と。高曰く、「悪を同じくするは相助け、好を同じくするは相留め、情を同じくするは相成し、欲を同じくするは相趨り、利を同じくするは相死す。今呉王自ら以為へらく大王と憂を同じくすと。願はくは時に因り理に循ひ、軀を棄てて以て患害を天下より除かん。億ふに亦可ならんか」と。王瞿然として駭きて曰く、「寡人何ぞ敢へて是の如くせん。今主上急なりと雖も、固より死有るのみ。安んぞ戴かざるを得ん」と。高曰く、「御史大夫晁錯、天子を熒惑し、諸侯を侵奪し、忠を蔽ひ賢を塞ぎ、朝廷疾み怨み、諸侯皆倍畔の意有り。人事極まれり。彗星出で、蝗虫数々起こる。此れ万世の一時にして、愁労は聖人の起こる所以なり。故に呉王内は晁錯を以て討を為し、外は大王の後車に随ひ、天下に彷徉し、郷ふ所の者は降り、指す所の者は下り、天下敢へて服せざるは莫からんと欲す。大王誠に幸ひにして之に一言を許さば、則ち呉王楚王を率ゐて函谷関を略し、滎陽敖倉の粟を守り、漢兵を距がん。次舎を治めて、大王を須たん。大王幸ひにして之に臨む有らば、則ち天下并すべく、両主分割せん。亦可ならずや」と。王曰く、「善し」と。高帰りて呉王に報ず。呉王猶ほ其の与せざるを恐れ、乃ち身自ら使と為り、膠西に使ひして、面して之と結ぶ。膠西の群臣或いは王の謀を聞き、諫めて曰く、「一帝を承くるは、至楽なり。今大王呉と西に郷ふ。弟令ひ事成るとも、両主分争し、患乃ち始めて結ばん。諸侯の地は漢郡の什の二と為すに足らず。而して畔逆を為して以て太后を憂へしむるは、長策に非ざるなり」と。王聴かず。
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『長短経』懼戒高曰く「臣聞く、湯・武は其の主を殺して、天下義と称し、不忠と為さず。衛君は其の父を殺して、衛国其の徳を載せ、孔子之を著して、不孝と為さず、と。〔議に曰く、乱臣賊子は、古より之有り。生まれて楚言し、痛哭すべき者は、胡亥是れなり。〕夫れ大行は細謹せず、大徳は辞譲せず。郷曲には各々宜しき有りて、百官は功を同じくせず。故に小を顧みて大を忘るれば、後に必ず害有り。狐疑猶予すれば、後に必ず悔い有り。断じて敢えて行えば、鬼神も之を避け、後に成功有り。願わくは子之を遂げよ」と。胡亥喟然として嘆じて曰く「今、大行未だ発せず。豈に宜しく此の事を以て丞相を干すべけんや」と。高曰く「時なるかな、時なるかな。間は謀るに及ばず。糧を嬴い馬を躍らせて、唯だ時に後るるを恐る」と。
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『長短経』懼戒斯曰く「斯は上蔡の閭巷の布衣なり。上幸いに擢でて丞相と為すは、固より将に存亡安危を以て臣に属せんとするなり。豈に負くべけんや。夫れ忠臣は死を避けずして庶幾し、孝子は勤労せずして危うきを見る。君其れ復た言うこと勿かれ」と。高曰く「蓋し聞く、聖人は遷徙常無く、変に就きて時に従い、末を見て本を知り、指を観て帰するを覩る、と。物固より之有り。安んぞ常法を得んや。方今、天下の権は、命を胡亥に懸け、高は能く志を得たり。且つ夫れ外より中を制する、之を惑と謂い、下より上を制する、之を賊と謂う。故に秋霜降れば草華落ち、水風揺るれば万物作る。此れ必然の効なり。君侯、何ぞ之を見ることの晩きや」と。
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『長短経』懼戒〔太史公曰く、漢興りて、孝文大徳を施し、天下懐安す。孝景に至りて、復た異姓を憂えず。而して晁錯諸侯を刻削し、遂に七国をして俱に起こらしめ、合従して西に向かわしむ。諸侯大いに盛んにして、晁錯之を為すに漸を以てせざればなり。主父偃之を言うに及びて、諸侯以て弱し。安危の機、豈に謀を以てせざらんや。〕