長短経 / 正論
漢武帝問董仲舒䇿曰、“蓋儉者不造𤣥黄旌旗之餙及至周室、設兩觀、乗大輅、八佾陳於庭而頌聲興。夫帝王之道、豈異㫖哉?”對曰、“制度文、采𤣥黄之餙所以明尊卑、異貴賤、而勸有徳也。故春秋受命、所先制者、改正朔、易服色、所以應天也。然則宫室旌旗之制、有法而然者也。孔子曰、‘奢則不孫儉則固。’儉非聖人之中制、故曰、奢不儉上、儉不逼下、此王道也。”〕
新字:漢武帝問董仲舒策曰、“蓋倹者不造玄黄旌旗之餙及至周室、設両観、乗大輅、八佾陳於庭而頌声興。夫帝王之道、豈異旨哉?”対曰、“制度文、采玄黄之餙所以明尊卑、異貴賤、而勧有徳也。故春秋受命、所先制者、改正朔、易服色、所以応天也。然則宮室旌旗之制、有法而然者也。孔子曰、‘奢則不孫倹則固。’倹非聖人之中制、故曰、奢不倹上、倹不逼下、此王道也。”〕
書き下し
漢の武帝、董仲舒に問う策に曰く「蓋し倹なる者は玄黄旌旗の飾りを造らず。周室に至るに及び、両観を設け、大輅に乗り、八佾を庭に陳ねて頌声興る。夫れ帝王の道、豈に旨を異にせんや」と。対えて曰く「制度の文、采玄黄の飾りは、尊卑を明らかにし、貴賤を異にして、有徳を勧むる所以なり。故に春秋、命を受けて、先ず制する所の者は、正朔を改め、服色を易う。天に応ずる所以なり。然らば則ち宮室旌旗の制は、法有りて然る者なり。孔子曰く『奢れば則ち不孫、倹なれば則ち固』と。倹は聖人の中制に非ず。故に曰く、奢は上を倹せず、倹は下に逼らず、此れ王道なり」と。〉
現代語訳
漢の武帝が董仲舒に問うた策にこうある。「倹約な者は黒や黄の旗の飾りを造らない。ところが周室になると、二つの物見台を設け、大きな車に乗り、八列の舞を庭に並べて讃える声が興った。帝王の道が違う趣旨であろうか」。董仲舒は答えた。「制度の文様や彩色の飾りは、尊卑を明らかにし貴賤を区別して、徳ある者を勧めるためのものです。だから春秋では、天命を受けてまず定めるのは暦を改め服の色を変えることでした。天に応じるためです。とすれば宮室や旗の制度も、法があってそうなっているのです。孔子は『奢れば不遜になり、倹約すれば頑固になる』と言いました。倹約は聖人の適切な制度ではありません。だからこう言います。奢っても上を倹約させず、倹約しても下に迫らない。これが王道です」。
解説

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『童子問』卷中問ふ。聖賢の深く聚斂を戒むる所以の者は、何ぞや。曰く、民の怨みを取る所以の者は、聚斂より甚だしきは莫し。夫れ小人の君に事ふるや、聚斂掊克し、唯君を知りて、民の為にするを知らず。殊に知らず、民の為にする者は、便ち君の為にするの実なる所以なることを。未だ民の為にして、君の為にせざる者有らざるなり。又未だ民の為にせずして、能く君の為にする者有らざるなり。故に少しく民の為にすれば、則ち少しく効有り。大いに民の為にすれば、則ち大いに効有り。昔馮驩孟嘗君の為に薛の債券を焚く。後朞年にして孟嘗君相を免ぜられ、国に薛に就く。未だ百里に至らざるに、民老を扶け幼を携へて以て迎ふ。夫れ券を焚くは細事なり。然れども其の民心を得ること、尚ほ此くのごとし。矧んや此より大なる者をや。苟も上聚斂を好めば、則ち民必ず怨む。怨みて已まざれば、則ち怒る。怒れば則ち離る。離るれば則ち叛く。鹿台の財、郿塢の金有りと雖も、豈に能く得て己の有と為さんや。夫れ倹なれば則ち余り有り。余り有れば則ち以て人に施すに足る。奢れば則ち足らず。足らざれば則ち聚斂せざること能はず。此れ聖人の倹を尚びて聚斂を戒むる所以なり。
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『童子問』卷中問ふ。夫の倹を好む者を観るに、大抵皆吝嗇なるは、何ぞや。曰く、倹と嗇とは、其の迹相似て、其の心実に相反す。倹は善の基、嗇は欲の叢なり。倹にして施しを好む者は、真の倹なり。倹にして施すことを知らざるは、亦嗇なるのみ。古人の倹を務むる者は、其の施さんが為なり。倹にして施すことを知らざるは、倹と謂ふべからず。世の鄙夫、倹に託して夫の奢る者を詆るは、一噱に附すべし。倹にして施しを好む者は、誠に大徳の人為り。倹にして施すことを知らざる者は、真の守銭虜なるのみ。
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『呻吟語』内篇・存心・儉なれば則ち約、侈なれば則ち肆儉なれば則ち約、約なれば則ち百善俱に興る。侈なれば則ち肆、肆なれば則ち百惡俱に縱にす。
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『弁名』節儉倹は用を節するなり。「温良恭倹譲」の如き、宋儒誤りて以て聖人の威儀と為し、遂に倹は止だ用を節するのみならずと謂ふ者は、非なり。蓋し倹は仁人の道なり、王者の大徳なり。堯舜の茅茨剪らず、土階三尺、禹の衣服を悪しくし、飲食を菲くし、宮室を卑くす、豈に然らずや。孟子の所謂「民を仁して物を愛す」は、蓋し古言なり。物を愛惜するを謂ふなり。孟子に又た牛を愛するの説有るに因りて、宋儒誤りて以て慈愛の愛と為す者は、非なり。「数罟洿池に入れず、斧斤時を以て山林に入る」は、皆天物を暴はざるの義なり。若し徒らに慈愛を以て之を言はば、則ち孰れか浮屠の殺を戒むるに若かんや。孟子の仁術を以て之を言ふ所以の者は、以て斉王を誘はんと欲すればなり。其の弁を好むの失、率ね是くの如きのみ。
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『童子問』卷中倹を守るの方を問ふ。曰く、人家の奢は、大抵閨門より生ず。閨門の奢は、丈夫の軟弱にして、駕御の道を失ふより生ず。丈夫能く厳にして節制有れば、則ち閨門自ら粛みて、奢も亦生ぜず。是れ倹を守るの要なり。然れども閨門の奢は、財を熬り物を靡すに過ぎず。男子の奢は、国を亡ぼし家を敗るに至らざれば、則ち已まず。男子気質柔軟にして、少年の気除かざれば、則ち拘検を忘れ貪慾を縦にし、端慤方正の士に近づくことを喜ばず、志を墜し業を廃し、遊惰放縦、至らざる所無し。乃ち衆悪の淵藪なり。
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『童子問』卷中問ふ。国家承平日久しく、人皆安肆にして互ひに奢侈を以て相尚ぶ。其の久しきに及ぶや、習ひて以て風を成し、人其の奢靡たるを知らず。今遽かに節倹を以て之を治めんと欲すれば、則ち恐らくは人の遽かに従ひ難からん。如何。曰く、君子の徳は風なり、小人の徳は草なり。草之に風を尚ふれば、必ず偃す。民は其の令する所に従はずして、其の好む所に従ふ。顧ふに上の好む所如何に在るのみ。孔子曰く、上礼を好めば、則ち民敢へて敬せざる莫し。上義を好めば、則ち民敢へて服せざる莫し。上信を好めば、則ち民敢へて情を用ひざる莫し、と。皆上の好む所を謹むに在るのみ。上自ら華靡を好みて、下の節倹を欲せば、厳刑峻法以て之を縄すと雖も、而も得べからざるなり。苟も上自ら倹を好めば、則ち令せずして行はる。滕の文公古礼を行はんと欲す。父兄百官皆欲せず。其の卒るや、四方風動するに至り、路に遺ちたるを拾はざるの効有り。故に其の下に令せんと欲せば、則ち須要く其の好む所を謹むべし。上実に節倹を好まば、則ち何ぞ下の従はざるを憂へん。