長短経 / 三国権
初、周瑜薦魯肅才宜佐時、權即引肅對飲曰、「今漢室傾危、四方雲擾。孤承父兄遺業、思有桓、文之功、君既惠顧、何以佐之?」肅對曰、「昔髙帝區區、欲尊事義帝而不獲者、以項羽為害也。今之曹操猶昔項羽、將軍何由得為桓、文乎?肅竊料之、漢室不可復興、猶曹操不可卒除。將軍為計、唯有鼎足江東、以觀天下之舋規模如此、亦自無嫌。然後建號帝王、以圖天下、此髙帝之業也。」及是平一江滸、稱尊號、臨壇顧謂公卿曰、「昔魯子敬嘗道此、可謂明於事勢矣。」
新字:初、周瑜薦魯粛才宜佐時、権即引粛対飲曰、「今漢室傾危、四方雲擾。孤承父兄遺業、思有桓、文之功、君既恵顧、何以佐之?」粛対曰、「昔高帝区区、欲尊事義帝而不獲者、以項羽為害也。今之曹操猶昔項羽、将軍何由得為桓、文乎?粛窃料之、漢室不可復興、猶曹操不可卒除。将軍為計、唯有鼎足江東、以観天下之舋規模如此、亦自無嫌。然後建号帝王、以図天下、此高帝之業也。」及是平一江滸、称尊号、臨壇顧謂公卿曰、「昔魯子敬嘗道此、可謂明於事勢矣。」
書き下し
初め、周瑜、魯粛の才、時を佐くるに宜しと薦む。権即ち粛を引きて対飲して曰く「今、漢室傾危し、四方雲擾す。孤は父兄の遺業を承け、桓・文の功有らんことを思う。君既に恵顧す。何を以て之を佐けん」と。粛対えて曰く「昔、高帝は区区として義帝を尊事せんと欲するも獲ざりし者は、項羽の害を為すを以てなり。今の曹操は猶お昔の項羽のごとし。将軍何に由りてか桓・文と為るを得ん。粛竊かに之を料るに、漢室は復た興すべからず、猶お曹操の卒かに除くべからざるがごとし。将軍の為に計るに、唯だ江東に鼎足して、以て天下の釁を観るのみ。規模此くの如くんば、亦た自ら嫌無し。然る後に号を帝王に建てて、以て天下を図る。此れ高帝の業なり」と。是に及びて江滸を平一し、尊号を称し、壇に臨みて顧みて公卿に謂いて曰く「昔、魯子敬嘗て此を道う。事勢に明らかなりと謂うべし」と。
現代語訳
はじめ周瑜は、魯粛の才能は時代を支えるのにふさわしいと推薦した。孫権はすぐに魯粛を招いて差し向かいで酒を飲み、言った。「いま漢の王室は傾き、四方は雲のように乱れている。私は父と兄の遺業を受け継ぎ、斉の桓公や晋の文公のような功を立てたいと思う。あなたが来てくれたからには、どう助けてくれるか」。魯粛は答えた。「昔、漢の高帝は懸命に義帝を尊んで仕えようとしましたが、できませんでした。項羽が邪魔をしたからです。いまの曹操は昔の項羽のようなものです。将軍がどうして桓公や文公になれましょう。私がひそかに見通すに、漢の王室はもう再興できず、曹操もすぐには除けません。将軍のための計としては、江東に鼎の足のように立って、天下の隙をうかがうほかありません。この規模でいけば、誰からもとがめられません。そのうえで帝王の号を立てて天下を狙う。これが高帝の業です」。後に孫権は長江流域を平定して帝位に就き、壇に上るとき公卿を振り返って言った。「昔、魯子敬がこのことを言っていた。事の勢いに明るかったと言うべきだ」。
解説
この章句が説くこと
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