長短経 / 正論
墨家者、蓋出於清廟之守、茅屋采椽、是以貴儉、養三老五更、是以兼愛、選士大射、是以上賢、宗祀嚴父、是以右鬼〔右、信也。、〕順四時而行、是以非命〔言無吉凶之命、但有賢、不肖、善、惡也。、〕以孝示天下、是以上同〔言皆同于治也。〕此其所長也。及蔽者為之、見儉之利、因以非禮、推兼愛之意、而不知别親踈。此墨家之弊也。
新字:墨家者、蓋出於清廟之守、茅屋采椽、是以貴倹、養三老五更、是以兼愛、選士大射、是以上賢、宗祀厳父、是以右鬼〔右、信也。、〕順四時而行、是以非命〔言無吉凶之命、但有賢、不肖、善、悪也。、〕以孝示天下、是以上同〔言皆同于治也。〕此其所長也。及蔽者為之、見倹之利、因以非礼、推兼愛之意、而不知別親疎。此墨家之弊也。
書き下し
墨家なる者は、蓋し清廟の守に出づ。茅屋采椽、是を以て倹を貴ぶ。三老五更を養う、是を以て兼愛す。士を選び大射す、是を以て賢を上ぶ。父を厳めて宗祀す、是を以て鬼を右ぶ。〈右は信なり。〉四時に順いて行う、是を以て命を非とす。〈吉凶の命無く、但だ賢・不肖・善・悪有るを言うなり。〉孝を以て天下に示す、是を以て同を上ぶ。〈皆な治に同じきを言うなり。〉此れ其の長ずる所なり。蔽なる者の之を為すに及びては、倹の利を見て、因りて以て礼を非とし、兼愛の意を推して、親疎を別つを知らず。此れ墨家の弊なり。
現代語訳
墨家は宗廟を守る役から出た。茅葺きの屋根と削らない垂木、だから倹約を貴ぶ。三老五更を養う、だから分け隔てなく愛する。士を選んで大射の礼を行う、だから賢者を尊ぶ。父を厳かにして祖先を祀る、だから鬼神を重んじる。〈右とは信じることである。〉四季に従って行う、だから運命を否定する。〈吉凶の運命はなく、ただ賢・愚・善・悪があるだけだという意味である。〉孝を天下に示す、だから同じくすることを尊ぶ。〈みな治まることで同じになるという意味である。〉これがその長所である。覆われた者がこれをやると、倹約の利益だけを見て礼を否定し、分け隔てない愛を推し進めて親疎の別を知らなくなる。これが墨家の弊害である。
解説

人生を、一行の式にしてみた。
志×積×時×憤÷(1+執)+命。古典から導いた式『人生の方程式』と、二十四の悩みに古典が答える『人生の教科書』(PDF)、師導の全機能1か月がセットで700円です。
本の中身を見るこの章句が説くこと
関連する章句
-
『童子問』卷中問ふ。聖賢の深く聚斂を戒むる所以の者は、何ぞや。曰く、民の怨みを取る所以の者は、聚斂より甚だしきは莫し。夫れ小人の君に事ふるや、聚斂掊克し、唯君を知りて、民の為にするを知らず。殊に知らず、民の為にする者は、便ち君の為にするの実なる所以なることを。未だ民の為にして、君の為にせざる者有らざるなり。又未だ民の為にせずして、能く君の為にする者有らざるなり。故に少しく民の為にすれば、則ち少しく効有り。大いに民の為にすれば、則ち大いに効有り。昔馮驩孟嘗君の為に薛の債券を焚く。後朞年にして孟嘗君相を免ぜられ、国に薛に就く。未だ百里に至らざるに、民老を扶け幼を携へて以て迎ふ。夫れ券を焚くは細事なり。然れども其の民心を得ること、尚ほ此くのごとし。矧んや此より大なる者をや。苟も上聚斂を好めば、則ち民必ず怨む。怨みて已まざれば、則ち怒る。怒れば則ち離る。離るれば則ち叛く。鹿台の財、郿塢の金有りと雖も、豈に能く得て己の有と為さんや。夫れ倹なれば則ち余り有り。余り有れば則ち以て人に施すに足る。奢れば則ち足らず。足らざれば則ち聚斂せざること能はず。此れ聖人の倹を尚びて聚斂を戒むる所以なり。
-
『童子問』卷中問ふ。夫の倹を好む者を観るに、大抵皆吝嗇なるは、何ぞや。曰く、倹と嗇とは、其の迹相似て、其の心実に相反す。倹は善の基、嗇は欲の叢なり。倹にして施しを好む者は、真の倹なり。倹にして施すことを知らざるは、亦嗇なるのみ。古人の倹を務むる者は、其の施さんが為なり。倹にして施すことを知らざるは、倹と謂ふべからず。世の鄙夫、倹に託して夫の奢る者を詆るは、一噱に附すべし。倹にして施しを好む者は、誠に大徳の人為り。倹にして施すことを知らざる者は、真の守銭虜なるのみ。
-
『呻吟語』内篇・存心・儉なれば則ち約、侈なれば則ち肆儉なれば則ち約、約なれば則ち百善俱に興る。侈なれば則ち肆、肆なれば則ち百惡俱に縱にす。
-
『弁名』節儉倹は用を節するなり。「温良恭倹譲」の如き、宋儒誤りて以て聖人の威儀と為し、遂に倹は止だ用を節するのみならずと謂ふ者は、非なり。蓋し倹は仁人の道なり、王者の大徳なり。堯舜の茅茨剪らず、土階三尺、禹の衣服を悪しくし、飲食を菲くし、宮室を卑くす、豈に然らずや。孟子の所謂「民を仁して物を愛す」は、蓋し古言なり。物を愛惜するを謂ふなり。孟子に又た牛を愛するの説有るに因りて、宋儒誤りて以て慈愛の愛と為す者は、非なり。「数罟洿池に入れず、斧斤時を以て山林に入る」は、皆天物を暴はざるの義なり。若し徒らに慈愛を以て之を言はば、則ち孰れか浮屠の殺を戒むるに若かんや。孟子の仁術を以て之を言ふ所以の者は、以て斉王を誘はんと欲すればなり。其の弁を好むの失、率ね是くの如きのみ。
-
『童子問』卷中倹を守るの方を問ふ。曰く、人家の奢は、大抵閨門より生ず。閨門の奢は、丈夫の軟弱にして、駕御の道を失ふより生ず。丈夫能く厳にして節制有れば、則ち閨門自ら粛みて、奢も亦生ぜず。是れ倹を守るの要なり。然れども閨門の奢は、財を熬り物を靡すに過ぎず。男子の奢は、国を亡ぼし家を敗るに至らざれば、則ち已まず。男子気質柔軟にして、少年の気除かざれば、則ち拘検を忘れ貪慾を縦にし、端慤方正の士に近づくことを喜ばず、志を墜し業を廃し、遊惰放縦、至らざる所無し。乃ち衆悪の淵藪なり。
-
『童子問』卷中問ふ。国家承平日久しく、人皆安肆にして互ひに奢侈を以て相尚ぶ。其の久しきに及ぶや、習ひて以て風を成し、人其の奢靡たるを知らず。今遽かに節倹を以て之を治めんと欲すれば、則ち恐らくは人の遽かに従ひ難からん。如何。曰く、君子の徳は風なり、小人の徳は草なり。草之に風を尚ふれば、必ず偃す。民は其の令する所に従はずして、其の好む所に従ふ。顧ふに上の好む所如何に在るのみ。孔子曰く、上礼を好めば、則ち民敢へて敬せざる莫し。上義を好めば、則ち民敢へて服せざる莫し。上信を好めば、則ち民敢へて情を用ひざる莫し、と。皆上の好む所を謹むに在るのみ。上自ら華靡を好みて、下の節倹を欲せば、厳刑峻法以て之を縄すと雖も、而も得べからざるなり。苟も上自ら倹を好めば、則ち令せずして行はる。滕の文公古礼を行はんと欲す。父兄百官皆欲せず。其の卒るや、四方風動するに至り、路に遺ちたるを拾はざるの効有り。故に其の下に令せんと欲せば、則ち須要く其の好む所を謹むべし。上実に節倹を好まば、則ち何ぞ下の従はざるを憂へん。